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研究について

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研究内容 人間の脳の働きを計測し、現代社会が抱える様々な問題を解決に導く脳情報システム 客員教授 小泉 英明

細分化した学問分野を統合することの重要性

専門である脳をテーマに、分野を超えて学際的に協力していくことに関心があります。デカルトの「我思う故に我有り」という有名な言葉があります。「我思う」のは私たちの脳で、歴史的には人文学や芸術の分野で脳が思っていることの研究が行われてきました。自然科学-サイエンスという言葉が出来たのは近代になってからで、それまではあまり区別がされていなかったんですね。デカルトはものごとを考える方法について『方法叙説』を著し、その中で要素還元論について述べています。物ごとを要素に分けていって、その要素が全て明晰になれば全体がよく見えてくるという分析的な考え方のことですね。これは一つの大事な方法論で、その原理に従えばどんどん細部に入り、細かく探っていくとあいまいだった対象が明確に見えてくる。今までサイエンスがやってきたのは、そういうことです。

ただ、デカルトはそれだけではなくて、「一度分解したら、今度は下りてきた階段を再びあがっていくように、その様子を統合して元通りに組み立てて初めてそのシステムが理解できる」ともはっきり書いています。私が大事だと思っているのが正にその点で、物事が専門化され過ぎると狭いところに入り込んでしまって縦割り、蛸壺など、自分の専門以外は何も見えなくなってくる。全体を見ようとしても他があまりに専門的で理解できないのが現状ですよね。大事なのは、ばらばらになった学問分野の橋渡しをして統合することで、今までにはなかったような新しいものが創発される。それを担うのが先端研だろうと、理解しています。

trans-disciplinary⇔inter-disciplinary

学際性に関して、私自身はtrans-disciplinary(TD)という表現を、inter-disciplinaryとは区別して使っています。inter-disciplinary-学際領域というのは二つの領域が重なった境界領域、二つ以上では、multi-disciplinary-多学性という概念ですが、いろいろなものを受容できる器を作って、そこに人が集まれば自然と分野は融合すると考えられていました。しかし実際には様々な壁があってそれだけでは不十分なことがわかってきたわけです。複数の分野がただ協力し合って何かが出来たというのではなく、異分野が出合ったときにこれまでとは全く違うものが創発されるtrans-disciplinarityの実現にはどうすればいいか。

経験せずに頭だけで方法を編み出すことは出来ないと感じています。新しい方法論を編み出すには自分が当事者でなくてはいけません。現在、国の大型プロジェクトのマネジメントをいくつかやっているのですが、そこでは省庁や評価委員会の反応など、起こったこと全てを記録するようにしています。10年後には重要な記録になるという意気込みで、方法論の開発を試みています。

環境問題は、人間の脳の進化がもたらしたもの

私はこれまで偏光ゼーマン原子吸光法(ものに含まれる元素の定量分析)やMRI(磁気共鳴描画)の開発に携わってきました。測ることが自分の土台にあって、今は精神の計測に力を注いでいます。頭で考えていることをいかに物理計測するか。近赤外光トポグラフィという装置を頭に着けて脳を計測する研究を中心においています。

ところで、生物種ごとに重量を足し上げて最も重いのは人間です。現生人類の歴史はたかだか100万年程度で、その間に人口爆発を起こしたわけです。これには人類の大脳皮質が大きく進化したことが関係しています。脳は中心から進化して外側の一番新しい大脳皮質と呼ばれる部分の前頭前野という場所が判断や記憶を司っています。ここの体積をチンパンジーと人間とで比較するとおよそ6倍の差があります。チンパンジーの頭の方が小さいのでそれを加味した割合は、約2倍。チンパンジーは600万年前に人間と枝分かれしたと言われていて、遺伝子レベルでは1.3%程度しか違わないのに、そのわずかな差が前頭前野に効いて人類は言葉をしゃべったり、モノを作ったり、モノを作るための道具まで作れるようになり、人工的なものが自然界に出ていった。それが正に環境問題なわけですね。環境問題の原点は人間の脳に帰着させなくてはいけないと考えています。

脳は環境によって作られる、変化していく

ここで本質的なことは、脳が環境によって作られる要素が多いという点。これまではゲノム解析ができたら人間の設計図がわかるように言われていましたが今は誰もそのようなことは言いません。ほぼ全ての細胞が同じ遺伝子を持つにもかかわらず、現れる形質が違うということから、さらにDNAの配列以外の要素、すなわち”エピジェネティックス”に話が移っています。つまり、ある遺伝子を持っていてもそれが一生、目を覚まさなければその遺伝情報は無いに等しい。その遺伝子が目を覚ますかは環境の問題も絡んでくるのです。赤ちゃんは生後すぐ、大脳新皮質に大雑把な神経回路をつないでいくのですが、人間は脳の中に自然淘汰のメカニズムを取り込んでいて、外部からの刺激を受けた神経回路だけが生き残って残りは捨てられます。即ち、環境から入ってきたものだけが生き残る=環境に適応できるわけです。例えば、生まれたての日本人の赤ちゃんは「L」と「R」を区別して聞いています。ところが日本語には区別の必要が無いので、成長の過程でその聞き分け能力を負荷とみなして捨てているわけです。その分、肝心なことをより精度高く身に着ける。能力が劣るわけではなくて、余計なものを落としていると考えた方がいいわけですね。

脳の進化はさほど早くありません。周囲の環境変化が早すぎると、脳がついていけずに破綻する可能性が出てきてしまいます。そこで、環境が激変している中で脳がどれだけ変わっているかを調べておく必要があります。それで今、国のプロジェクトで人間の脳の変化、特に社会性がどう変化しているかを中心に研究しているわけですが、脳の働きを客観的に計測できないと科学的なアプローチができません。脳の計測法を開発し、応用しながら、最終的には現代社会が抱えるさまざまな問題解決に寄与したいと考えています。

未だ切り込まれていない問題の原点に入っていくためには、「自分はこの専門ではありませんから」「この分野は知りませんから」などと言っていられない。解決のためには何でもやらなくてはいけない。そういうアプローチが重要で、先端研にしても本当に世の中の役に立つには、専門にこだわるのではなく、特に若い人たちはどんどんそこから出て、今、解決すべき問題に飛び込む。そして解決できないと思っても人任せにせずに、自分が勉強をして、自分が解決していく。ただチームを組んで”手配師”のように問題に向かっても本当の解決にはならないと思います。

聞き手:神野智世子

(2007年12月5日)

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