令和6年度工学系研究科先端学際工学専攻の秋季学位記授与式を挙行
- 先端研ニュース
2024年10月2日
9月20日(金)に令和6年度の東京大学 先端学際工学専攻 秋季学位記授与式が行なわれました。常務委員の岩本敏教授(極小デバイス理工学分野)より、修了生たちに学位記が授与され、挨拶が行われました。
はじめに修了生たちに対して祝いの言葉が述べられ、博士号取得に至るまでの努力が単に個人の力だけでなく、家族、友人、研究室の仲間や共同研究者など多くの人々の支えに成り立っていることを改めて意識し、周囲のサポートに対して感謝の気持ちをもつことが大切だと話しました。
また、博士号が単に学術的の世界における証明書にとどまるものではなく、広い分野において多様な考え方やバックグラウンドを持つ仲間と切磋琢磨しながら、自らの専門外の知識やリテラシーをも育み、研究者としてだけでなく、現代社会に生きる一人の人間として大きく成長したことを確信していると語り、それこそが博士号の持つ真の価値であるとしました。
さらに、現代のグローバル社会では、多様な価値観や専門分野が交錯し、一つの視点や専門性だけでは解決できない問題が多いことに触れ、博士号を取得した者はこの多様性を理解し、複雑な問題に対して多角的なアプローチを取る必要があると話しました。特に、先端学際工学の分野で培った知識や経験は、このような複雑な社会問題に立ち向かうために大いに役立つとし、卒業生たちが今後もその力を存分に発揮することへの期待を示し、改めて卒業生たちの今後の活躍を願い祝辞を締めくくりました。
修了書を授与する岩本聡常務委員
続いて、東京大学先端科学技術研究センター所長の杉山正和教授(エネルギーシステム分野)からも修了生に祝辞が贈られました。
杉山所長は修了生への祝意を述べた後、博士号取得は単なるおめでたいことに留まらず、取得したのちが大切であると語りました。博士号を「学術の運転免許」と例えつつ、運転免許には運転できる車種の制限や条件が書かれていますが、博士号にはそうした限定がなく、取得者には学術的な領域に限らず、社会全般に広がる挑戦の機会があることを示唆しました。
さらに、博士号が「Ph.D.(Doctor of Philosophy)」であることに触れ、哲学的な考え方が求められると述べました。物理学や他の学問が記述する現象を他者と共有し、共同作業の基盤を作る営みを「哲学」として捉える見解を示しました。これは、博士号取得者が単なる技術的な知識を持つだけでなく、広い視野で問題を捉え、他者と協力しながら新たな解決策を導く力を持つことであるとしながら、博士号を持つことは学術界や社会で新たな挑戦を続けるための「最低条件」であって、学位を取得したこれからが本番であり、新しい道の始まりに向けて、これまでに得た知識や経験を生かして、次のステージでさらなる貢献をする必要があると強調しました。
杉山所長は、世界の複雑化や多様な価値観の衝突、自然と人間の関係について言及し、これらの課題に対して博士号取得者が果たすべき役割の重要性を説きました。特に、現代社会では多様な価値観や考え方が共存していることから、これまでの単純なヒエラルキーに基づく社会構造から脱却し、より多面的かつ包括的なアプローチが求められると語りました。
最後に、博士号取得者が幸せの「無限の生産」に貢献できる可能性について杉山所長は語り、科学技術を駆使して持続可能な未来を切り開くために共に歩みを進めていこうと修了生等にエールを贈りました。
祝辞を贈る東京大学先端科学技術研究センターの杉山所所長