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研究について

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「アルテク」で障害支援を変える
支援情報システム 巌淵研究室

障害のある人向けの特別な福祉機器。できないことをできるようにがんばって直すことを求めるリハビリテーション。ITが日常生活に浸透した現代で、もっと障害のある人が自分らしさを実感できる、新しい支援はできないのでしょうか。巖淵研究室で開発されていたのは、非先端技術にも関わらず世界基準の支援技術でした。


■ 技術の力に、遠慮はいらない

タブレット端末のカメラで教科書を写す。読みたい部分を指でタップすると音声が読み上げてくれる。手書きでの書き込みや音声メモも追加できる。巖淵研究室が2015年11月にリリースした学習障害児向き読み書き支援アプリ『タッチ&リード』だ。「小中学校の通常学級に在籍する子どもの2.4%が、知的発達に遅れのない読み書き困難な子どもです。彼らは、読むと時間がかかるが、聞くと理解できる。『タッチ&リード』を使うと一気に理解度が上がり、15点だったテストが90点になる子もいます」と説明する巖淵准教授。 「旧来のリハビリの考え方は“がんばってできるようになろう”でした。でも、訓練に追いつかないから障害があるんです。訓練を重ねても差は縮まらず、逆に足らないことに苦しみます」。それが不登校などさまざまな影響につながると話す。「ところが、このアプリを使うとスッと理解できるようになる子が大勢いる。むしろ周りの子より早く理解できたりもします。人の支援も有効ですが、技術の方が向いている、技術じゃないと行けない場所がある。技術はその力を使うことに、遠慮する必要はないということです」。

巖淵研究室では、工学者が目指す超最新鋭の技術は使わない。すでに身の回りにあるテクノロジー“アルテク”を駆使し、巖淵准教授の言葉を借りれば「現場に入るソリューション」を形にする。「子どもたちは特殊な福祉機器よりスマートフォンを選びます。カッコイイし、特殊な福祉機器=ユーザーも特別な人、と見られることに抵抗を覚えるからです。支援技術の利用が生み出す可能性によって社会における障害に対する考え方を変えられればと私たちは願っています」。 今、端末には障害のある人が使いやすい機能が次々と入り始めた。メインストリームの技術で開発されるアルテクなら、ソフトをオンラインで入手し、既存のハードに入れ、常にアップデートされた最新版を使うことができる。「特殊な機器が壊れたら修理に1週間はかかる。発話の福祉機器なら、使う人は1週間声を失います。アマゾンやAPPストアで普通に売られている、それが大切です」。世界の福祉機器市場では、時間や費用の開発コストが低いアルテクを応用した製品開発がトレンドだという。

※ 文部科学省:「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」調査結果(2012)


タッチ&リード


学習障害児向き読み書き支援アプリ『タッチ&リード』。指でタップした場所を音声で読み上げてくれる。

外部リンク  タッチ&リードについて(巌淵研究室)



インドの高校生による研究室見学

インドの高校生に説明する巖淵准教授。先端研のバリアフリー研究は見学希望が多い。


■ “ハイブリディアン”で、いいじゃないか

支援技術を使えば、技術を使わない生の人間をも超える能力を獲得できる。読み書きに困難を抱える子どもは、支援技術を使った瞬間に悩みから開放される。では、そこから小説家を目指すのかというと「そうではなく、サッカーしたい、アートをやりたい、なんて言いますよ。 視野が変わり、見通しが変わる。読み書きできないことで立ち止まっていた場所から、自分のしたいことに向けて動き出すんです。 世間では全般的に優れたパフォーマンスを発揮できる人を高く評価しがちですが、本来、人の能力はデコボコですよね。デコっと飛び出た能力を社会で生かすほうがずっといいと思います」。 巖淵研究室が連携を密にする中邑研究室(人間支援工学)では、ハイテク機能を自分の心身機能の一部に融合して生きる生き方を「ハイブリディアン(Hybridian)」と呼んでいる。そう考えると、現代人の大多数がハイブリディアンではないだろうか。

