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東京大学 先端科学技術研究センター

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先端研ニュース

エピジェネティクス異常が糖尿病による腎機能障害をもたらすことを証明

2018年11月6日

東京大学先端科学技術センターの藤田敏郎名誉教授と大庭成喜特任研究員(臨床エピジェネティクス寄付研究部門)を始めとする研究チームは、腎臓メサンギウム細胞のDNA脱メチル化異常が糖尿病性腎症の進行に重要な役割を演じていることを明らかにしました。
本成果は11月5日に英国科学誌 Scientific Reports に掲載されました。

 

現在、腎不全患者の透析導入による医療費増大が大きな社会問題となっています。腎不全の原因疾患の中で糖尿病性腎症が一番の原因疾患であり、糖尿病性腎症の進行抑制は早急に解決すべき課題です。

 

わが国の慢性透析療法の現況

透析患者数32万人を超える(出典:日本透析医学会「図説 わが国の慢性透析療法の現況」 2015年12月31日現在)
平成26年度の国民医療費40兆8,071億円のうち、腎不全の医療費が1兆5,346億円を占めている

 

糖尿病性腎症は、一度発症すると、その後血糖値を正常化しても、進行をくい止めるのが困難な事が知られており(メモリー効果)、その背景にはエピジェネティックス異常の存在があると考えられます。エピジェネティックス異常の中でもDNAのメチル化修飾は、一度修飾を受けると安定して固定化されるため、病態により大きな影響を与えると考えられています。そこで、本研究ではDNAメチル化異常について検討を行いました。
糖尿病性腎症の最も重要と考えられている組織学的な変化は、腎臓糸球体の硬化性変化(メサンギウム細胞の線維化)です。エピジェネティクス異常は細胞固有の変化であり、腎臓は多種類の細胞から構成されているため、メサンギウム細胞に注目し、糖尿病モデルdb/dbマウスからメサンギウム細胞のprimary culture細胞を作製して実験を行いました。

研究チームが線維化に関連する遺伝子のDNAメチル化状態を調べたところ、成長因子の遺伝子、炎症関連遺伝子、angiotensin II受容体遺伝子にDNA脱メチル化異常が誘導されていることがわかりました。これまでの報告から成長因子のTGF betaの活性化が糸球体硬化に重要であることが示唆されていたため、Tgfb1遺伝子のDNA脱メチル化の機序に焦点を絞って研究を進めました。
その結果、Tgfb1遺伝子promoter領域の転写因子Usf-1の結合部位への、DNAメチル化酵素DNMT1の結合が減弱することで、DNAメチル化が減少し、Tgfb1の発現亢進が誘導されていることが明らかとなりました。さらにDNAメチル化修飾を誘導する葉酸を投与する実験により、DNA脱メチル化異常が発現亢進の原因であることを証明しました。また、血糖を正常化しても良くならなかったDNAメチル化異常と腎機能障害が抗酸化薬TEMPOLの投与にて改善したことから、DNAのメチル化異常には酸化ストレスの亢進が重要な役割を演じていることを突き止めました。

 

糖尿病マウスメサンギウム細胞ではTgfb1遺伝子のpromoter領域が脱メチル化されている

図:糖尿病マウスメサンギウム細胞ではTgfb1遺伝子のpromoter領域が脱メチル化されている
正常db/mマウスのTSS-639 (Usf-1結合部位)のDNAメチル化(●)がdb/dbマウスでは脱メチル化(〇)されている

 

本研究は、糖尿病性腎症の進行を抑制するためには、エピジェネティク治療薬の開発が重要であることを実証したものであり、糖尿病による腎機能障害の医療に貢献するものと期待されます。

本研究は、以下の事業・研究課題による支援を受けて行われました。

■ 日本医療研究開発機構(AMED) 革新的先端研究開発支援事業AMED-CREST研究開発領域「エピゲノム研究に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出」課題名「生活習慣病による進行性腎障害に関わるエピジェネティック異常の解明と診断・治療への応用」
■ 日本医療研究開発機構(AMED)循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業「糖尿病腎症の発症・重症化予測とそれに基づく予防に関する研究」課題名「エピゲノム情報を用いた糖尿病性腎症に対する新規診断・治療法の開発」(課題番号:JP18ek0210093)
■ 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)「生活習慣病の高血圧/臓器障害における糖質・鉱質コルチコイドの役割と新規治療探索」(課題番号:15H05788)
■ 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)「生活習慣病の高血圧/臓器障害における糖質・鉱質コルチコイドの役割と新規治療探索」(課題番号:15H02538)
■ 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(S)「生活習慣病の病態におけるアルドステロン/鉱質コルチコイド受容体活性化機構の解明」(課題番号:21229012)

 

【論文情報】

雑誌名:「Scientific Reports」(オンライン版:2018年11月5日付)
論文タイトル: Aberrant DNA methylation of Tgfb1 in diabetic kidney mesangial cells
著者: Shigeyoshi Oba, Nobuhiro Ayuzawa, Mitsuhiro Nishimoto, Wakako Kawarazaki, Kohei Ueda, Daigoro Hirohama, Fumiko Kawakami-Mori, Tatsuo Shimosawa, Takeshi Marumo, and Toshiro Fujita
URL: https://doi.org/10.1038/s41598-018-34612-3

 

【関連リンク】

外部リンク 別ウインドウで開く 臨床エピジェネティクス 寄附研究部門

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