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アジアのNOxはどのくらいの時間で消えるか:大気汚染物質の発生源・変質過程に迫る

研究内容 アジアのNOxはどのくらいの時間で消えるか:大気汚染物質の発生源・変質過程に迫る 地球大気環境科学 助教授 竹川 暢之

冬季アジアにおけるNOx消失寿命について定量化することに成功

近年の著しい経済成長の結果として、中国など東アジア諸国から排出される大気汚染物質は年々増加しており、それが日本上空や太平洋に流れ出しています。そのうち、オキシダント(オゾン)を生成する窒素酸化物(NOx)は最も重要な成分の一つです。NOx放出量に関してはこれまでも多くの研究が行われてきました。ところが、大気中でNOxがどの程度の速さで消えていくのか、現実の観測データから示した例はほとんどありませんでした。

大気中の二酸化炭素(CO2)の消失先(シンク)は植物や海洋による吸収なので、いったん上空に運ばれれば消失することなく全球に広がります。したがって、CO2の濃度は都市の一部を除けば、ほとんど一様と言って良いと思います(もちろん、ppm(10-6)レベルの濃度変動はあり、それが実は重要なのですが)。ところが、論文にも記述した通り、NOxというのは一日から数日程度の短い時定数で消滅するので、発生源周辺は非常に高濃度ですが、輸送されるに従って急速に消えていきます。それも単に消えるのではなく、硝酸という酸性物質に変わって沈着し消えていきます。今回の論文では、冬季アジアにおけるNOx消失寿命について、航空機観測で得られた一酸化炭素(CO)、CO2、NHHCs(非メタン炭化水素)のデータをうまく組み合わせて定量化することに成功しました。

COとCO2の両方を量ることで汚染空気の発生源が見えてくる

さらに、今回の論文の主題ではなかったのですが、COとCO2という一見ありふれた物質を効果的に組み合わせたことも重要な点です。COとCO2のどちらか一方を測定している人は大勢いるのですが、その両方を高精度・高空間分解能(※ 航空機観測では時間分解能=空間分解能です)で測定して、しかもそれを解析に効果的に利用している人は非常に少ないのです。この論文では、COとCO2を組み合わせることでいろいろなことが分かるということを体系的に示しています。炭素を含む燃料が燃えれば必ずCOとCO2が放出されます。このCO/CO2放出比率が、自動車の場合には典型的にいくら、火力発電所ではいくら、というように発生源に特徴的な値になります。逆に、その比率によって観測された汚染空気の発生源がある程度推測できることになります。

実際に航空機観測で測定されたCOとCO2の関係を示します(図1)。この図では、日本(名古屋)、韓国(釜山)、中国(北京・上海付近)から流出したと推測される汚染空気を比較しています。CO/CO2放出比が傾きで表されており、完全燃焼だとCO2ばかり出てCOが出にくいですが、不完全燃焼の度合いが強いとCOが相対的に多く出ることになります。日本の場合、自動車や工場などの発生源が主で、燃焼効率が高いので、傾きは寝ています。ところが、中国では石炭や薪など不完全燃焼の度合いが高くなって、傾きが立ってくることが分かりました。このようにCOとCO2の両方を量ることで、どのような発生源が寄与しているかが見えてきます。

図1:

限られた情報を整理して、混沌とした中に規則性を見出すことが最も面白い

このCO/CO2解析と気象解析を組み合わせて汚染空気の発生源を同定し、その空気が流出する経過時間を推定したうえで、NOxの消失寿命を導くことができました(図2)。観測を行ったのは日射が弱く光化学反応が遅い冬季ですが、それでもNOxは1日程度の短い時定数で消失していることが分かりました。さらに、この消失時間は昼間の光化学反応だけでは説明できず、夜間のエアロゾル粒子上での反応(不均一反応と言います)が効いているらしいことが分かりました。このような点は、大気中の反応の複雑さを示す興味深いところであると思います。

図2:

大気成分というのは非常に混沌としていて、我々が観測で知ることが出来るのはごく限られた情報だけです。その限られた情報を整理して、混沌とした中に規則性を見出すことがこの研究分野の仕事として重要であり、最も面白いところだと考えています。

聞き手:神野智世子

(2006年9月21日)

対象論文:
Takegawa, N., Y. Kondo, M. Koike, T. Machida, T. Watai, D.R. Blake, D.G. Streets, J.-H. Woo, G.R. Carmichael, T. Chen, K. Kita, Y. Miyazaki, T. Shirai, J. B. Liley and T. Ogawa:Removal of NOx and NOy in Asian outflow plumes: Aircraft measurements over the western Pacific in January 2002, Journal of Geophysical Resaerch, 109, D23S04, doi:10.1029/2004 JD004866, 2004

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