だが、教育現場に支援技術を持ち込むことは容易ではない。
「子どもが機械に頼らず自立することを応援するのが仕事だと考える教育者ほど、利用への抵抗が強いですね。でも、その子たちが社会に参画する10年、20年先は、もっとテクノロジーが使われます。アルテクはズルではなく、目が悪いから眼鏡をかけることと同じなんですよ」。 米国では法制度で支援技術機器の利用を考慮するプロセスがあるが、日本は「理解のある先生に当たったらラッキー」という状況だと巖淵准教授は言う。 「子どもたちは待てないんですよ。ものすごいスピードで成長しますから。だから、私たちが開発するものは必ず製品にします。研究者として論文を出すこも大事ですが、支援の現場に対するもっと直接的な役割を果たせるべきとも思うのです。 私たちは現場に入るので、アルテクだけどここまでできる、と具体的に見せるのが第一の仕事です」。


■ 「自分でできる」より「私は何をしたいか」

身の回りにあるハードウェアを使うアルテクは、ソフトに最大の強みがある。ゲーム機やタブレットのカメラを利用した『OAK』という重度重複障害児向け観察支援ツールには、利用者の身体のどの部分がよく動いたのか、動きの履歴を可視化するモーションヒストリー機能が備わっている。「要は動きを測るだけです。でも、家族や介助者が本当に知りたいのは、この子はどのくらい理解しているの?という“認知”面なんですよ。 複数の重度障害を持つ子のわずかな反応から判断するのは、極めて難しい。とはいえ、脳波の測定装置を付けたりしたら、誰が管理します? 現場は対応できないですよ。ただでさえ大変な日常に、高度な技術は入り込めません。音楽を流したらかすかに首が動く、いちごジャムを舌先に乗せたら目では認識できないレベルで口元が動く。 こちらが与える刺激に対する変化とセットにすれば、認知面を含めての実態を探ることができます」。この技術も、最先端の工学研究者にとっては目新しくない。「すでにある技術をアイデアでソリューションに変えることが強みです。現場で使える解は、必ずシンプルですから」。

支援と言えば衣食住の自立が重視される。しかし、「食事や着替えといった動作が自分でできることよりも、何を食べるか、どんな服を着るかのほうが本人にとって重要です。心理的な自立は身体的な自立より大切。“自分でできる”ではなく“何をしたいか”が、本当の自分らしさだと私は思っています」。 現場に入るたびに新たな課題が見つかり、開発にフィードバックする日々だ。現場はいつでも、アルテク研究者の解を待っている。


OAK


重度重複障害児向け観察支援ツール『OAK Cam』。よく動く場所ほど赤く表示される。

外部リンク  OAK Cam(オーク カム)製品概要


支援技術、世界の主流は「アルテク」 区切り線
これまでは福祉機器は特殊な製品だから、特殊技術なので開発コストが高く、価格が高く、限られた場所でしか買えないし壊れてもすぐに代替品がない。さらに、
  使っている人も特別な人「できない部分」にフォーカス、機能が時代に追いつかない、変わらないデザイン。
  これからは「アルテク」すでに身の回りにある技術を使った製品だから、既存の端末だから開発コストが低い、手頃な価格、オンラインや店頭で手軽に買える、壊れてもすぐに代替品が手に入る。
  さらに、誰もが使うデバイス「人間の能力の拡張」にフォーカス、アップデートすればいつでも最新機能に、最新トレンドのデザイン。

障害者の9割は途上国に。これからの支援技術は国際展開が大前提。


研究者の横顔

巖淵 守 准教授
大学院では超伝導体デバイスの研究開発を行っていたが、阪神淡路大震災のボランティアをきっかけにこの分野へ気持ちが傾いた。「当時は研究に対する自信を失い、逃げたかった」と本人は言うが、「博士課程修了間近に中邑賢龍教授(人間支援工学)と出会い、10分間だけ話し、優れたコミュニケーション研究を行う英国のダンディ大学の研究者たちを紹介され、奨学金面談前日に留学先を米国から英国へ変えた」と聞くと、導かれたようにも見える。 「賢龍先生は、あんな危険な賭けは二度としないと言っています」と笑いながらも「片足は工学、片足は福祉の分野ですが、紹介したい気持ちとものを持って現場に入ります。対面で顔を見て、反応を知ることが一番の原動力なんです」。



内部リンク  巖淵准教授 研究者プロフィール
外部リンク  巖淵研究室のページ

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