ページトップ | 本文へ | グローバルナビゲーションへ | サイト情報へ |

グローバルナビゲーションの開始

サブナビゲーションへ |
本文へ |
サイト情報へ |

本文の開始

研究内容

中見出し ウェアラブル・コンピュータで情報収集。
シンプルなアイディアから始まった「ライフ・ログ」。

質問廣瀬先生が先ほど、VRは一時の過渡現象で終わるかと思っていたのに終わらなかったっていうのは、人間そのもののいろんな側面と結びつきやすいところにあるんじゃないかと思うんですね。
最近の領域融合の考え方って、異質なものを混ぜ合わせるみたいなところがあるけど、実はVRは元から混ざってるんだよね。VRって元々技術用語じゃないし。リアリティって頭の中にあるもんだから。
例えば、文理融合のケースで言えば、今、我々は御厨先生たちと一緒に、新しいプロジェクトを立ち上げようとしてるんですが、これから話をする「ライフ・ログ」っていう、人生全部記録みたいな研究について、我々は単純に体験を記録することだけ考えていたんだけれども、御厨先生の手が入ると、これが生き生きとした物語になってくるわけですよ。これが文科系の力ってもんだなと思いましたね。そういう広がりがすごいですよね。まさにコンテンツそのものであったりする。多分、上岡さんも「ライフ・ログ」が「オーラルヒストリー」と関係するなんて、全然想像もしなかったんじゃないかな。
質問「ライフ・ログ」は、ウェアラブル・コンピュータの研究をやっている中で、非常に小型化した情報機器を人間に装着させるなら、情報の提示という切り口ではなく、逆に個人の様々な情報を取れるんじゃないかという発想から始まったんです。実際やってみると、自分の中の現実での体験っていうものが、かなり違った形で浮き彫りになってくる。
その辺も面白いよね。VRっていうと、やっぱり主流はコンピュータ・ディスプレーの研究。インタラクションという意味において、当然、情報をコンピュータが取り込む技術もあるにはあったけれど。ウェアラブル・コンピュータの研究では、それが逆転してきますよね。
コンピュータがどんどん小さくなって、感覚器みたいに世界のあちこちに張り巡らされるようになると、それらのコンピュータから上がってくる情報の方が遥かに重要で、インフォーマティブであると。
上岡さんの研究は、そういう文脈から出てきたのではなかったかと思います。入力した体験は全部記録できて、データを消さない限り忘れない。さらにそのデータは他人にも参照可能だということ。ひとたびメディアの中に入っちゃうと、自分が体験したことと、人が体験したことが、その気になればシェアできるということですよね。
もともと体験記録は趣味的な話で、収集するのは個人の日常であるとか、通常あまり外に出てくる性質のものじゃなくて、そういう意味では産業から遠いように見えますね。ところが電通の方がこの研究を見て言ったのは、これはマーケティングに使えると。確かに、今までのアンケート調査なんかは平均値的な手法だったけれども、個人の生活を全部トレースできるわけだから。それはプライバシーぎりぎりのデータ収集のやり方なんだけれども面白いし、テレビ視聴の傾向をみるとか、生活習慣病に至る生活習慣のチェックなんかにも使えるかもしれない。日常全体に薄く広がって取り扱いようもないような情報っていうのを、こういう仕組みで収集して活用できないかってところでしょうね。
ある意味で「ライフ・ログ」って、コンピュータを記録装置に使うという当たり前の研究ですよね。こういった研究が非常にリアリスティックになってきたのは、現実に電子メールを使ってみんなが仕事すると、我々の生活の一部分が計算機を経由するようになり、そのプロセスのどこかで情報をキャプチャしようと思えばできちゃう、そんな世界で現実に生活しているからなんですよね。例えばSUICAみたいなカードを使うと、誰が何時にどこを通過したみたいな情報を、その気になればとれるんです。そういう情報を後で色んな視点からざーっと同時に合成していくと、何か一つの像が浮かび上がってくる、そういうことができるんですね。
今度、御厨先生とやろうと思ってるのは、じゃ、そういった過去の体系を浮かび上がらせるためには、アルバム様のものが要ると。そのアルバムをどんな風に作っていったらいいかを今、考えています。技術系の悪いところは、物事の捉え方が具象的過ぎて、その後ろ側にある物語はとれないっていうところでね。でも、形と物語、その両方をとってないと、全てを記録したことにはならない。そういったものをどう記録して、どう合成するかはまだわからないけれども、考えていくと面白そうだなと思っています。
過去に向かうばかりでなく、未来の方向も含めるとどうかと考えると、今度は「タイム・マシーン」という発想が生まれます。これはいわば時間を航行する技術です。結局、20世紀ってものすごく空間的な時代で、我々の空間能力は向上したけれども、時間概念ってそんなにないんですよ。で、21世紀にチャレンジする大きなテーマとしてはもう時間ぐらいしか残ってないだろうと思います。現在、産総研の人たちと一緒に始めたのが「バーチャル・タイム・マシーン」っていうプロジェクトです。この内容はカミング・スーン(笑)。
過去の方向へは、例えば「ライフ・ログ」では、データを遡って戻るわけです。未来へはコンピュータのシミュレーション機能が使えるはずです。今や、未来へも結構行けちゃうわけですよ。逆に言うとね、シミュレータで予測して、その瞬間になった時っていうのは、そこを追認してるだけなんだよね。現在でも「駅ナビ」なんかを使えば「30分後には俺、遅刻してるな」みたいなことは予測立つわけ。「どんなに頑張っても絶対着けない」とか。だから、ある種タイム・マシーン的なものを使う生活に……そういう新しい体系にもう既に入ってるわけね。
全然VRと関係ない方向に話は行っているように見えるけれども、情報世界はバーチャル・ワールドですよね。情報世界の中では後ろ行こうが、前行こうがもう自由なんですよ。ここで面白いのは、実世界の中にバーチャルなものが入り込み始めているから、実は実世界がバーチャル化し始めていて、我々の世界の中でそういうことが可能になり始めてるってことなんだよね。世界の自由度が増すってことは、ある種危ないことでもあるんだけれども。しかし、自由度が増すのは決して悪いことばかりではなくて、想像力を豊かにすれば、ここから面白いことがたくさん広がっていくのではないでしょうか。
(2004年10月22日)

見出し 最近の論文/著作

発表論文

安藤、吉田、谷川、王、山下、葛岡、廣瀬、「スケーラブルVRシステムを用いた教育用コンテンツの試作 -マヤ文明コパン遺跡における歴史学習-」、日本バーチャルリアリティ学会論文誌、Vol.8、No.1、pp.65-74 (2003.3)

著書

空間型コンピュータ-「脳」を超えて
廣瀬通孝 著 岩波書店 2002年
シミュレーションの思想
廣瀬通孝 小木哲朗 田村善昭 著
東京大学出版会 2002年
区切り線
この記事をダウンロード

見出し サイト内関連情報

検索

本文の終了 |
本文の終了 | ページトップへ