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研究内容

大見出し 都市、アジア、環境
広範な領域の問題に実践的に取り組む

インタビュアー:教授 伊福部 達

中見出し  ˜都市 ˜に対して
社会科学や人文科学、工学からアプローチ

聞き手大西先生のご専門である都市工学分野は、生活と密着していることもあって誰もが関心を持つと思うんですが、産業、文化、環境なども含まれて非常に範囲が広いですよね。今、先生が一番、力を入れているのはどういったことでしょうか。
どの分野もそうだと思うんですが、「箱」は汎用的に作ってあります。都市環境システムの場合も都市や環境を広く対象とするという意味で名称がつけられていて、実際には研究者が自分の「箱」の色や形を決めるんですね。私の場合は、先端研に来た時に立てた「国土計画」、「アジアを含めた都市計画」、「環境共生型都市」「テレワーク」の4つの項目が「箱」の色というわけです。
聞き手そこで研究のスタイルですが、物理や環境などは仮説、実験、証明という方法論がありますよね。都市工学分野はどうなんでしょう?
都市ですから社会科学や人文科学的なところもあると思います。それらと、工学との接点ですね。私の直接の分野だと交通や人口を扱うんですが、そこは予測等で数理的な手法が活躍する世界でもあります。人が何を好み、経験的にどういう行動をとるのか、ということを踏まえて、定量的予測を行い、将来必要な道路や住宅の量を把握することはありますね。しかし、人間は意識を持って判断をして動くので、ある物体がある法則で動いているという物理的世界とは大分違いますよね。
都市計画の場合は個々の人間ではなく、集合的に社会として人を扱うことが多い。言い換えると、建築が一人ひとりの人に気に入ってもらう家を建てることが出発点だとすると、我々都市計画は社会的に大勢の人が納得する街をどう作ったらいいか、またはどうあるべきかを考えている。人文よりも社会科学というところがありますよね。
他方、人間が経済学的な意味で合理的な行動をする、即ち同じものだったら安いものを買う、同じ値段だったらいいものを買う、ということばかりではなくて、中には気まぐれな人や、経済原理に乗らない発想や行動をする人たちが沢山いたり、直面する状況も多様で、行動を定式化しにくいところは経済学との違いですかね。

中見出し 人間はなぜ、ある場所に住み・働くのか?

聞き手先ほど言われた4つの柱について、もう少し詳しくうかがいたいんですが、テレワークは具体的にどういうことをされているんですか。
私は、もともと人間がなぜ、あるところに住む(働く)のかに関心があります。国土計画は国土の使い方を考えるわけですが、それを個々の都市でみると都市計画になるわけです。都市が環境共生的、サステイナブルであるべきというのがこれからの時代の強い流れです。その新しい原動力の一つが情報通信です。今までは人に会うことを前提に居住場所が決まっていたのが、情報通信の発達で遠隔地に住んでも仕事ができるようになると、距離への抵抗感が消えていくだろうと考えています。
聞き手いわゆる在宅勤務のイメージでしょうか。
それも含まれます。在宅勤務が増えると職場との距離を重視していた人が、住宅周辺の環境をより重視して住宅を選ぶのではないか。企業側も従業員が好む環境に企業を立地した方がいいと考えるのではないか。実際、欧米ではそういう行動原理に立った企業立地も多いようです。
聞き手お話を伺っているとテレワークが進むと、時差を利用したビジネスモデル(アメリカの夜の間、昼間のインドに作業を依頼する等)で経済のグローバル化が進む印象を受けるんですが、その是非も含めて先生はどのようにお考えですか。
今まで日本人がやっていたことを、中国やインドでも出来るようになると日本人の就業機会が奪われることもあるでしょう。これは良い悪いというより、やむをえない面があります。日本は事態を無理に止めるのではなく、それに代わる付加価値の高い労働を生み出さないといけない。通信の発達で場所が問われなくなることはより自由になることでもあって、それは宿命かもしれないですよね。そしてテレワークのひとつの形態でもある。
聞き手北海道の地方都市出身としては、テレワークは文化等を含めて全て東京中心になってしまうという危惧があります。都市の仕組みも当然変わってきますよね。
私は肯定的にとらえていて、今までは東京でしかできなかったことが、札幌でもできるようになってきた。東京だけだと東京が上位になりがちですが、札幌がもっとグローバルに世界の各都市と連携してより多くの発信力をもつようになると、集積している札幌の強みになる。そうすると環境が変わるかなと。
聞き手交通や地理作りへの影響はいかがでしょうか。
情報通信に頼るだけで人に会わないと疎遠になるんですね。企画を立てるといった、頭を使う仕事は在宅でやる。会議やブレインストーミングは、会社で大勢の人が集まって知恵を出し合う。このように時間と場所を使い分けるのがテレワークのやり方だと思うんです。電車の混雑が緩和されたり、排気ガス・CO2の排出が減ったりというプラス面は評価できるのではないでしょうか。
聞き手通信、交通、環境破壊など全てのバランスを見ながら都市計画をするわけですよね。そこで、また話が戻ってしまうようで申し訳ないんですが、これら別々の要素を繋げるという研究アプローチの方法についてもう少し説明していただけますか。
テレワークに関しては、普及させることを第一に研究者を集めて学会を作りました(「日本テレワーク学会」)。今でも続いています。その一方で社会的な実践も必要なので、企業や国、自治体と一緒に普及運動も行っています(「社団法人日本テレワーク協会」)。方法論として、「テレワーク的な働き方が普及するはず」という仮説の元に、効果測定や普及を検証してきた実証を含んだ研究分野だといえます。
聞き手実践では、「先端まちづくり学校」を先端研で開講して、受講生がのべ1600人という大変な普及活動になりましたね。
実は、この10月1日から本郷で正規の修士課程のコースになったんです。工学系研究科都市工学専攻に「都市持続再生学コース」(通称「東大まちづくり大学院」)を作って学位がとれるようになりました。初年度は、留学生1人を含む19人でスタートしています。大学卒業後2年以上経っていないと受験資格が無いので全員が社会人、入試の当初倍率は6倍に上りました(定員が増えて4倍が最終倍率)。授業はもっぱら火曜・水曜・木曜の18時30分から21時15分までと、土曜日に行っています。
いずれは先端研でやっていたようなセミナーも併設して、学位は不要だが、あるテーマを勉強したいという人のニーズにも応えたいと思っています。

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