令和7年度工学系研究科先端学際工学専攻の秋季学位記授与式を挙行
- 先端研ニュース
2025年10月2日
9月19日に令和7年度の東京大学大学院工学系研究科 先端学際工学専攻 学位記授与式が行なわれました。常務委員の角野浩史教授(地球環境化学分野)より、修了生たちひとりひとりに学位記が授与されました。
角野常務委員はまず、博士号を取得した卒業生に心からの祝意を表し、この日が東京大学先端学際工学専攻での学びの集大成であると同時に、新たな社会への一歩の始まりであると述べました。そして、複雑化する現代の課題に対して、単一の分野にとどまらず、多様な視点と方法論を統合する「学際的な思考」を身につけたことこそが、最大の成果であると強調しました。
私たちが気候変動や急速な技術革新、社会格差や政治的混乱といった大きな不確実性の時代に生きていく中で重要なのは、社会・経済・環境・技術といったさまざまなシステムの相互作用を理解し、学問の境界を越えて協働する力だと説きました。自身の研究である火山災害予測を例に挙げ、観測技術だけでなく、工学、経済、政策、地域社会の判断を組み合わせてこそ防災が実現できるとし、学際的協力の必要性を具体的に示しました。
さらに、産業界や研究現場でも、国際的かつ多分野にわたるチームで働く力が一層求められていると指摘し、学際的な学びの精神を持ち続け、分野を越えて知をつなぐことで、新しい価値や革新を創り出してほしいと呼びかけました。 最後に、この学位取得は終わりではなく生涯にわたる学びの始まりであり、知を社会に還元する責任を担う新たな段階の出発であると述べました。そして、培った学際的な視野をもって社会に貢献し、未来をより良いものへと導く存在になることへの大きな期待を込めて、改めて卒業生を祝福しました。(原文英語)

祝辞を贈る角野浩史常務委員
続いて、東京大学先端科学技術研究センター所長の杉山正和教授(エネルギーシステム分野)からも修了生に祝辞が贈られました。 杉山所長はまず、博士号取得という大きな成果を心から祝福し、学位記はかけがえのない宝物であると同時に、新たな旅の始まりにすぎないと語り始めました。自身も25年前に博士号を取得した経験を引き合いに出し、その学位記が今では棚の片隅に眠っているかもしれないと述べつつ、その真の意味は学位記が単なる紙片としての存在ではなく、そこから広がる未来の可能性にあると強調しました。これまでの学生生活は明確な段階ごとに成果を重ね、祝福される道のりであったのに対し、博士号の後に待っているのは、あらかじめ決められた舞台のない多様で予測不可能な世界だが、しかし恐れることはなく、博士課程をやり遂げた努力と経験がその不確実さに立ち向かう自信を与えてくれるのだ、と卒業生を励ましました。
博士号を修めることは孤独な研究の終わりではなく、協働の始まりであると説き、これからは自らの狭い専門分野を超えて他者と結びつくことが求められると続けました。そのためには、他者の業績への敬意を持ち、自分の考えを熱意をもって伝え、人々が心から取り組みたいと思える意義ある課題を示す力が不可欠であり、そうして初めて、それぞれが小さな「カプセル」に閉じ込めてきた専門性を開き合い、異なる分野をつなぐ協力へと進むことができるのだと語りました。
さらに杉山所長は、人と人とを結びつける目に見えない魅力の力について触れ、「科学的な手法で測定できるものではなく、人工知能とのやり取りだけで養えるものでもないこの力は、人間同士が予測できない生きた対話を重ねる中でこそ育まれる」と強調しました。真剣な議論であれ、気軽な雑談であれ、人との交流こそが未来を担うリーダーの資質を育てるのだと話しました。 最後に、再び卒業生を祝福し、博士号を「科学的挑戦への免許証」と呼びながら、楽観と好奇心を胸に、多くの人と語り合い、幸せな協働を築いていってほしいと呼びかけました。そうした協働こそが人生を支える力となり、未来社会を豊かにする源になると結びました。(原文英語)

祝辞を贈る東京大学先端科学技術研究センター 杉山正和所長

