研究者一覧
- 特任准教授Project Associate Professor
- 河原崎 和歌子KAWARAZAKI Wakako
- ゲノムサイエンス&メディシン 分野
- wkawarazaki-tkyumin.ac.jp
略歴
2001年 3月 | 新潟大学医学部医学科卒業 |
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2001年 5月 | 沖縄県立中部病院 研修医 |
2004年 5月 | 沖縄県立宮古病院内科 医員 |
2005年 4月 | 東京女子医科大学腎センター外科 研究医 |
2005年 8月 | 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科 医員 |
2005年10月 | 東京医科大学八王子医療センター腎臓内科 医員 |
2006年 5月 | 東京大学医学部付属病院腎臓・内分泌内科 医員 |
2011年 3月 | 東京大学医学系研究科博士課程修了 |
2011年 4月 | 東京大学医学部付属病院腎臓・内分泌内科 医員 |
2012年 4月 | 東京大学先端科学技術研究センター特任研究員 |
2018年 4月 | 東京大学先端科学技術研究センター特任助教 |
2021年 3月 | 東京大学先端科学技術研究センター特任准教授(~2022年7月) |
研究分野
私達の研究室では生活習慣が深く関与する高血圧や慢性腎臓病の発症機序に注目し、特に次の3つを主なテーマとし研究を行なっております。
1)食塩摂取と肥満、加齢などの環境因子により増悪する高血圧及び慢性腎臓病の発症機序の解明と予防法・治療法の開発
2)糖尿病性腎症の機序解明と新規診断法・治療法の開発
3)腎臓による血圧・電解質恒常性の維持機構の解明
脊椎動物が乾燥した陸上で生きていく上で、腎臓における塩分再吸収機構は体液保持のために非常に重要でしたが、現代では過剰な食塩摂取が高血圧や腎臓病を発症させる原因となっています。高血圧は遺伝的素因の他、ストレスや肥満、加齢などの環境因子の影響を受けて発症しますが食塩摂取が深く関与しています。食塩を摂取すると、血圧が上昇する人(食塩感受性)としない人(食塩非感受性)がいますが、食塩摂取により生じる高血圧を食塩感受性高血圧といいます。血圧調節には、交感神経系及び昇圧ホルモンカスケードであるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)が腎臓と連携して関わっており、本来RAA系は食塩摂取により抑制されますが、食塩感受性の個体においては交感神経やRAA系が不適切に亢進して血圧上昇や腎障害を発症します。例えば腎臓でナトリウムの再吸収を促進するホルモンをアルドステロンといいますが、通常、高食塩摂取時には分泌が抑制されます。しかし、何らかの異常でアルドステロンが抑制されない場合、食塩摂取時にその受容体であるミネラロコルチコイド受容体(MR)の活性化を介して、心臓や腎臓で障害を起こすことが分かりました。さらに、食塩感受性の個体では食塩摂取時に血漿アルドステロン濃度が抑制されても、腎臓でRac1蛋白が活性化してMRを活性化するために高血圧や腎障害を生じることを見出してきました。また、肥満時には脂肪細胞からアルドステロン分泌促進因子が分泌されるため、本来食塩摂取時には抑制されるアルドステロン分泌が抑制されずに継続し、血圧上昇や腎障害を生じる原因となります。また、加齢においては血中の抗加齢因子Klothoの減少が原因となり、高食塩摂取時に血管のWnt5a-RhoA系活性化を介した血管収縮が亢進して高血圧を生じます。このように過剰な食塩の摂取は、生体の恒常性を破綻させ疾患を発症する原因となります。私達はこれらの研究を通して減塩の重要性を発信し、高血圧や腎臓病の予防や新たな治療法の開発を行なう他、高齢化社会へ向けて加齢性疾患の解析にも取り組んでいます。
- 図1 若年マウスにおけるテレメトリー法による血圧測定
- 図2 高齢マウスにおける高食塩食の血圧への影響
- 図3 高齢マウスの食塩感受性高血圧はKlotho補充により抑制される
受賞
- 2010年 3月 高血圧におけるアルドステロンと関連物質国際シンポジウム若手研究者賞
- 2010年 5月 第3回国際アルドステロンフォーラム最優秀若手研究者賞
- 2011年11月 米国高血圧学会若手研究者賞日本人部門
- 2012年 6月 日本腎臓学会総会 優秀演題賞
- 2012年 5月 第5回国際アルドステロンフォーラム優秀若手研究者賞
- 2012年 5月 高血圧と腎疾患研究会 奨励賞
- 2018年11月 日本高血圧学会 女性研究者奨励賞
- 2019年 6月 日本腎臓学会総会 優秀演題賞
- 2019年11月 日本高血圧学会 Splendid Basic Hypertension Research Award
キーワード
高血圧、慢性腎臓病、食塩感受性、加齢