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先端教育アウトリーチラボ ~ 従来のアウトリーチの枠組みを超えた教育共創  広報誌『RCAST NEWS』
115号掲載

  • 先端研ニュース

2022年3月4日

先端教育アウトリーチラボ(AEO)Advanced Education Outreach lab

2021年4月に開設された教育アウトリーチプロジェクト。初等中等教育における、探究学習やSTEAM教育、高大連携の機運など、大学・研究者等によるサポートへのニーズの高まりを受け、これまで先端研で行ってきた各研究室による多様なアウトリーチ活動をより最適な形で次世代育成を支援できるよう、ワンストップ機能を担う。先端研の強みを生かし、文理融合・分野横断的な教育プログラムを教育現場等と共創しながら提供している。

学生アフィリエイトメンバー写真

教育実践システムの構築から個別の課題研究サポートまで―
多様なリソースを掛け合わせ、相手と共に創り上げる次世代育成とその仕組み化

AEOの設立の目的と狙い

初等中等教育は、2022年度から順次実施される高校の新学習指導要領に基づく探究学習、STEAM教育の推進、高大接続の機運等に直面しており、大学や企業へのサポートのニーズが高まっています。先端研では以前から、様々な先生方が、先駆的に次世代育成に取り組まれてきました。また、先端研に集積する40に上る専門分野は学際的なものが多く、文理融合が求められる現在の初等中等教育にとって非常に魅力的です。

先端研の素地を生かして、研究室単位の取組に留まらず、分野横断型で初等中等教育を支援していく。先端研主催の企画実践に加え、自治体や学校の教育改革もサポートする。そうした活動が、相手方のニーズに応えるだけでなく、発信側にとってもインパクトのある発信になるし、子供たちとの対話を通じて、研究者の方々自身が新たな気づきを得ることも有意義―ということがAEOの出発点です。

そのため、相手側や研究者側のニーズや実態を把握するカウンセリング、最適な研究者とのマッチング、企画調整、実施支援、成果の取りまとめ等一連の活動を、AEOがワンストップで行います。また、属人的な取組に終わらないための仕組み化も意識しています。

STEAM教育
  • 撮影風景
  • 感性と理性とを育む「環境創造」からの人材育成

    提供する教育内容に関する根本的な価値軸は、持続可能でウェルビーングな社会の実現には、感性や感動、人間性、多様性への理解等を重んじるアートを活動の根底に据えた人材育成が今後益々重要になるとの意識です。そのため、先端アートデザイン分野(AAD)と連携して、「A(アート、アーツ)」とサイエンスを融合したSTEAM教育を開発実践し、研究にもフィードバックしていきます。

    「共創」と「ゼロイチ」

    子供たちに教育として提供する際には、相手の発達段階や習熟度に応じた内容で提供することが重要で、教育課程の中で行うか外で行うかによって手法も異なります。単発のイベントで終わらないためには、学校の授業との連携や事前事後学習も重要です。そうした学校教育での留意点を意識しながら、相手先と対話を通じて、最適なプログラムを創っていきます。

    また、新領域の開拓を組織ミッションとする先端研らしさを、AEOも踏襲します。他で既に広く取り入れられている手法― 例えば一般的な形での出前授業や研究室訪問の受入等― よりも、新たな教育モデルの開発や実践に重きを置き、そうした取組が可能な案件を優先的に扱います。

理想を現実にする3要素― AEOの教職員、学生アフィリエイト、アドバイザー ―

活動にあたっては、AEOの教職員に加え、研究者と子供たちとの中間の位置に立ちかつユーザーにより近い世代である、東大の大学院生等による「学生アフィリエイト」、学校教員や自治体関係者様による「アドバイザー」を、3つの柱に据えました。学生アフィリエイトにより、動画制作の内製やTA活動等、幅広い活動が可能となりますし、アドバイザーの具体的な助言により、学校現場等の実態に即した企画を実現します

AEOの活動を支える3要素

実践事例

地域、学校、大学が一体となった次世代育成モデル
~南陽市・南陽高校との連携プロジェクト~
  • 南陽高校でのプログラム風景
  • 2019年7月に包括連携協定を締結した南陽市との具体的な取組の第一弾です。先端研が構築した「地域共創リビングラボ」の手法を、高校教育に展開することを核とし、AEOが、最適かつスピーディーに実現するためのマネジメントを行っています。Regions’DNAを研究されている近藤早映客員研究員(三重大学准教授)、光野秀文特任准教授を中心に、今年度のトライアルでは、高校生が主体的に、地域の本質を深掘りする体験を通じて、探究的なものの見方や行動力等を養うプログラムを、約1か月にわたり実施しました。トライアルを基に、南陽市、南陽高校との三者で、2022年度に新設される南陽高校の「地域創生コース」のカリキュラム編成や指導内容の議論を行っています。南陽高校でノウハウが確立されるまでの間の実践的なサポートも行う見込みです。
高校生の個に応じた高度な学習機会の提供
~高校生研究員や分野横断型の連続講座~
  • 南陽高校でのプログラム風景
  • 高校生研究員は、個々の高校生の課題研究に大学教員が助言することで、より質の高い研究を可能にする取組です。10名の研究者の方々にご協力頂きました。高校教員と生徒のペアで参加してもらうことで、高校の課題研究の指導力向上に寄与することも意図しています。全員に知ってもらいたい研究倫理等は、動画で提供しました。分野横断の連続講座は、11名の研究者にご協力頂き、STEAM教育を意識した内容で企画し、英語で行いました。生徒の成果レポートは、大学院生や研究者が審査しコメントを提供することで、その後の学習に役立つよう配慮しています。合同での成果発表会も開催しました。両プロジェクトは、今年度は東京都教育委員会との連携事業として開催しましたが、今後、応用・深化して広く展開することを視野に入れています。

AEOのプロデューサー

杉山 正和 教授

杉山 正和 教授

東京大学がもつ幅広い分野の研究者が顔の見える距離に集まった学際的な共創の場である「ミニ東大」、先進的な取り組みを全学に先駆けて展開する実験場、このような先端研の特徴を活かしたアウトリーチを目指しています。次世代の育成は人類共通の課題ですが、現役世代の拡大再生産ではなく、自然と共生する科学技術を感動・共感をもって創造できる新世代を育てたい、そんな想いをカタチにする尖った試みを、先端研の教員と事務系スタッフが密に連携して続けていきます。

森 晶子 特任専門員

森 晶子 特任専門員

アウトリーチや次世代育成に関わりたいが、研究者自身で企画運営は難しい、他の研究分野の方にも声をかけたいが自身で調整するのは負担̶。AEOでは、自治体や学校等のニーズを汲み取るだけでなく、研究者側のニーズや要望に対応し、研究者の負担が少なく効果的な企画を提供します。前職での行政経験を踏まえ、行政の考え方や学校の実態も理解しながら、アートとサイエンスの融合など、新しい教育メニューを企画し伴走する、“教育プロデューサー”として機能していきます。

AEOロゴマークについて

AEOロゴ

アートとサイエンスの融合、感性・人間性に基づく論理性・知性という価値軸を象徴するため、書道で用いられる篆刻を用いて制作。円形は無限の広がり。時おり欠けているのは、篆刻で一般的に用いられる手法だが、既存の枠組みや現状を打破して無限に広がる可能性を示唆。AEOの文字の構成は、先端科学技術の尖鋭さを造形し、サイエンスの論理性、客観性を紺(青)で表現。内輪の赤は、活動の根源となる情熱や感動を意図した。書家・篆刻家 雨宮太虚 作

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