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まちの雰囲気の定量化
—地域社会とのつながりと社会参加に関するマルチレベル分析—

  • 研究成果

2024年12月3日

発表概要

人々の行動は、まちの雰囲気などの「場の空気」に影響を受けている可能性があります。近年、心理学や疫学で用いられているマルチレベル分析という手法は、個人的な要因を超えた文脈的な効果を捉えることで、地域の特性=雰囲気を定量化できる可能性があります。多くの都市分野の研究は、まちの雰囲気を醸成するまちづくりを扱う一方、このような手法を使用した研究は少ないという現状があります。東京大学先端科学技術研究センター減災まちづくり分野の古賀千絵特任助教、吉村有司特任准教授、京都大学内田由紀子教授らの研究チームは、長野市善光寺門前地域の54のコミュニティから3,858名のデータを収集し、地域社会とのつながりと社会参加との関連を検証しました。その結果、地域の人を識別できる人は社会参加のレベルが高いこと、さらにそのような地域に住んでいることで、個人の向社会的行動に分類される社会参加への参加割合が高くなることが示されました。引き続き、詳細の分析を進め、まちと人との関連を明らかにしていくことで、人々にとってウェルビーイングなまちづくりや都市計画に寄与するエビデンスの生成を目指します。本研究論文は、2024年9月2日にCitiesで公開されました。

【研究内容】

東京大学先端科学技術研究センター減災まちづくり分野の古賀特任助教らの研究グループは、長野市善光寺門前地域の54のコミュニティから3,858名を対象に、地域社会とのつながりと社会参加との関連を検証しました。その結果、地域の人を識別できる人は社会参加のレベルが高いこと、さらにそのような地域に住んでいることで、個人の向社会的行動に分類される社会参加への参加割合が高くなることが示されました。地域の人を識別できる地域には、社会参加を促す雰囲気が醸成されている可能性があります。

人々の行動は、まちの雰囲気などの「場の空気」に影響を受けている可能性があります。近年、心理学や疫学で用いられているマルチレベル分析という手法は、個人的な要因を超えた文脈的な効果を捉えることで地域の特性=雰囲気を定量化できる可能性があります。しかし、多くの都市分野の研究は、まちの雰囲気を醸成するまちづくりを扱う一方、このような手法を使用した研究は少ないという現状があります。そこで本研究は、長野県善光寺門前エリアに在住する日本人の成人を対象に、地域社会とのつながりと社会参加との関連を検証しました。長野市善光寺門前地域の54地区へ質問票を配布し、4,039名(返信率20.2%)から回答を得、その中の3,858名を分析対象としました。

本研究の対象地域である善光寺門前エリアは、長野市の中心市街地を形成しており、善光寺を中心に1000年以上の歴史を持つ地域です。1920年代以降このエリアは宿場町として、さらに商業地としても発展していきました。しかし都市の郊外化に伴い徐々に商業施設などが廃業、1990年代以上は、空洞化が激しい地域でした。しかし、現在の善光寺門前エリアは、約100棟のリノベーション物件が集積し、日本のリノベーションタウンの先掛けとなっています。

今回の成果は、地域の社会的つながりと社会参加との間に文脈的な関連があることを明らかにしました。人々が近隣住民を識別できるようなコミュニティでは、住民の活動への社会参加の意欲を高める雰囲気が醸成されている可能性があります。さらなる研究を進めることで、地域のレジリエンスを育む重要な要因を明らかにできる可能性があり、将来の都市計画に寄与する重要なエビデンスになります。

研究者

  ー研究者からのひとことー

本研究では、直接的に善光寺門前エリアの空き家改修事業について分析はできていませんが、上記で記述した善光寺門前エリアの地域的特徴の結果としてのつながりを反映している可能性があります。それぞれの地域活動している方たちの取り組みなどが、地域に良い影響を及ぼしていることなどを測定し、研究で示すことで、地域の重要な資源を未来に継承できると考えています。(古賀千絵特任助教)

 
  • 図1
図1:長野市善光寺門前エリアの概要
長野県の位置、善光寺門前エリア位置、さらにメインストリートに位置する象徴的な建物やモニュメントを記した図である
© 2024 chiekoga

【掲載論文情報】

著者名
Chie Koga, Kosuke Takemura, Yuta Shin, Shintaro Fukushima, Yukiko Uchida, Yuji Yoshimura
タイトル
Assessing the social atmosphere: A multilevel analysis of social connection and participation
雑誌名
Cities (2024)
オンライン掲載日
2024/9/2
DOI
https://doi.org/10.1016/j.cities.2024.105408別ウィンドウで開く

【謝辞】
本研究は、東京大学と株式会社MYROOMの連携事業において、株式会社MYROOMと長野市の協力を得て実施したデータを用いた。また、本研究は科学技術振興機構(JST)プロジェクト未来社会創造事業「個人に最適化された社会の実現」の支援(2021-2024)、株式会社MYROOM・東京大学大学院工学系研究科共同研究(2020-2023)を受けている。

問合せ先

減災まちづくり分野 特任助教 古賀 千絵(こが ちえ)

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