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航空決戰必勝の鍵 白鷗會 〔復刻版〕
昭和十八年八月二十日

三、航空決戰必勝の鍵

ではこの絶對負けられぬ航空大決戰の必勝の鍵はどうか? 以下當面の大敵米國の現況と比較しつゝ数項にわたつてお話して見やうと思ふ。

1 航空機の量(生産)に閧する問題

先づ第一は航空機の量(生産)に関する問題であります。彼米國は有り余る天然資源と富と生産力を頼り質の劣勢を量で補ふ。つまり大消耗戰術を以て勝敗を決しやうと云ふ考へである事は前述の通りです。彼等は現在生産せられる飛行機の5%を濠洲方面に送れば十分に日本を反撃する事が出来ると豪語して居るさうです。然らばその生産現況はどうか?

  • 第2図 アメリカ軍用機増産計画曲線
  • 第二図参照、第二次歐洲大戰が始まるや英佛より飛行機の多量の注文がアメリカに殺到し、アメリカも亦反樞軸軍の兵器廠を以て自任し増産につとめたのですが、民間會社が第一次歐洲大戰後の經験から戰爭が終つて後の仕末を心配して、仲々政府の要求する拡張を行はなかつた爲に幾分かの増産はしたとは云へ月産僅々200台余りと云ふ貧弱なものだつたのです。越えて昭和十五年大統領は豫算教書を以て年産五万機計画を発表し、業者をワシントンに集めて三ヶ月に亘り相談をしたのですが、それは無理だと云ふ事になつて結局黒曲線の様に昭和十八年頃迄に之を実現すると云ふ計画を立てたわけです。

    然るに昭和十八年十二月八日大東亜戰爭が始まりましたので〔注6〕ルーズベルト大統領は急遽議會を召集して航空機増産に関する追加豫算40億ドルを議會に要求し、一躍年産125,000台(月1万台)と云ふ厖大な増産をしかも急速に実現しやうと云ふ大計画を発表したのです。之が即ち図の赤点線の曲線です。

    併し乍らこの実蹟と称せられる年産6万台と云ふ数は我が國にとりまして実に侮り難い数でありまして、更に彼等が前に何度も申し上げました様に、有り余る天然資源と富力と生産力とを之に集結して増産に狂奔致して居る事を考へまする時、この数に関しては絶對油断は参りません。

実戰を經て来られた軍人の方のお話を伺つても少数で攻撃に行つた時よりも、たくさんの飛行機で行つた場合の方がはるかに被害が少いと申して居りますし、又一方、彼等航空機の損害比率を見ましても緒戰に於ける圧倒的優勢なる当時に於ては10:1或は20:1と云ふ様な事もあつたでせうが、昨年八月の第一次ソロモン海戰以後今年一月末迄及び今回のレンドバ、ニュージョージヤ作戰に於ては4:1と云ふ様な比率になつて居ると申されて居りますから、少くとも彼米國の生産の1/4だけは日本の方でも生産しなければ現有勢力を確保する事は出来ないわけで、若し我が國の生産がこの数を割る様な事があつたらそれこそ重大な問題で、むしろこれ以上の生産をあげなければ到底必勝は期せられぬわけであります。

從つて我が政府並に軍部に於きましても航空機の増産に對しては最も意を用ひられ、戰時五大産業の中二つ(航空機及び軽合金)迄が之の爲に指定されてゐる所以も御わかりの事と思ひます。

生産力と云ふものは人と物との相乘積であると云はれて居ります。而して今年春の帝國議會で東條首相が決戰算式と云ふ事を云はれましたが、この決戰算式に於ては2に2を掛けて4にしたのではいけないのです。2×2=4と云ふ算式なら國民學校一年生でも出来る。敵米英でも勿論できるのです。即ち決戰算式は2×2を10、又は50又場合に依つては100とも出さなければいかんのです。この決戰算式の奇術を解決するものは即ち我が大和民族の精神力であります。敵米英が何でも持つて居り乍らこれだけは持ち合せないのです。この我が國民唯一の力こそ彼等の如何なる厖大な数字にも等しくし又凌駕し得るのです。今こそ我々は米英撃滅の精神力を発揮して、航空機生産力に於てこの決戰算式を誓つて実踐致さねばなりません。之、航空決戰必勝の第一の鍵であります。

<1996年1月発行 先端研探検団 第二回報告書35頁 掲載>

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