【セミナー】生物学的複雑系のモデリングとシミュレーション
イベント情報
開催日 | 2012年8月20日(月曜日)15時00分 - 18時00分 |
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開催場所 |
東京大学先端科学技術研究センター 3号館南棟1階ENEOSホール |
講師: Giancarlo Mauri (Department of Informatics, Systems and Communication University of Milano-Bicocca)
システム生物学の分野において、計算手法やモデリング手法、解析手法、バイオ技術等は系の構造や動的性質の様々なレベルの理解のために急激に発展してきた。
この分野の数学モデルは、決定論的な連続体のアプローチ、質量作用の法則(物質量に関する反応速度に関する法則)に基づくもの、生物学的現象に本質的な確率を考慮したものに分類できる。
生物学的な系、とくに細胞のレベルでは膨大な反応プロセスが存在し、決定論的アプローチではこうした極限を考えているが、常に信頼できるものではない。一方、確率論的アプローチでは、系の大域的性質を決定づけるようなランダム性を考慮できる。
このような理由で、系の構成要素の相互作用や本質的なランダム性を模擬するために、離散的・確率論的で区分化されたモデル化手法が発展した。
実験によって正確な測定をすることが困難であるため、遺伝的アルゴリズムや粒子群最適化などの未知のパラメータ(結合定数・転写・翻訳速度・拡散率など)を許容する手法は、例外を除いて適さないか曖昧な結果しか得られないが、 確率論的アプローチと組み合わせることによって改善できる。
この講演では、手法の基本的な仮定と我々が開発したシミュレーションソフトBioSimWareについて説明する。さらに二つの現実的な生物系への応用について紹介する。
初めに、酵母のcAMP-RAS-PKAシグナル伝達について考える。この伝達については、異なる初期条件での安定した振動現象について考える。二つ目の応用は、大腸癌(CRC)に関して腸陰窩のモデル化である。遺伝子の調節ネットワークと陰窩の形態学的なモデルの統合を通じて、多重スケールモデルを提案する。