所長あいさつ

地球上のすべての人々が協調して自然と共生するための科学技術
一人ひとりが主役となり皆で支えあう こころと信頼でつながる先端研
感染症の猛威や気候変動など、私たちが直面する地球規模で複雑な問題は、科学技術の発展により自然を支配できるという人類の驕りに警鐘を鳴らし、全地球市民が協調して自然と共生する新たな世界像の確立を迫っています。
現在人類が直面する課題は、身近な地域から国家、そして地球全体へと空間的に拡がります。私たちは、その解決に向けて今日できることから始め、同時に数十年先までの影響も考慮した対策をとる必要があります。このような空間的・時間的にマルチスケールな課題に対処するためには、人文社会科学や理工学の垣根を超えて、異分野の科学技術を「つなぐ」必要があります。
先端研では、材料、情報、環境エネルギー、社会科学、生物医科学、バリアフリーという6領域45分野の尖った研究者が互いに顔の見える距離で共生し、フレキシブルに連携しながら、地域のステークホルダーとの共創により複雑な問題に挑み、多様な解を導いてきました。専門分野に特化せず問題に応じて学際チームを組める先端研のスタイルこそが、地球規模の課題を解決するために今もっとも必要とされていると確信しています。そして,課題に応じてそれぞれの研究者が先頭に立ち、関連する研究者や先端研の組織全体が信頼でつながり主役をサポートする、柔軟で多層的な「つながり」を先端研は実践しています。
このような「つながり」には、論理だけでなく「こころ」が大切だと考えます。課題解決を目指す仲間が感動を共有しあうことで、真のつながりが構築されます。また、科学技術の成果を地域の人々につなぎ社会実装するには、技術に期待してより良い社会を志向する人々の「こころ」が不可欠です。先端研は、共感できる豊かな「こころ」を持つ集団でありたいと願っています。社会が細分化・複雑化する以前の古代ギリシャでは、科学者とアーティストは不可分でした。先端研のキャンパスには、研究者だけでなく多様なアーティストが集い、理性と感性の両面で日々対話しています。また、様々な障がいをもつ人たちが、研究者やスタッフとして日常的に活躍しています。多様な人々が集い、豊かな「こころ」を共鳴させ、それぞれの持てる力をつないでより良い社会を共創する、そんな未来の実現に向け尖った試みを実行していくのが先端研です。
科学技術を自然と地域に、わたしたちの地球を将来の世代に、先端研はこころと信頼でつなぎ続けます。
所長 杉山 正和