ユニークな先端研と、東大の一機関である先端研というお話がありました。東大全体の中で、先端研がやっていることはどのように見られているのでしょうか。
私が所長になって、東大本部の会議や外部で驚きをもって感じるようになったことは、東大の内と外での先端研の評判のギャップですね(笑)。
東大以外では先端研は東大らしくない革新的なことをやるおもしろい機関として評価が高いんですが、東大内では東大らしくない、「何だかわからないけれど、先端研だからいいんじゃない」といった少し冷ややかな雰囲気、といった感じでしょうか。東大の外で東大らしくないことが評価されているわけですから、東大内の異分子として評判が悪いのは当然でしょう。とはいえ、そのギャップの大きさには驚いています。もちろん、本部や他部局に迎合する必要はありませんが、先端研のミッションをしっかりと認識してもらった上で、ほかの部局では出来ないような活動や制度運営、あるいは研究分野を扱っている組織としてよりポジティブに認知してもらうよう努力することが、重要なのではないかな、と思っています。
今、東京大学の本部に向けてある提案をしています。それは、東京大学の中にさまざまな制度を作ってもらって、各部局はオプションで採用できるようにしてもらいたい、ということです。例えば先端研が採用したオプションがうまくいけば他部局へも波及する、というような、画一的ではない制度を導入して欲しいと考えています。
そのひとつの表れが、特任教員の制度でしょう。先端研が始めて、それが他大学へ広がっている状況ですね。その特任制度を象徴していたのが、戦略的研究拠点育成事業であって、それがいよいよあと一年になりました。これについても簡単にお話いただけますか。
戦略的研究拠点育成事業は4年前の2001年に始まって、科学技術振興調整費によって約10億円の予算がつきました。当時のセンター長だった南谷先生がリーダーで、その10億円弱の予算の7割近くを人件費に使うことにしたわけですが、実はこれは画期的で、文部科学省の想定外だったようです。その予算で定員外の教員として特任制度を導入し、今では60名ほど特任教員がいます。これは、交付金で雇用されている定員内の教員数とほぼ同じですので、先端研はこの戦略的研究拠点開始時から規模が約2倍に膨れ上がったわけです。つまり2倍のパワーを得たということで、実際に戦略的研究拠点が始まってから外部資金の獲得額は2倍になっています。
それでは、残り少なくなってどうするか。この事業が終了後に2倍になったものが元に戻ってしまったら意味がないわけで、いかにこのパワーを維持するのかが我々に課されたミッションであり、義務でもあると思っています。といっても、人の固定化を目的にしているわけではありません。ですから、60人の特任教員がここで育って出て行くという人の流れと、その間に培われた新しい研究分野の発展、というふたつが今、最も大きな課題だと思っています。先端研が特任制度を始めたわけですから、特任の先生方がいい形で次の活躍の場に移っていただくことで、この制度が本当に定着していくことになるんだと思うんですね。そのためには、先端研としてそれを斡旋するような機能を考えています。
そしてもうひとつ。外部資金が2倍になり、いろいろな分野が出来たわけですから、先端研が核となってその新しい分野が世の中に定着していくための拠点形成に向けて一生懸命、努力するということを今後進めていきたいと思います。戦略的研究拠点についている科学技術振興調整費がなくなって、多少のシュリンクはしたとしても、大きなものは先端研に残っていく、ということだと思うんですね。ぜひ、御厨先生にもご協力をいただいて……(笑)。