ページトップ | 本文へ | グローバルナビゲーションへ | サイト情報へ |

グローバルナビゲーションの開始

サブナビゲーションへ |
本文へ |
サイト情報へ |

本文の開始

研究内容

大見出し ロボット化、知能化をキーワードとして
「宇宙環境保全型システム」の実現を目指す

インタビュアー:教授 御厨 貴
質問先生は、北大の工学部精密工学科のご出身ですが、最初から宇宙に関する研究をやりたいとお考えだったんでしょうか。
いえ、実は全く偶然です。当初、放射線医学総合研究所というところに行きたかったのですが、その年度の採用がないというので電子技術総合研究所に入所し、精密工学の出身なので電子材料を精密加工するための適応制御の研究をしていました。その後、「宇宙をやらないか」と誘いを受けて、そちらの方へ移ったのです。
質問“宇宙をやる”というのは、当時どういう感じでしたか。
宇宙は何か夢があるということもありましたが、その当時、日本が自主技術で宇宙開発を始める時期にあって、まだ何も体制ができていない状態で、だからこそいろいろ新しいことができそうだと思い、宇宙開発についての研究を始めました。その時のテーマは「イオンエンジン」で、推進剤をプラズマ化して、そのうちのイオンを高電圧で抽出し、加速して推力とするもので、SFなんかに出てくるものなんですけどね。それが宇宙環境を模擬した真空チェンバーで青い光を放ちながら噴射するのを見て、こういうのが宇宙を飛んでいるところを想像すると面白いかな、と単純に思ったんですね。
質問“青い光と噴射の魅力”があったわけですね。
そうですね。それを15年ほど続けまして、全く基礎の状態から、宇宙空間での実証実験まで行い、その後、実用化につなげることができました。
質問15年というのは科学技術の世界では、短いのでしょうか。
宇宙の世界では、飛行実証を要するため、非常に短いですね。その15年の研究が終わって次に何をやろうかと考えた時、20年くらいのスパンを想定し、20年後にどういう宇宙の姿になっているかを想像して、どんな技術を研究すべきか模索したんです。その頃はちょうどスペースシャトルが飛び始めた頃で、これから宇宙のインフラストラクチャーが形成されてそれらのサービスや構築・保守が必要になるのではないかと考えて、ロボットの研究に着手したわけです。
宇宙という極限環境で働くロボットには、様々な新しい要素技術が必要になります。これには技術的なやりがいを感じましたね。さらに、それら要素技術がシステムとしてまとまって自立的に機能しなければならない総合技術的な面もあって、要素技術としても総合技術としても、チャレンジングなテーマと思いました。それと、宇宙とロボットを掛け合わせると、さらに夢がありそうだな(笑)ということもあって飛び込んだんです。今後、長期的に見ると、21世紀の宇宙開発は、人間とロボットのコラボレーションで進展するのではないかと思いますね。
質問宇宙で働くロボットは、地上世界で働くロボットと随分違うものなのでしょうか。
同じ部分と違う部分が半々くらいですね。軌道上で作業をするロボットには、クレーンのような大きなロボットから、精密な作業をするロボット、飛んでいって作業をする飛行型のロボットがあります。クレーン型は無重力で腕を使い尺取虫のように歩行できる形をしていますし、飛行型は衛星とロボットが複合した形をしています。まずこのように形態的な違いがあります。一方、普通のロボットと見かけは同じでも、中身の素材がかなり違います。苛酷な宇宙環境の中で働くロボットは、ベータクロスという白い断熱材で覆うとか、普通は油で潤滑するところを宇宙では油はすぐ蒸発してしまうので固体潤滑の機構にするとか、ロボット内部で使われている材料はずいぶん違いますし、信頼性や安全性を高めるために様々な工夫が施されています。また、無重力で作業をするので、例えば100kgのロボットでも10t、100tのものを扱えるわけです。地上だとそんなことはあり得ませんよね。足場も浮いているため制御法も違ってきます。宇宙飛行士のように遊泳飛行もできます。また、自重に影響されず、ロボットアームの先端にさらに自分でロボットを継ぎ足したり、分岐したような、地上に見られない可変形態のロボットも作れます。
質問そのようなロボットが宇宙に出た場合、全て地上からの遠隔操作になるんですか。
いや、実はそうはいかないんです。例えば、遠隔操作する時に、衛星間ネットワークを通してやると、通信時間の遅れが発生し力感覚を通しての操作が難しくなります。また、視覚についても、太陽光の陰や物体の遮蔽のほか、通信容量の制限からカメラ画像が非常に低質になるなど、可視性や視認性に問題があります。このような状況で、全て遠隔操作でやるとしたら、かなり難しい運用上の問題が出てきます。
質問つまり、宇宙空間で自律的に動くように作るわけですか。
全て自律にするのは無理なので、部分的に自律的なもの、ですね。自律的にできるかどうかはミッションとの相対的な問題です。簡単なミッションであれば自律で処理できるだろうし、難しいミッションの場合には自律では難しくなる。自律でできない部分は遠隔で補うことになりますね。自律と遠隔を協調させること、つまり、人間とロボットの知能と技能をいかに協調させ効率的に作業させるかが重要でして、そのためのテレロボティクスの研究や宇宙実証も行ってきました。

