では、具体的にRNAの触媒の進化について、実際に菅さんがどのようにこのテーマを立ち上げ、展開したかについて聞かせてください。
博士研究員をやった後に今度はニューヨーク州立大学のバッファローで、アカデミックのポストを取って研究室を持ちました。プロジェクトのアイディアは、ショースタック研の博士研究員の時に持っていたものです。ポスドク時には、自分の目標としたことが実らなかったので、それをどうしても実現に漕ぎ着けたかった。
触媒RNA、つまりリボザイムを人工的に作る。その中でもリボザイムがアミノ酸を認識して、トランスファーRNA(tRNA)のアミノアシル化、つまりエステル結合でアミノ酸とRNAをつなげる、そういう触媒を発見したい。もともと私のRNA触媒の創製への本来の化学的興味は、生命の起源に由来しているところがあって、生命の起源をある意味で実験的に探求しようという一つの試みだったわけです。
で、何でアミノ酸かというと、私の興味は「RNAワールド」から「RNAとタンパク質ワールド」が生まれる過程の橋渡しをするものにあった。それがアミノアシル化反応という、RNAがおそらくアミノ酸に初めて会ったプロセスにおいて、触媒できる酵素を見つけたかった。さらに、非天然のアミノ酸をトランスファーRNAにくっつける触媒に展開していこうという技術的な応用への考えもあって、このトピックを選びました。
独立した研究室をスタートして、最初の2年くらいは研究室も小さく非常に苦労したんですが、トランスファーRNAにアミノアシル化をするリボザイムを進化させたという実験結果を、世界に先駆けて、2000年に「Nature Structural Biology」という雑誌に報告しました。翌年、同じ触媒機能を持ちますが、よりシンプルなメカニズムを持つ新しいリボザイムを進化させて
「The EMBO Journal」に発表。その翌年にまた、違うコンセプトでもう一つリボザイムを単離して、それは
「Nature Biotechnology」に。独立してから3年連続でメジャーなところに発表して、その領域で名前を売り出すことになりました。
進化という意味では目的のリボザイムが完成に近づいてきていたのですが、このリボザイムを技術的に展開したいと思っていたところに、今の助手をやってくれてる村上君が、アメリカの私の研究室にポスドクで来てくれて、一気に技術的な応用面を展開できました。それを東大でさらに展開しようということで、まさに今、異端の仕事をやっていると自分では思ってるんですけど、私と村上君、さらに研究室の皆さんと一緒に頑張ってるところです。
また、昨年(2003年)、「Nature Structural Biology」に発表した酸化還元機能を持つリボザイムのアイディアをさらに発展させたリボザイムの創製にも挑んでいます。