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エポキシ樹脂の硬化率における特徴的な物性の変化を解明

  • 研究成果

2022年7月1日

東京大学先端科学技術研究センターの山下雄史特任准教授らの共同研究グループは、エポキシ樹脂の密度が、硬化率に応じて特徴的に変化することを発見しました。本研究成果は、2022年6月8日付でPolymer 誌に掲載されました。

エポキシ樹脂は、接着剤や複合材料のマトリクス(母材)など工業的に広く使われている高分子材料です。複合材料は軽くて強い性質のため、飛行機や自動車のボディの素材として注目を集めており、マトリクスとして使用されるエポキシ樹脂の物性コントロールが重要となっています。これまでエポキシ樹脂の密度は硬化反応に伴い単調に増加すると考えられてきましたが、実際に硬化反応に伴う変化を丁寧に調べた研究はありませんでした。

山下特任准教授らは、一般的な熱硬化性エポキシ樹脂であるビスフェノールA 型エポキシ樹脂の密度に注目し、硬化率に対してどのように変化をするのかを実験的に調べました。その結果、硬化率50%あたりまでは密度が大きくなりましたが、50%を超えると密度が小さくなっていきました。この密度の特徴的な変化は、これまで想定されてきた振る舞いとは異なるものです。さらに、このような性質を分子レベルで理解するために、全原子MD(分子動力学)シミュレーションおよび粗視化MD シミュレーションを実施し、反応点付近における分子の「柔らかさ」が特徴的な密度変化の要因になっていることを明らかにしました。

本研究により、エキポシ樹脂の分子構造と物性に関する新たな知見が提供され、樹脂開発のスピードが促進されることが期待されます。

山下特任准教授は次のように述べています。「これまでにあまり調査されていなかったエポキシ樹脂の硬化途中の挙動を分子レベルで詳細に解析しました。エポキシ樹脂の新しい分子設計技術につながる知見を得ることができ、嬉しく感じています。本研究は、これまで生命科学で使ってきた計算解析ノウハウを材料高分子にも応用するというチャレンジでもありました。意外にも、エポキシ樹脂はタンパク質と似たところがあり、自然の奥深さを感じました。」

本研究の一部は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的構造材料」の支援を受けて実施されました。

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  • 密度と硬化率の関係および粗視化MDシミュレーションにより得られた分子構造
    ビスフェノールA型エポキシ樹脂は硬化率50%付近で密度が最大となる特徴的傾向を示します。この傾向を粗視化分子動力学(CG-MD)シミュレーションで再現することにも成功しています。図中の分子構造はCG-MDシミュレーションで再現したものです。赤いスティックは硬化反応により生成した化学結合を示しています。©2022 庄司 直幸、山下 雄史

【発表雑誌】

雑誌名:
Polymer
論文タイトル:
Effect of conversion on epoxy resin properties: Combined molecular dynamics simulation and experimental study
著者:
Naoyuki Shoji, Kohei Sasaki, Akira Uedono, Yuichi Taniguchi, Keiichi Hayashi, Norie Matsubara, Tetsuya Kobayashi, Takefumi Yamashita
DOI :
10.1016/j.polymer.2022.125041別ウィンドウで開く

【研究者】
ニュートリオミクス・腫瘍学分野 特任准教授 山下雄史

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