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先端とは何か
第十七回  新谷 元嗣 教授
shintani
   先端とは時間との闘いである?   


  経済学で用いられる重要な概念のひとつに「裁定取引(アービトラージ)」がある。同じモノが異なる値段で取引されていれば、安く買って高く売ることで儲かる余地が生じる。 しかし、そんな状況は長続きしないだろう。確実に儲かることに気付いた人々が殺到して取引することで、価格差が短期間のうちに消滅してしまうからだ。 このような裁定取引の存在は市場の需給バランスを保つ原動力となっている。しかし、たとえ裁定取引の機会が一瞬であっても、価格差の情報を一番最初に入手して利益を得ている者がいるはずだ。それはいったい誰なのか。
  昨年ニューヨークタイムズ紙ベストセラーとなったマイケル・ルイス著『フラッシュ・ボーイズ』では超高速取引業者(ハイ・フリークエンシー・トレーダー)たちの「時間との闘い」が描かれている。 現代の株式市場は高度に電子化されているため、ミリ秒、マイクロ秒単位の時間の差が裁定取引の機会を左右する。 彼らは投資家による株式の買値や売値の情報を、競争者よりも早く手に入れるために、ありとあらゆる手を尽くす。 証券取引所のデータセンターになるべく近い場所にサーバーを設置するために隣のビルを買い取り、シカゴ・ニューヨーク間を最短で結ぶ光ケーブルを敷設するために極秘裏に一直線の地下トンネルを掘ったという。
  私の研究テーマは経済データを使ったマクロ経済モデルの推定である。 別に利ざやを稼ぐために研究しているわけではないので、私自身の「時間との闘い」はマイクロ秒レベルの話ではない。 一国の経済活動を把握するための集計には時間を要し、例えば代表的なマクロ経済データであるGDPは3ヶ月に一度しか公表されない。 モデルの推定精度を高めたければ、十分なサンプルサイズの時系列データを確保できるまで、さらに待つ必要があるだろう。 問題は、マクロ経済構造そのものが長期にわたって安定しているわけではないことだ。 大きな構造変化が起こってしまえば、過去のデータに含まれている情報が即座に陳腐化してしまう。
  通常、マクロ経済モデルは政策効果を検討する目的で使われる。 構造変化を無視して長期のデータを用いてモデルを推定しても、現状の政策分析に用いることはできない。 一方で構造変化がおきる前の早い段階で推定すれば、サンプルサイズが小さいためモデルの信頼性が低くなる、というジレンマに陥ってしまう。 この手の「時間との闘い」において、ベイズ流の分析が力を発揮すると私は考える。 サンプルサイズが小さい欠点を、学者やエコノミストの間で共有し蓄積されてきた先験的な知識や信念でうまく補うことができれば、比較的短時間で現状の把握や政策評価が可能となるだろう。 このようなベイズ流のアプローチは、限られた時間内でのビッグデータの情報処理等でも今後活用されることが期待できる。

(2015年11月)

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