略歴
1992年12月
帝京大学医学部付属市原病院集中治療センター助手
1995年4月
東京大学医学部付属病院第3内科医員
1999年3月
東京大学駒場オープンラボラトリー助手
2003年4月
ハーバード大学医学部ベスイスラエルダコネス医療センター客員研究員
2007年12月
東京大学先端科学技術研究センター特任研究員
2010年4月
東京大学先端科学技術研究センター特任准教授
2013年4月
東京大学アイソトープ総合センター教授(兼務)
血管システムにおいて重要な役割を果たす内皮細胞が、低酸素、変成脂質、炎症刺激などの環境に適応するメカニズムを有していることが、マイクロアレイを使って網羅的に遺伝子発現を比較することによって明らかになりました。そして、虚血性心疾患の原因となる動脈硬化などの疾患は、この適応現象が破綻することによって引き起こされると考えられます。近年クロマチン免疫沈降と超高速塩基配列シーケンサーの組み合わせによって、遺伝情報をコードしているデオキシリボ核酸(DNA)が巻き付くヒストン蛋白にもう一つの遺伝情報が書き込まれていることが明らかになり、疾患の始まりの背景には染色体のダイナミックな変化が起こっている事が判ってきました。私達は、国際エピゲノムコンソーシアムの一員として、このヒストン修飾を中心としたエピゲノム情報を循環器系細胞である内皮細胞を中心に解析しています。
さらに私達は、染色体の変化とDNAからリボ核酸(RNA)を作り出す、“転写”の関係を明らかにするため、RNAポリメレースが遺伝子上に結合する場所や、これを介したクロマチンの相互作用を網羅的に観察しています。従来の結果に基づいて、RNAポリメレースがDNAの上を滑りながらコピーを作っていくモデルではなく、RNAポリメレースが沢山集まっている“工場”にDNAが取り込まれてRNAが作られるというモデルを提唱しています。そして、この“転写ファクトリー”の実体を明らかにすること、そして細胞の中心にある細胞核内で遺伝情報を巧妙に詰め込んだ染色体が刺激に応じて示す挙動を明らかにすること、によって細胞内での遺伝情報の転写マシナリーの解明に取り組んでいます。
私達は様々な領域、国籍の研究者と力を合わせて、解像度の高い顕微鏡でもいまだ見ることができない生命現象の根源的な世界に、最新の実験手法と情報処理の力で挑んでいます。