所長あいさつ
科学技術の先端を追求し、育み、社会につなぐ
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現代における科学技術の進歩は目覚ましく、我々の生活や社会に多大なる恩恵をもたらしています。情報技術の飛躍的な進化により、世界中の出来事が瞬時に伝わり、私たちはこれまで以上に緊密に結びついています。しかしながら、その進歩の影には、社会の分断、環境破壊や大量破壊兵器の拡散など、深刻な課題が潜んでいることもまた事実です。科学技術は人類の活動範囲を飛躍的に拡大させましたが、その結果、資源の制約が顕在化し、環境への負荷は増大し、人類はプラネタリーバウンダリーに気づくこととなりました。核兵器や化石資源の過剰利用に象徴されるように、科学技術の発展は人類にとってのリスクも伴っています。このような現状を鑑みるに、科学技術が我々の生存と調和するためには、どのような方向性を持つべきかを再考する必要があります。
先端研の取り組みは、地球上の多様な存在とその価値を重視することからはじまり、それらを包摂し調和のとれた社会を築く科学技術を目指しています。たとえば、インクルーシブデザインのように、マイノリティーの視点を取り入れた技術はマジョリティーの幸福にも大きく寄与します。画一的な尺度にとらわれない、多様な価値に基づく科学技術の発展こそが、複雑化した現代の課題解決につながると私たちは信じています。
先端研にはさまざまな学問分野が存在し、その相互作用を促すことで従来の学問の枠を超え、異なる領域が連携することで新たな価値創造が可能となります。このような学際的なアプローチは、単に学問の深化を図るだけでなく、社会の課題解決にも直結します。
このようなビジョンを実現するためには、研究者同士のコミュニケーション能力と感性の向上が不可欠です。先端研では、研究者が互いに対話し共感し合うことで、創造的なアイデアが生まれる環境づくりを推進しています。また、地域や世界との連携を深めることで、より多様な視点を取り入れた研究が可能となり、より実践的で影響力のある成果を上げることができます。
目指すべき未来は、人間と地球が調和し持続可能な発展を遂げる社会であると考え、これを実現するために、私たちは、科学技術の進歩が地球上のすべての存在の幸福の最大化に寄与するものであるよう、これからも努力を続けて参ります。
所長 杉山 正和
(2024年4月)