高機能材料分野 江島研究室
生物から学び環境問題や先端医療に貢献する高分子材料を創出する
人類は古来より自然や生物から多くのことを学び、模倣し、恩恵を受けてきました。一方で近年、ナノテクノロジーと分子生物学が急速に発展したことで、生物のナノ・分子レベルでの理解が大幅に深まりました。そのため生物を規範とする科学は新たな局面を迎えています。当研究室では、蓄積された生体分子の構造と機能に関する情報を基に独自に分子をデザインし、化学の力を駆使して合成します。さらに最新のナノ・バイオテクノロジーを併用することで、環境問題や先端医療に貢献する「バイオミメティック材料の創製」を目指しています。
海棲生物の接着機構に学ぶ水中接着剤の開発と応用
濡れた肌に絆創膏が貼りつきにくいことからわかるように、ほとんどの接着剤にとって水は大敵です。接着剤と被着体の間に水が入り込み接着妨害層として働くからです。ところが自然界に目をむけてみると、一部の海棲生物は難しい水中接着をいとも簡単に達成しています。我々は生物が長年の進化の過程で獲得した水中接着機構から学び、湿潤環境下で生体組織を強固に接着可能な医療用接着剤の研究開発を進めています。
金属‒ポリフェノール錯体(MPN)による界面エンジニアリング
ポリフェノールは植物の葉、茎、樹皮、果皮、種子などに多く含まれているバイオマス由来の化合物です。ポリフェノールの一種であるタンニン酸は様々な材料表面に対して高い吸着性を示します。そのため、金属イオンを添加して架橋すると界面局所でネットワーク構造を形成させることができます。この金属‒ポリフェノール錯体(Metal-Phenolic Network,MPN)からなる被膜は、用いる金属イオンとポリフェノールの組み合わせに応じて異なる特性(弾性率,透過性,分解性など)を示します。特に鉄イオンとタンニン酸から調製したMPN は、生体適合性が高く温和な条件下で分解するため、バイオ界面やナノ材料の表面改質法として世界中で広く活用されています。

2本のアルミ棒を水中で接着し、重りを持ち上げる様子

金属イオンとタンニン酸を混合すると様々な物体の表面にMPN薄膜が形成する
高分子材料は、軽くて成形加工しやすいという特徴を活かし、日常生活のいたるところで使われています。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの生産量が特に多いので、これらは4 大汎用プラスチックと呼ばれます。飲料ボトルや繊維などに使われるポリエチレンテレフタレート(PET)の生産量も大きく伸びたため、PET を加えて5 大汎用プラスチックということもあります。バイオマテリアル分野においても、様々な高分子が活躍しています。独断と偏見で筆者の中での5 大汎用医用高分子を挙げてみると、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジオキサノン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ乳酸共重合体です。コロナ禍の折、PEG を含有するワクチンが自分を含め世界中の人々に接種された時には感慨深いものがありました。いつか当研究室で合成されたポリマーが汎用医用高分子の仲間入りを果たすことを夢見て研究に取り組んでいます。
メンバー

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- 江島 広貴 教授
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専門分野:高分子材料、バイオミメティクス
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