1. ホーム
  2. ニュース
  3. 先端研ニュース
  4. 希土類添加半導体のエネルギー移動機構を利用したラチェット型中間バンド太陽電池の光制御に世界ではじめて成功! ~脱炭素に向けた次世代エネルギー変換技術に新たな道~

希土類添加半導体のエネルギー移動機構を利用したラチェット型中間バンド太陽電池の光制御に世界ではじめて成功!
~脱炭素に向けた次世代エネルギー変換技術に新たな道~

  • 研究成果

2021年3月2日

電気通信大学の曽我部東馬准教授、山口浩一教授、東京大学先端科学技術研究センターの岡田至崇教授、玉置亮助教と英・豪の大学の国際共同研究により、希土類添加中間バンド太陽電池において、希土類発光中心のエネルギー移動機構に由来するラチェット中間バンド効果を介した2段階光吸収に成功し、脱炭素に向けた次世代エネルギー変換技術に新たな道を開拓しました。

中間バンド太陽電池は63.2%の理論変換効率を有し、量子ドット超格子、中間バンド太陽電池をはじめとして盛んに研究されています。一方、現在の量子ドット超格子中間バンド太陽電池の最高変換効率は29.6%にとどまり、理論変換効率より遥かに低い値にとどまっています。中間バンド太陽電池の高効率化を阻害するのは、中間バンドに励起された光キャリアのライフタイム(寿命)が短いことが最大の要因とされています。中間バンドキャリアを長寿命化する主たる手法は、光キャリアである電子と正孔を空間的に分離する原理に基づいています。その中で近年、理論上、正孔と電子を空間的に最も分離できる長寿命ラチェット型中間バンドの研究が注目されています。ただし、これまでの報告は原理検証にとどまり、長寿命ラチェットバンドは実現されていませんでした。本研究成果はミリ秒ライフタイムを持つ希土類発光中心に着目し、広く知られている希土類発光中心に特有のエネルギー移動機構を制御した長寿命ラチェットバンドを実現し、その2段階光吸収の観測に成功しました。

本研究成果は英国時間2021年3月1日午前10時 (日本時間1日午後7時)、英国科学誌「 Communications Physics 」にオンライン掲載されました。

バンド構造の図

図:さまざまなタイプのIBSCの動作原理とエネルギー移動機構モデル

(a)価電子帯、中間バンド、伝導帯、および中間バンドの下のエネルギーΔEに位置するラチェットバンド間のキャリア励起、再結合、および2段階光吸収を含む従来のラチェット型IBSC、(b)エネルギー移動機構および逆移動による温度消光モデル;(c)エネルギー移動機構とカップリングしたラチェット型IBSC(本研究による提案)

【論文情報】
雑誌名:
Communications Physics
論文タイトル:
Experimental demonstration of energy-transfer ratchet intermediate-band solar cell
著者:
Tomah Sogabe, Chao-Yu Hung, Ryo Tamaki, Stanko Tomić, Koichi Yamaguchi, Ned Ekins-Daukes & Yoshitaka Okada
URL :

https://www.nature.com/articles/s42005-021-00543-1別ウィンドウで開く

関連タグ

ページの先頭へ戻る