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先端とは何か
第九回  近藤 武夫 准教授
kondo


  先端研の1号館は、かつて国産旅客機YS-11の実験にも使用された風洞実験施設があることで知られる歴史的な建築物である。その1号館にあるトイレは、なんと男女共用だ。先端とは何かを語るはずのエッセイで、いきなりトイレの話から始めてしまって恐縮なのだが、東大の古い建物では、現在も男女共用だったり、かつての男子トイレを女子トイレに作り直して使っているところがあるようだ。どうやら建物が作られた頃、学生や教員がほぼ男性に占められていて、女性用のトイレを作る必要性がなかったということらしい。大学設備の利用者として男子を主に考えていた過去があったことは、現在から見ればなんとも滑稽なことのように思える。

  私の専門である、障害のある人の高等教育進学支援に引き寄せると、このことには有意義な示唆がある。障害のある人のために建物を整備することは国内ではまだまだ一般的ではない。「障害のある人が大学に来ることなんてほんのわずかなんだから、そのための準備をするなんてナンセンス」という声を聞くこともそう珍しくはない。どこか既視感を感じられないだろうか?「女性が大学に来ることなんて」かつてそんなことが言われていた。障害のある学生を取り巻く現在の状況も、それが笑い話になる未来が訪れるだろう。

  昨年、車いすユーザーの学生と、米国の西海岸に出かけた。例えば米国ではどこのトイレでも、車いすのマークが貼られている。日本では障害者用のトイレといえば、自動ドアや手すりその他各種設備が揃っていて、広々として快適に過ごせるのだが、それはどこにでもあるわけではない。米国では、日本のように優れた障害者用トイレを見かけることはまずないが、どこでも最低限度、車いすで用を足せるようにはなっている。1970年代以降、車いすユーザーの利用を保障した国と、誰かの善意で所々におもてなしの素晴らしい場所がある国。この比較のどちらが望ましいのかに悩む当事者。価値観の衝突は世界中に溢れている。
   これまでの先生方のエッセイを拝読すると、先端についてひとつの共通点が見えてくるように思える。それは皆さんが独自の比較の視点や経験を持っておられることだ。異領域の研究、文化、歴史、現象…異質なものを恐れず、対話し、対置することで初めて、「そこ」と「ここ」を比べる視点が得られる。そして目の前にもともと存在していたが、不可視であった事物に突然気づく。その瞬間、未来が一気に見えてくるように感じる。それが先端なのではないかと思う。

   今年の夏、高等教育と障害をテーマとしたカンファレンスへ出席するためオーストリアへ出かけた。そこで出会ったリトアニアのイエバは「私達がこの国で最初の障害学生支援を始めた大学よ」と誇らしげに言った。クロアチアのマリジャンは「障害学生支援は盛んだが、学習障害はまだ障害だと認められていないんだ」と語ってくれた。そして私は、ここにも差異があり、また先端があるのだ、と確かに感じた。

(2013年10月)

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