中見出し 宇宙開発の将来を担う
「宇宙環境の保全」と「再生循環型宇宙システム」

質問先生は2002(平成14)年に先端研へいらしたわけですが、先端研では今までの研究の延長上とはまた違ったミッションをお持ちなのでしょうか。
私は宇宙ロボットの研究を基礎から始めて宇宙実験までやって、さらにロボットを宇宙での利用につなげたいと考えていました。宇宙ロボットの開発技術の方は、ある程度のレベルまで達したけれども、利用技術の方がまだ遅れている。宇宙ロボットは宇宙活動の重要なツールで、利用技術の開拓が不可欠なので、利用技術とセットで研究したいと考えています。先端研に来てからは、宇宙環境の保全に対するロボットの利用と、再生循環型宇宙システムという二つのテーマを立てて研究を進めています。
質問“宇宙環境の保全”とは、どんなことをするのでしょう。
宇宙空間には、人類がこれまで打ち上げた大量の人工物体の残滓、宇宙デブリがあって、この宇宙のゴミが高速で飛び交っている状態なのです。大きなものだけでも1万個近くあって、今も年間300個くらいずつ増えています。このまま増え続けると、デブリ同士の衝突の連鎖が起き、そのような状況が加速していくと将来の宇宙活動の安全が脅かされることが懸念されます。そこで、宇宙に増え続ける衛星と、宇宙環境保護を両立させるものとして宇宙ロボットが貢献できるのではないかと考え、「宇宙環境保全型システム」という概念を提案し、現在その研究を進めているわけです。
質問そのロボットは、どのように働くのですか。
基本的なコンセプトは、ロボットによって衛星群の一生をケアして、デブリを出さないということです。具体的には、まずロボットを有した軌道保全作業機に衛星のキットを多数搭載して打ち上げ、それを軌道上でロボットによって組み立て、所定の軌道に配置する。その後、定期点検をおこない、必要に応じて衛星を捕獲して診断、保守をして寿命を延ばす。最終的には、ミッションの終わった段階でそれらを回収、分解して、軌道外に投棄する、というライフサイクルをもつシステムを研究しています。このような研究を進めれば、将来の軌道上サービスに必要なほとんどの要素技術が研究できるという面もあります。
質問宇宙にたくさんの“ゴミ”が出ることは、宇宙開発が始まった当初は想定されていなかったのでしょうか。
そうですね。当時は使い捨ての風潮も多少ありましたね。それ以上に、実はロケット打ち上げ時に、本体から切り離され、分離していくもの全てを管理したり、故障した衛星を回収することはものすごくコスト高になってしまうという事情もあったのです。しかし、最近、スペースデブリによる事故が起きたケースがあり、ニアミスも報告されていて、徐々にクローズアップされてきたわけです。
今のような状況を放置し続けると、将来、宇宙観光に出かけるようになったとしても、非常に危険な状態になる恐れがあります。スペースデブリの平均速度は毎秒10kmですからね。例えば、宇宙用の塗装は熱伝導を良くするために金属の微粒子が入っていて、塗装がはがれ、その0.5mmくらいの微粒子がシャトルの窓にぶつかっただけでもひびが入ってしまいます。宇宙で船外作業をする人の宇宙服にも、貫通する可能性が高いわけです。
質問ゴミの海洋投棄や、産業廃棄物の問題とも通じる人類の課題ですね。ところで、宇宙環境保全の研究は日本独自で進められているのでしょうか。それとも国際的に他国と提携しながらやっていらっしゃるんでしょうか。
現在は独自にやっていますが、このような認識は世界的にもありまして、ヨーロッパや米国などでもロボットによってレスキューしようといった研究が進められていますので、これから連携も増えていくと思いますね。
質問これまで宇宙環境のお話を伺ってきましたが、一方の“再生循環型宇宙システム”のテーマについてはいかがでしょうか。
こちらは“宇宙環境保全”のテーマを発展させたものです。地上でも持続的に発展する循環型社会の実現が求められていますよね。宇宙では輸送コストが非常に高いので、なおさら、使い捨て型の考え方から、再生循環型の考え方に転換する必要があるのではないかと。その際にロボットが役立つかもしれないと考えているのです。
再生循環型システムの一例としては、セル型衛星というものを提案しています。セル型衛星とは、衛星をセルの単位に分割してそのセルの組み合わせによって、必要とする機能の衛星を構成するというものです。壊れたセルについては交換して再生することができるわけですね。例えば、地球観測衛星は、観測の機動性や柔軟性、寿命に多くの課題があります。セル型衛星を使うことができれば、セルの組み合わせによってオンデマンドな観測システムをタイムリーに再構成できるのです。故障した場合でも交換して再生がきくので、機動的かつ持続的な地球観測ができるのではないかと期待しています。そのような理由から、セルのメカニズムとロボットによるセルの再構成組立技術の研究を進めています。

本文の終了 |
本文の終了 | ページトップへ