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牧原出教授が読売・吉野作造賞を受賞

  • 受賞

2023年6月23日

2023年6月9日、牧原出教授の著書、『田中耕太郎―闘う司法の確立者、世界法の探究者』(中央公論新社)が第24回「読売・吉野作造賞」を受賞しました。

  • 牧原出教授
  • 牧原出教授(政治行政システム分野)の受賞コメント

    このたび第24回読売吉野作造賞を受賞いたしました。大正デモクラシーを「民本主義」の旗の下で牽引した政治学者吉野作造にちなんだ賞を政治学者として受賞できたことに大変な栄誉を感じています。

    受賞作は、田中耕太郎という東京帝国大学法学部教授として商法を専門とし、大著『世界法の理論』で知られている人物の評伝です。田中は、戦前には工学部長から総長となる平賀譲を補佐して、混乱した経済学部問題を処理する「平賀粛学」の立役者であり、戦後は文部大臣・参議院文教委員長・最高裁判所長官・国際司法裁判所裁判官を歴任しており、憲法上の三権の中枢にいながら、それら一つ一つの「独立」を希求しました。果断・剛毅でありながら、小説や音楽など芸術に造詣が深く、後輩の若手研究者とビリヤードやテニス、酒席を楽しむ人物でもあります。

    これらすべての領域に通暁するのはきわめて困難ですが、先端研はそれを可能とする素晴らしい研究環境でした。東大でありながら、法学部・経済学部を外から眺める位置にあり、また先端研の代表として総長補佐を務める中で、東大本部での意思決定のあり方をこの目で確認し、「大学の自治」の実質を感じ取ることができました。しかも、ハーグにほど近いケンブリッジ大学は、数多くの国際司法裁判所裁判官を輩出した国際法の名門大学であり、クレア・ホールに滞在する間、国際法研究に集中し、ハーグで小和田恒裁判官にインタビューをすることもできました。そして何よりも、従来の田中研究に欠けていたのは、彼が様々な分野を通貫する「技術」のありようを明確に思索し続けたことです。文系学部にいては到底議論することが叶わないこの「技術」を論じるに当たって、先端科学技術研究センターでの先生方との交流の中で、諸々の「技術」の差異性と共通性とを意識しつつ分析することが可能となりました。

    今回の受賞は、先端研の皆様とともにあったからと心にかみしめ、厚く御礼申し上げます。

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