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教育アウトリーチ活動を行う「学生アフィリエイト」　座談会広報誌『RCAST NEWS』115号掲載

教育アウトリーチ活動を行う「学生アフィリエイト」　座談会広報誌『RCAST NEWS』
115号掲載

先端研ニュース

2022年3月4日

先端教育アウトリーチラボ（AEO）では、東京大学2021年度博士課程学生支援音キャンパスジョブ制度を活用した事業として「学生アフィリエイト」を採用し、先端研での先端教育アウトリーチ活動を共に推進しています。学生アフィリエイトのメンバーたちは、なぜ活動への参加を決めたのか。その思いをAEOプロデューサーの森特任専門員が聞きました。

映像のプロの指導を受けながら、動画制作のスキル、ノウハウも習得

学生アフィリエイトとは？

2021年9月に結成した、東京大学の大学院生を中心としたメンバーで、先端教育アウトリーチラボ（AEO）の活動を支える重要なアクター達です。各メンバーがそれぞれ伝えたいコンテンツや課題意識をもち、高校生の課題研究のサポート（TA）や、AEO で行う調査研究支援、多様な撮影機材を使った動画撮影や編集、オンライン・イベントの企画・実施等、多様な活動を行っています。研究者よりも、高校生等に近い立場から、子供たちにわかりやすいアウトリーチ活動を実現します。学生アフィリエイトは、東京大学の2021年度博士課程支援オンキャンパスジョブ事業に採択されており、 AEO では、一緒に働いて頂ける大学院生等の方を随時募集しています。

座談会参加者

佐々木智也さん

工学系研究科
先端学際工学専攻D3
稲見研究室

横田莉子さん

工学研究科
電気系工学専攻M2
杉山研究室

浅見明太さん

工学研究科
電気系工学専攻D2
杉山研究室

榎原茉央さん

教養学部
理科一類
1年

この先にある可能性を感じてほしい

森晶子特任専門員（以下、森）: 皆さんは募集開始直後にご応募くださいました。研究活動でお忙しい中、なぜこの活動をしようと思われたのでしょうか。
佐々木智也さん（以下、佐々木）: 私は、テクノロジーを使って人の身体能力や知覚能力を拡張する人間拡張工学の分野において、具体的には“腕を増やす”研究をしています。展示会やイベントで研究成果を実演してきましたが、コロナ禍で対面が難しくなっていることもあり、自分の活動の幅を広げる挑戦をしたいと応募しました。
横田莉子さん（以下、横田）: 私は、東京大学、また理系の女子学生の少なさに疑問や違和感を感じている中で、アウトリーチという小中高生にアプローチする機会を通して、理系を選んだ女子学生の一人としての経験を還元したいと思っています。
浅見明太さん（以下、浅見）: 私は太陽電池の研究をしています。理系の研究は基本的に研究室にこもって行うことが多く、外部の方と積極的に議論を交わす機会は少ないと感じます。太陽電池は屋外や屋根の上に設置するものなので、人々が太陽電池を採用しやすくなるためにも、研究のアウトプットを行い、外部からのフィードバックを研究に反映していくことが今後重要になると考えて、その経験を積みたいと思いました。
榎原茉央さん（以下、榎原）: 私は他の3名の皆さんと違って学部生なので、まだ自分の研究を発信する状況ではないのですが、実は、2年前、高校2年生の時に、浅見さんと横田さんが所属する研究室の杉山教授と森さんが企画した東京都教育委員会のセミナーに参加したんです。元々環境問題や自然環境に興味がありましたが、そこで太陽光発電や水素エネルギー研究の一端に触れたことで、大学での学びの方向性や将来やりたいことが見えてきました。高校生向けプログラムの恩恵を受けた第一号…と名乗るのはおこがましいですが、その経験をした人として、高校生に近い立場から何かお力になれることがあればと思い、応募しました。
森: 榎原さんについては、偶然の重なりとはいえ、アウトリーチ活動によって好循環が生まれる可能性を感じられる事例だと思っています。皆さん、ありがとうございます。次に、実際に、学生アフィリエイトとしてどんなことをやっていきたいのか、抱負を込めた思いをお聞かせください。では、今度は榎原さんからお願いします。
榎原: はい。高校生が大学の研究の端っこにでも触れることの面白さ、そしてその先に待っている可能性、チャンスをつかむ経験をしたと、私自身は感じています。後輩である高校生たちにも、それを少しでも感じていただければ。この道に進みたいという確固たる気持ちでなくても、チャンスをとりあえずつかむ、そのチャンスを提供する力になれればというのが、やりたいことの1つ目です。2つ目は、例えば、私が関心を持つ環境分野でのプラスチックや温暖化問題でもそうですが、専門家の見識と私たちが普段の生活で持っている認識との間に齟齬があると感じています。それを埋めることができればと思います。
浅見: 先ほどの動機と重なりますが、いろんな人からフィードバックをもらいたいという気持ちが僕にはありまして。アウトリーチ活動では高校生に教えることもありますが、「教えること」を通して、自分の研究手法を見直したり、わかりにくい説明を改善したり、自分の研究をよりわかりやすく伝えるようにしたい。本来であれば高校生を指導する立場かもしれませんが、高校生の方々と一緒に自分もスキルアップできたらと思っています。高校生の利益にもなり、自分の成長にもつながればいいなと思います。
横田: 私は、自分が理系の、また東京大学の女子学生の少なさに課題を感じている中で、この活動で小中高校生にとっての選択肢を広げられるのではと思っています。現状、構造的な問題などで理系や東京大学への進学を諦めてしまう学生さんが多いように感じています。その結果が、東大全体で女子が2割弱、理系、特に工学系では1割程度という現状ではないかと。私はその原因の1つが「選択肢に挙がらない」ことだと考えています。自分ができる範囲でアプローチするとしたら、自分やその周りの方の研究やその後の生活をお伝えすることなのかなと考えています。
佐々木: 私は、先ほどお話しした「アプローチの幅を広げたい」と考えています。もちろん、自分の専門分野を紹介するときには、こう見せたら伝わりやすいかなと考えているわけですが、先端研には本当に多様な分野があって、「自分の専門ではない分野を面白く伝えるためにはどうすればいいのか」を考えること自体が、すごく面白いのではと思っています。実は、それを考えること＝自分もその研究を面白いと思える必要があって、そこから新しいことを知ることができるし、それ自体がアプローチとしても広がる。自分の専門以外の研究を知ることができて、さらにどう伝え、もしかしたらそこで新しい議論が始まるかもしれない。そういうことができたらいいなと思っています。
森: 面白いですね。ご自身の研究分野だけではなく、他分野のアウトリーチにも参画することを目指していらっしゃるということですね
佐々木: はい。
森: 楽しみです。AEO学生アフィリエイトの活動方針として、運営側から活動への指示をするのではなく、メンバーの皆さんがより柔軟に自由に議論をし、そこから新しい提案を考え、実践していくことに重きを置いています。議論で重視しているのは、自由な議論はもちろん大歓迎ですが、批判だけで終わらせて欲しくないな、と思っています。何か課題を感じたら、批判だけでなく、どのように考えたらいいか、行動したらいいかという、その先の実現可能な提案までを考える。それをみんなで一緒に作り上げていくような活動をしたいと思っています。そして、皆さんの発言にもありましたが、AEOから一方的に何かを提供していくのではなく、相手と、ユーザーの方々と一緒に作り上げていく。そしてお互いがWin-Winな関係になれる、得るものがある活動を行うスペシャリスト集団にしていきたいと思っています。