ブレイクスルーへの思考

四六判/256ページ
本体 2,200円 + 税
ISBN978-4-13-043037-1
外部リンク東京大学出版会

広報誌の対談が書籍になりました!

ブレイクスルーへの思考

東大先端研が実践する発想のマネジメント

先端研の研究者は、いかにして突破口を見出すか。最先端の研究は、
なぜその発想や着想に至ったのか。

広報誌に掲載しきれなかった内容も完全収録。これまでほとんど語られることのなかった最先端の研究を生み出す研究者の思考や人となりを、所長の神﨑亮平教授がインタビューで引き出します。

先端研の個性豊かな研究者たちが持つ多様な、そして普遍的な思考は、研究者ばかりでなく、マネジメントや企画、営業の現場など、今まさに課題に立ち向かっているあらゆる人に、ブレイクスルーへのきっかけとなるはずです。


対談内容から


Ⅰ. ブレイクスルーへの視点


人がやらないことこそ面白い   ―― 隙間という視点

西成活裕教授と神崎亮平所長の対談の様子

「1つのことを7年間続けると、誰かが振り向いてくれるし、味方も出てくる。でもほとんどの人はその前にくじけてやめてしまうんだ。本当に何かをブレイクスルーする人は、めげずに7年間やる」

学問体系を作り上げるのは、研究者の夢である。しかし、そこかしこで踊る「新しい研究領域・学問体系の開拓」という言葉を実際に形にするのは、想像を絶する壁がある。当時、見向きもされなかったという『渋滞学』は、なぜ壁を超えられたのか。


ニーズを組み合わせて新しい価値を生み出す   ―― デザインという視点

森川博之教授と神崎亮平所長の対談の様子

「ニーズと組み合わせて新しい価値を生み出す。そういう社会デザインのようなものを、学問としてきちんと評価できるしくみをつくれたらいいなと思っています。技術自体は従来のものを使っていても、それで新しい価値を創ることが重要なのです」

世の中のあらゆるモノとコトが結びつけられる時代は、情報に新たな意味と価値を与える。日本の現状を「技術の差ではなく、やり方の差」だと考える理由は何か。情報という暴れ馬を手なずけ、社会をデザインするためにすべきことは何か。


「単純化」の罠に陥らない   ―― システムという視点

児玉龍彦教授の対談の様子

「豊かな世界を切り捨てていってはいけない。科学が害になるということが非常にありえます。そのほとんどは、あるものを切り捨てることによって起こるのです。科学をやっている人の責任が非常に大きく、考えなければならない問題です」

動脈硬化のしくみを分子レベルで明らかにしたパイオニアである。生命の複雑な仕組みの解明は、安易に単純化する考え方では行き詰まると断言する。全体をシステムとして捉え、その軌跡・流れを見ること。
目の前の結果を常に自問自答しながら新しい境地を拓くための思考を訊く。

Ⅱ.連携によるブレイクスルー


それぞれのリーダーシップ  ―― マネジメントと連携

馬場靖憲教授と神崎亮平所長の対談の様子

「『研究室というチームは自分のものだ』『自分のやり方でチームのパフォーマンスを上げたい』というメンバーの心構えが必要です。仲間の発言を尊重して良いところを取り入れ、プラスアルファを付けて仲間に渡すことをルーティンにすることが必要です」

おそらく一般的な予想に反し、研究室では高度なマネジメント力が問われる。主宰者は研究資金獲得に奔走し、グローバルなプロジェクトに追われる。近年顕著な、論文投稿数や引用数といったデータでの評価に揺れる研究者たち。生産性とモラルは共存できるのか。自律的に成長するコミュニティの根源を探る。


差異を超えて伝えるコミュニケーション  ―― コミュニケーションと連携

福島智教授

「人が生きるためのコミュニケーションとは何か、人が生きていくうえで必要最小限のコミュニケーションのエッセンスは何かを突き詰めたい。それを探るうえで、障害者の視点が役に立つかもしれないなと思っています」

