1. ホーム
  2. ニュース
  3. 先端研ニュース
  4. 機械学習で化学反応を解析・予測するー化学反応を起こすための原子レベルの条件を自動検出ー

機械学習で化学反応を解析・予測する
ー化学反応を起こすための原子レベルの条件を自動検出ー

  • 研究成果

2023年10月31日

東京大学先端科学技術研究センターニュートリオミクス・腫瘍学分野の山下雄史特任准教授(星薬科大学薬学部准教授)、静岡大学理学部の河合信之輔准教授らの研究グループは、コンピュータシミュレーションと機械学習を用いて、化学反応が起こる条件を原子レベルで解析しました。
化学反応は原子が動いて化学結合が組み替わることですが、多くの場合、反応する物質の分子は単独で反応を起こすのではなく、その周囲に他の分子が存在している状況で反応が起こります。本研究では、反応する分子に対する周辺の分子の影響を原子レベルで解明することを目指しました。
対象としてHCNという分子の形が変化する反応を取り上げ、周辺の様々な位置にAr原子を配置してコンピュータシミュレーションを行い、目的の化学反応が起こるような配置とそうではない配置を得ました。その結果をデータとして整理し、機械学習の手法を使うことで、目的の化学反応が起こるか起こらないかを決定するうえで重要な因子を抽出することができました。反応途中の分子に周辺分子が衝突してくることで反応の成否に影響があること、衝突の方向によって反応を促進するか阻害するかが変わることなどを明らかにしました。
今回の成果によって、化学反応に関する基礎的な理解が深まるとともに、化学反応の原子レベルでの制御への応用が期待できます。
本稿は、2023年9月28日付けでThe Journal of Chemical Physics誌に掲載されました。

山下特任准教授は次のように述べています。「実際の化学反応を精密に理解するには、系を取り囲む環境の影響を精密に考える必要があります。一般に、環境は大きな自由度を持つので解析がとても困難でした。そこで、機械学習を用いて自動的に重要な要素だけ取り出せないかと考えました。今回の研究は、非常に単純で基礎的な例ですが、一般化は十分可能です。多くの化学現象の理解に役立つのではないかと考えています」

本研究は、主として科研費16KT0050および16K17852によってサポートされました。計算は、京都大学ACCMS、TSUBAME (hp210141 and hp220134)を使って行われました。科研費(JSPS KAKENHI (C) 21K03482, (C)18K05025)、 GAP fund (UTokyo)、the Program for Promoting Research on the Supercomputer Fugaku (Application of Molecular Dynamics Simulation to Precision Medicine Using Big Data Integration System for Drug Discovery, JPMXP1020200201, hp210172, and hp220164)のサポートにも感謝いたします。

  • 化学反応予測の概要
化学反応予測の概要
HCNとHNCの間の異性化反応。ポテンシャル面がArの影響を受けて歪み、反応性が変わります。反応性への影響を機械学習し予測します。
© 2023 山下雄史 河合信之輔

【掲載論文情報】

著者名
Takefumi Yamashita, Naoaki Miyamura, Shinnosuke Kawai
タイトル
Classification of the HCN isomerization reaction dynamics in Ar buffer gas via machine learning
雑誌名
The Journal of Chemical Physics
オンライン掲載日
2023/9/28
DOI
10.1063/5.0156313
URL
https://doi.org/10.1063/5.0156313別ウィンドウで開く

【問い合わせ先】
ニュートリオミクス・腫瘍学分野 特任准教授 山下 雄史

関連タグ

ページの先頭へ戻る