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大見出し 先端学際工学(AIS) 
Department of Advanced Interdisciplinary Studies (AIS) 
Graduate School of Engineering, The University of Tokyo

中見出し 学生インタビュー 伊藤 浩孝さん

インタビュアー:戦略的研究拠点推進室 コミュニケーションディレクター 神野 智世子
先端研の研究者が教鞭をとる先端学際工学専攻。先端研の多様性を反映して、バラエティに富む学問分野で博士の学位を目指す院生の横顔もさまざまのようです。ここでは、本人に直接話を聞きながら、その横顔に迫ってみました。
聞き手本日はよろしくお願いいたします。まず、先端学際工学にこられた経緯を教えてください。
私は3年半ほど前に医薬品メーカーの企業派遣研究員として先端研に来て、システム生物医学分野の児玉龍彦先生のところでお世話になることになりました。その途中で先端研に社会人大学院の枠があることを知り受験して、現在はゲノムサイエンス部門の油谷先生のもとに在籍し研究をしています。
聞き手派遣される前は先端学際工学専攻のことをご存知でしたか。
実は知りませんでした(笑)。当初は論文博士をとれればと思っていたのですが、最近の風潮として論文博士がなくなるという話しもあるので、ここは思い切って多少学費はかかるけれどもトライしてみようと思いました。
聞き手受験のためにどのような準備をされましたか。
それまでに企業での研究歴もありましたので、研究計画のプレゼンテーションに関してはなんとかなるだろうと思っていました。問題はTOEFLですね。ただ、会社時代に海外駐在の経験があったので、そんな立派な成績ではないのですが受けたら通りまして、ラッキーでした(笑)。
聞き手海外経験があると全然違うでしょうね。
実は今回の博士号取得を目指す背景には、海外駐在の経験も関係しています。PhDを持たずに海外で2年間、研究に従事していたわけですが、日本は修士卒を企業研究員として育てる、ということが一般的な風土としてあるのに対し、海外ではPhDがないとサイエンティスト(研究者)として認められない、というところがあります。私の場合もPhDが無いので"階級制度"の下の方、テクニシャン(技術者)の枠を越えることができない、という現実に直面しました。仕事はさせてもらえますが、出席できない会議があったり、自分の意見が反映されにくいなどの"区別"はありましたね。
研究が世界に広がっていくと、世界と競争しなければなりません。そのような機会が増えれば、アカデミアだけでなく企業の研究員もPhDを持っていることは非常に大切になります。その意味でも是非この機会に学位をとろうと思ったわけです。
聞き手研究員として派遣された伊藤さんが学位に挑戦することに関して、企業サイドの反応はどのようなものでしたか。
会社として積極的に奨励することは難しいと思うのですが、個人の自己啓発の範囲で、会社が目標とするミッションのレベルを落さずにそれに取り組むのなら、という上司の配慮で勉強させてもらっています。
聞き手伊藤さんの研究の具体的な内容について教えてください。
私の専門は癌研究です。特に癌治療を目的とした抗体医薬研究という最近着目されている分野の研究を行っております。具体的には、癌で特異的に発現している分子(目印のようなもの)を探索するため網羅的な遺伝子発現解析を行い、そこで同定された分子を標的として抗体医薬品を開発していくという、医薬品開発のジャンルの中でもかなり競争が激化している分野の一つといえます。それをアカデミックな場で、かつ研究グループ内に臨床医の先生方を交えて、企業のマインドを持ちながら、新たなアカデミックの着想ができる環境で研究を行っています。
聞き手伊藤さんの研究は最先端分野ということですが、その中にあって東大先端研は研究環境としてはどうなのでしょうか。
先ほど申し上げた「網羅的にものを見つける」というのは、単純に生物系の目だけでは出来ないことも多くあり、数値的な解析という観点から先端研の情報系の研究室と一緒に解析をしています。いわゆる「バイオインフォマティックス」という研究分野ですが、情報学者、数学者などの研究者が扱うインフォマティックスと、生物系の研究者が行うバイオをあわせて一緒に新しいものを見出していく、という環境がここにはあります。その他にも私の所属するシステム生物医学ラボラトリーには、血管、内分泌など、生活習慣病関連のジャンルの専門家をはじめとして非常に多くのジャンルの先生方がいます。そのため、幅広い視点で研究に望むことができる環境がそろっています。
聞き手指導を受ける学生の立場から、先端研の授業はどのような感じですか。
先端学際工学で課されている20単位のうち実験などが12単位を占め、授業は8単位とればいいので、大きな負担もなく、かつ先端学際のあらゆるジャンルの授業をとれておもしろい、という感想を持っています。
東大の他の科の学生もここの授業をとれるので、修士課程の学生もいたり、年齢幅も広かったりと、多様な方がいます。授業を受身で聞くというより、さまざまな扉があって、興味あるところを自分で叩いて開いていけば、さらにいろいろな人に出会える、という意味で非常に良い環境だと思います。ジャンルがマルチであって、にも関わらずそれぞれが洗練されている、というのも魅力的ですね。

小見出し PhDをとることは、
国際的な舞台で研究者として活躍するための
スタートラインに立つことだと思っています

聞き手ところで今、伊藤さんは3年目なんですよね。
そうです、最終年度です。論文の予備審査を5月に終えて、本審査が控えているという状況です。予備審査ではいろいろと「宿題」をもらいまして。体裁や考え方もさることながら、企業の観点からはよくても、学術論文として足りないところをしっかり指導していただけるので、本当に勉強になります。博士課程で深く考える力を養うことは研究者として育っていく上で、とても重要な過程だと実感しています。
聞き手ここで伊藤さんの3年間を振り返って、受験される方にアドバイスをいただけますか。
3年間の大学院ですので早めにテーマを見つけることが大切だと思います。テーマが見つけられずにうかうかしてしまうと、オーバードクターをしてしまいますよ。ですから自分の目標をまずみつけて、担当教官の先生とよく相談し、博士論文の柱(メイン)となるものを早くに見つけることが大切ですね。それが一年目の最重要課題です。
そして、論文を書けるよう材料を見つけ、その可能性を調査して、実際に博士研究に見合うものだとあたりがつけば、実験データなどで深みをつけていくのが二年目だと思います。失敗も繰り返しますし、仮説と異なった結果が得られることもあると思いますが、その考え方の積み重ねが研究者として育成するのに非常に重要だと思います。
そして3年目になると半年もしないうちに予備審査が控えています。博士論文も提出するのですが、例えば自分のジャンルですと50~100ページ強のドラフトが出来ているのが3年で、学位を取得するには必須となります。そう考えると博士論文のドラフトを仕上げるまでに実質は二年半ですから、あまり遊んでいる時間もなくて、キツイですよ。
聞き手最後に伊藤さんの今後の展望についてお聞かせ下さい。
ここで学位がとれるわけですから(あくまでも予定ですが……)企業に戻って活躍するにしても積極的にPhDを生かせるような仕事、国際的な研究を展開できるような、そういったプロジェクトを手がけていければと思っています。PhDをとることは、国際的な舞台で研究者として活躍する、そのためのスタートラインに立つことだと思っています。
聞き手ますます世界が広がりそうで、楽しみですね。今後のご活躍をお祈りしています。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
(2005年6月20日)
先端学際工学専攻 
ゲノムサイエンス部門3年 
伊藤 浩孝さん


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