GPCR(特ににおい受容体)も含めて膜蛋白質の中には他の強制発現系では発現が困難なものも多く、バキュロウイルスの発現系はその意味でも優れていると考えられる。このような特徴を生かして、ウイルス上に機能的な膜蛋白質複合体を発現させ、ハイスループットアッセイ系を起ちあげることができる。通常のリガンド結合アッセイ系であれば、1リットル培養からほぼ1万アッセイ分のウイルスが回収される。つまり通常の動物細胞を用いたアッセイ系より低コストである。
またウイルスを一種のバイオ素子と考えれば、基板上に集積させ高密度のバイオチップを構成することができる。これまでに、ウイルスを1cm×1cmの基板上に1000スポットで固定化することに成功している。ウイルスには、例えばにおい受容体などをディスプレイできるから、においリガンドが受容体に結合したときにそのシグナルを検出することができれば、かなり高感度なバイオチップが可能である。このようなバイオチップを実現するため、リガンド結合シグナルをFRET(fluorescence resonance energy transfer)技術を用いて光の信号に変換する検出系の開発を先端研フォトニクス材料分野の宮野教授らと進めている(図6)。このシステムを確立することができれば、ゲノム上機能未知の遺伝子のリガンド同定も含めて様々な目的に有用なツールとなるであろう。