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経済学的観点から地球温暖化問題に取り組む

経済学的観点から地球温暖化問題に取り組む 環境経済学 特任教授 山口 光恒

温暖化対策の究極目標の設定について国際合意を

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書がノーベル平和賞を受賞したことにより、執筆者の一人である山口教授宛に送られてきた賞状

現在の最大の関心事は、2012年に京都議定書の期限が切れた後の国際体制です。日本政府に対する働きかけとともに外国の政府や議会の人、学者、ビジネスマンに会ってこちらの考えを伝えることに尽力しています。いくら日本で研究して日本語で書いていても、日本人しか読まない。だからまずは英語で書き、相手に会って話を聞いてからそれに対する反論や意見を述べる。特に今は来年の洞爺湖サミットに向けて相当動きがあるので、日本の考えを早く表明していかなければならないと考えています。

そのひとつは、温暖化対策の究極目標の設定です。CO2排出量削減に伴う費用と効果の折り合いをどこでつけるか。気候変動枠組条約では「気候系にとって危険でない濃度に安定化させる」ことを目的にしていますが、具体的な濃度について国際的な合意は未だありません。サンゴの白化、南極大陸の氷解など個別の問題については科学が基準を示すことが出来るかもしれませんが、地球規模の温暖化にとっての危険が何かについては政治の世界で合意しなければならないと考えています。つまり対策をどこまで進めるのがよいのかについての合意がない。そこで日本国内、そして欧米のトップたちと話をしているわけです。

安倍前首相は5月に「21世紀環境立国戦略」を宣言して「温室効果ガスの排出量を2050年までに半減させる世界共通の目標設定を提案する」と表明し、6月のG8サミットでこの線に沿って真剣に検討することとなりました。ところが、実際にはいくら試算しても実現は厳しい。そのつじつま合わせをどうするのか。仮に先進国が100%削減しても途上国に対策が無ければ全体の排出量は増加します。今の中国やインドが削減対策にYESと言うとは思えない。そもそも、先進国が100%減らすことは不可能ですから、調査に基づくそういった矛盾を日本や欧州、米国の指導的立場にある人に説明してきました。

『京都議定書』以降も日本独自の方策を打ち出すべき

もう一つの緊急課題は中期目標の国際的合意で、2013年以降についても日本独自の方策を打ち出すべきだと強く言っています。ヨーロッパは2020年までに対1990年比で先進国は排出量を3割減らす、他が合意しなければ自分たちだけで2割減らして、途上国にも何らかの緩い義務を課したいとしています。ところが国別にキャップをかぶせて達成できなければ罰金・罰則を設けると、既に目一杯対策をしている日本は相当きつい。鉄、電力、セメントなどのエネルギー集約産業の対策はとうに尽くされていて、政府審議会に行くとわかりますが、今は重箱の隅をつつくように学校、病院、スーパー、コンビニ、そしてパチンコ屋さんには照明を暗くするよう要請するなど、あらゆる所を絞っています。それでも難しい。そもそもヨーロッパは、旧東欧やソ連崩壊で90年代に効率化が進んだこと、英国では電力の自由化で石炭から天然ガスに切り替わったことなど、特殊要因による削減が進んでいます。日本は、各国の状況に応じて出来ることをするとした上で、国別キャップ制には反対するべきです。

提案しているのはセクター別の基準作りです。主要なエネルギー多消費産業について、例えば鉄1トン作るのに排出されるCO2に一定のベンチマークを作る。最も効率の良い値に合わせた場合、それでどれだけ削減が進むか試算しています。日本は世界でも非常に効率がいいですから有利になると思いますし、その基準に他国も合わせることで地球規模の削減にも寄与するはずです。

国別の温暖化への影響を科学的に検証し各国が応分の負担を

最後に温暖化のタブーに、いわゆる先進国と途上国という分け方があります。「共通だが差異のある責任(common but differentiated responsibilities)」を負うという原則で、要するにこれまでCO2を大量に排出する生活をしてきた先進国が悪い、だから途上国にも責任はあるけれども基本的には先進国が義務を負うべきで、途上国は特段の義務は負わないと解釈されています。ところが先進国には旧東欧やギリシャ、ポルトガルも入っている。途上国でもサウジアラビアのように大金持ちの国もあり、中国は目覚しく成長している。これまでの先進国と途上国という単純な区分をばらして、国別の温暖化への影響を科学的に検証した上で、責任のある国が応分の負担をするようにしないことには、不毛の議論のままで終わってしまうというのが私の主張です。

こういった議論で抜けがちなのは、温暖化だけ対策をすればいいのかという視点です。国連は、貧困の撲滅やエイズ等の病気との闘いなど8つの項目をミレニアム開発目標に掲げていて環境はその一つに過ぎません。世界の資源が限られている中で、温暖化対策をやる費用と効果のバランスを考えて合意形成をするのが政治であり、研究活動を通してその過程になんらかの貢献ができればと考えています。

聞き手:神野智世子

(2007年11月12日)

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