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アヴィシャイ・バルアシェル博士(エルサレム・ヘブライ大学)の古典カバラー連続ワークショップを開催

  • 先端研ニュース

2021年3月8日

  • アヴィシャイ・バルアシェル博士
    アヴィシャイ・バルアシェル博士
  • グローバルセキュリティ・宗教分野 池内研究室にて目下推進中の国際研究プロジェクト「未来の人文学に向けて:思想研究のための国際研究ネットワーク構築」(プロジェクト・リーダー:山城貢司特任研究員)では、その試みの一部として、定期的に講義・ワークショップ・研究セミナーシリーズを開催しております。これは、海外の第1級の専門家をお招きして、日本の研究者に対して当該研究分野の最前線を紹介していただくとともに、創発的かつ創造的な学術交流の場を創出することを目標としています。

    今回はエルサレム・ヘブライ大学のアヴィシャイ・バルアシェル博士(Dr. Avishai Bar-Asher)を講演者として、古典カバラーに関するワークショップをオンラインで開催しました。本ワークショップにはユダヤ学の専門家だけでなく、比較宗教学・神秘主義研究・心理学・カフカ論・ドイツ=ロマン主義研究といった多様な分野の研究者が毎回30名近く参加し、大変熱気に富んだイベントとなりました。

カバラー、すなわち12世紀の最後の四半世紀以降、急速な発展を見せたユダヤ教の神秘主義的秘教伝統は、それ以降のユダヤ教の精神史の展開を決定づけたと言っても過言ではありません。また、ルネサンス思想並びにライプニッツやシェリングへの影響も含め、西欧思想に与えた少なからぬインパクトについても、次第に正当な評価がなされつつあります。日本では、主としてゲルショム・ショーレムの著作の翻訳を通じて、カバラーについての概説的な紹介がなされてきましたが、研究の最前線において集中的な関心の的となっている文献学的・歴史的問題については未だ十分な理解がされているとは言えない現状にあります。 本ワークショップでは、14世紀初頭までに完成された古典カバラーの教義と歴史の要点について、最新の研究成果を踏まえながら、基礎から順を追って学んでいきました。加えて、毎回カバラー・テクストを実際に読み解くことで、カバラーの思想的営為の生きた呼吸自体を感じ取ることが目指されました。

第一回ワークショップでは、まずカバラーという用語の定義と用法についてのコメントがなされた後、神秘主義と秘教としてのカバラーの諸相についての概説がなされました。ついで、カバラーを論じるに当たって本質的な三つの観点(伝統・啓示・聖書解釈)の意義が示されました。その上で、古典カバラーの成立の問題が歴史的=地理的なパースペクティブから位置付けられました。ワークショップの後半では、ゲロナのエズラの『雅歌註解』序文の一部を読みながら、聖書解釈と神秘的=秘教的知の間の本質的な関係が論じられました。

第二回ワークショップの前半では、前回の話の続きとして、カバラーの起源と発達において古代・中世の様々な思想潮流の果たした役割がさらに詳しく解説されました。その上で、前回扱ったゲロナのエズラのテクストの続きを読みました。ワークショップの大部分は神智学カバラーの概論に当てられました。ここでは、主にセフィロート体系の神学とシンボリズムをめぐる諸論点に注意が払われました。さらに、神智学カバラーの実践的側面の理解のため、特にセフィロート体系と人間との関係の問題を取り上げ、『ゾハルの書』からの一節が分析されました。

第三回ワークショップの冒頭では、前回読んだ『ゾハルの書』のパッセージの掘り下げがなされました。その関連で、『ゾハルの書』とその主要著者の一人と目されるモシェ・デ・レオンについての簡単な紹介がありました。その後、セフィロート体系といわゆる神働術の間の密接な関係について、簡単な考察がなされました。後半では、カバラーの扱う多彩な内容を示す一例として、特に霊魂論の話題に集中し、『ゾハルの書』からさらに二つのパッセージが扱われました。輪廻転生論・終末論・メシアニズムなどについての解説は、時間の都合上、残念ながらほぼ割愛されましたが、unio mysticaや文字神秘主義についての短い言及もありました。

【開催概要】
日時:
2021年2月7日(日)午後5時 − 7時(パートA)
2021年2月14日(日)午後5時 − 7時(パートB)
2021年2月21日(日)午後5時 − 7時(パートC)

講師:
アヴィシャイ・バルアシェル教授(エルサレム・ヘブライ大学 人文学部ユダヤ思想学科)

主催:
東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野 池内研究室

共催:
東京大学先端科学技術研究センター 創発戦略研究オープンラボ(ROLES)
東京大学グローバル地域研究機構(IAGS)
GSIキャラバン・プロジェクト「中東国際政治における主要地域大国と域外大国の関係をめぐる実地調査と対話」(代表者:池内恵)

キュレーター:
山城貢司 特任研究員(グローバルセキュリティ・宗教分野 池内研)

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