視力も聴力も失った福島教授との対談は、通訳者の指点字を介して行われた。にもかかわらず、普段まわりの人と話すときと変わりなく会話が成立する。人にとってのコミュニケーションとは何か。その本質には、単に情報を伝えるだけではない、得体の知れないものが含まれている。


客観視することで困難を克服する  ―― 環境との連携

熊谷晋一郎准教授と神崎亮平所長の対談の様子

「苦労を抱える中で『研究』という立ち位置に自分を置くと、なぜか楽になります。実際に、そういう方が少なからずいるのです。困難を研究対象にしてみようという声かけをした瞬間に楽になるのです」

目に見えない障害を考える「当事者研究」は、自分と周囲を知り、それを仲間と共有することで、自分と社会との真の関係が生み出されるという。自らを責め、他人を責め、その堂々めぐりで苦しむ人たちが当事者研究に参加すると楽になるのは、なぜなのだろうか。


個性と歴史が織りなすまちづくり  ―― 連携とリプロデュース

西村幸夫教授、対談の様子

「高齢化が進み、都市も成熟化していく中で『この地域に住んでいてよかった』と思えるまちをどうやってつくっていくか。それぞれの人のニーズにうまく合わせられるようなまちづくりを、いろんな人の声を聞きながら住民参加型で進めることを大切にしています」

都市開発は権力と親密だ。関係者は権力を行使できるため、ある意味、居心地がいい。しかし、力づくでまちの記憶を消し去った場所で、住民は豊かに暮らせるのだろうか。欧米をロールモデルに突き進む都市計画全盛の時代に逆行し、現状を生かしながら再生させる「都市保全」を体系化させた天邪鬼な情熱に迫る。

Ⅲ.ブレイクスルーからの創造


誰かがやらなければならない  ―― 実験による創造

石北 央 教授の対談の様子

「人工光合成は、昔から何度もトライ&エラーの繰り返しで、やっては消えてというかたちで今に至っています。時間はかかりますが、誰かが何かをしないといけない。その思いで、研究に取り組んでいます」

人工光合成の実現に関わる酸素発生型光合成タンパク質PSⅡの構造は、複雑極まりない。実施困難な実験を理論で補完する「理論による実験」では、古典と最新、部分と全体、破壊と再生、定説と反証といった相反する要素を柔軟に取り入れ、新しい視点と選択するセンスの有無が試される。


再生可能エネルギーの開発は学問の総合格闘技  ―― 総合力による創造

飯田誠特任准教授と神崎亮平所長の対談の様子

「この分野の研究には、総合力と想像力が不可欠です。再生可能エネルギーの開発では、あらゆる学問を総合してあの手この手を使わないと、課題をクリアすることはできないのです」

どれだけ物理を追究したシステムも、自然界の特殊な出来事に遭遇すると状況は一変する。いかに自然の不確かさと付き合っていくか。
山積する課題の前で本質を見失いそうになると、必ず、ある場所に立ち戻るという。日本の再生可能エネルギー研究のホープが持つ、柔軟な発想と行動力を紐解く。


すべての経験の結集としての開発  ―― 経験による創造

浜窪隆雄教授と神崎亮平所長の対談の様子

「私の中では、結果的にすべてがつながり、ここまで来ました。最初に飛び込んだときには大嫌いで、どこが面白いんだろう?と思っていた世界に、何十年か後に入ってきたのです」

夢を描いて研究者を目指し、茨の道で情熱を持ち続けることはそう簡単ではない。夢を二つも持っていれば、なおさらだ。アナログな酵素学から分子生物学、遺伝子工学への変遷・変換の時代の中で何度も舵を切り直し、人と出会い、夢から離れそうな研究が架橋された。


先行研究と議論の結実  ―― 逆転による創造

中村泰信教授と神崎亮平所長の対談の様子

「やはり研究は絶対に一人ではできません。他の人たちの先行研究があり、そういう人たちと議論しながら進めているうちに、このアイディアに至ったのです」

1999年に発表された『超伝導量子ビットシステムの研究』は、それまで不可能と思われていた量子振動を、世界で初めて固体デバイス上で観測した。その研究分野では後発だったにもかかわらず、なぜ、世界の研究者がこぞって引用する研究成果を出すことができたのか。

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