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研究について

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研究内容 バリアフリー科学の夢 人間情報工学 教授 伊福部 達

「可塑性」によって生まれた代償機能を壊さないようにしながら機能を回復することが重要

福祉工学は、体の機能の一部が低下したり失われたりしても快適な生活が送れるようにするのが目的ですので、医療の目的と変わりません。ただし、福祉工学は障害自体を治すのではなく、技術によって生活の場や体の機能を補完するという立場をとります。その点で人工心臓のように体に人工物を入れて治すという医療技術とは大きく違っています。しかし、体の機能を補完するといっても、ロボットのセンサや手足が壊れたので、それを他のものに置きかえればよいという簡単なものではありません。

喉頭摘出者のための抑揚が出せる
人口喉頭「ユアトーン」

人間の脳には、環境の変化や機能の低下・欠損によって、今まで使われていなかった脳のある部分が働き出し、新たな能力が生み出されるという面があります。手を失った人が足で自在に文字を書くようになり、視覚を失った人が音だけで部屋の大きさや、目の前の障害物の存在を感知するようになるといった例が挙げられるでしょう。このような脳の変化は「可塑性」と呼ばれるもので、それによって代償機能が生まれることが知られています。この代償機能を壊さないようにしながら機能を回復することが重要になります。

その一方で、難聴になると単に聴力が落ちるだけでなく、言語の処理能力が変わったり遅くなったりするという脳の変化もでることがあります。そのため、声を大きくして耳から脳に送るだけの補聴器は、高齢で難聴の人たちの約半分が役に立たないといいます。本当に役に立つものにするには、脳内における言語処理の状態を検査し、その結果にあわせて補聴器を設計する必要があるわけです。

バリアフリー科学はヒトの機能と同じような機能を技術で実現するという難題への挑戦

また、バリアフリー社会は工学的な技術開発だけでは実現し得ないといえるでしょう。モノを知覚する脳の働きやそれに伴う人間行動の研究、バリアフリー製品が普及したときの経済効果の調査、ユーザーによる評価などを扱う「バリアフリー科学」が必要になります。先端研には多様な分野の専門家がいることから、バリアフリー科学を実現する場としては最適なところです。そして、これまで社会保障費を受けて生活していた人たちがバリアフリー技術の助けでもう一度働くチャンスを得て生きがいのある生活を取り戻すようになるという役割も果たすでしょう。

さらに、バリアフリー科学はヒトの機能と同じような機能を技術で実現するという難題に挑戦することになるので、従来の科学技術の延長では考えられなかったようなイノベーションが生まれるかもしれません。私たちは、そのイノベーションにより新しいマーケットが開かれ、より多くの人々が科学・技術の恩恵を受けられればという「夢」を抱いています。

註)本稿は、東京大学広報誌「淡青」No.19より許可を得て転載するものです。

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