地域社会システム工学分野 近藤早映研究室
拡張する建築・都市計画学領域への人中心視点によるアプローチ/エリア活性化から小さな拠点形成へ
昨今注目を浴びた「スマートシティ」や「スーパーシティ」は、人々のワクワク感や期待感を高揚させ、その実現に必須となる科学技術の発展を後押してきました。しかし、物理的環境の成長だけを追い求めると時に短絡的な市場経済に扇動され、結果的に公害や地価高騰など日々の安寧な暮らしを脅かす事態を招いた過去の苦い経験があります。もちろん、これらの解決にむけて多くの努力がなされましたが、面倒で地道な作業は成長を追い求めるモチベーションを超えられず、その結果、昨今の都市の課題はさらに複雑化しています。今こそ物理的環境の成長に軸足をおいた都市計画を問い直すべきで、都市の本質的な価値を社会的、文化的、そして人間的な視点からも捉え直し、様々な変化に追従できる創造的で革新的な都市づくりの仕組み、すなわち新しい社会システムを形成する必要があります。 新しい社会システムには、人々が連携して相互に意思疎通しながら各人が内発的な関心と自発的な移行にもとづいて行動するという社会的、文化的、人間的理念は欠かせません。この前提に立ち、「人」の視点に重きを置く、創造的な参加行動を促す「リビングラボ」に関する研究、革新的な地域を支援する空間マネジメントに関する研究を実施しています。これらの成果をもとに、社会実装を通じて、地域らしさをも考慮した地域社会システムの開発に取り組みます。
なお、これらの研究活動のアウトカムとして、都市工学などの既存の学問分野の拡張を想定していますが、複雑な都市課題を解くことを目指しているからこそ、様々な専門分野や学術真理からの知の融合が必須です。先端研には40もの学術分野と多様な背景の研究者によって構成されており、日常的に知との遭遇が可能です。この遭遇を必然とする議論の場づくりや先端研内外への発信を定期活動化し、自身の研究分野だけでなく、相手の研究の新領域開拓にも貢献することを目指しています。
私は仕事柄、授業や講演など大勢の前で話す機会が多く、社会連携を促進する役割を担っていますが、実は内向型の人間です。Susan Cain 氏のベストセラー「Quiet / 内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力」を読んで以来、確信を持ってそう自己紹介できるようになりました。図書館や美術館で静かに本や作品の世界に没頭するのが心地よく、街を一人でぶらぶらと歩くことや一人旅を好んで楽しんだりするのは、内向型の典型的な行動だそうです。また、研究者は内向型の私にとって理想的な職業のようで、様々な回り道を経てこの道を選んだのは自然な結果だったのかもしれません。
都市研究も、裁縫箱の中で絡まりもつれた糸を解き必要な部分を繕うようなイメージで進めています。この過程で、私の内なる世界には多くの小ネタが溜まってきました。社交的な場は今でも得意ではありませんが、小ネタを武器に少しずつ乗り切っていきたいと思っています。
メンバー
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- 近藤早映 准教授
専門分野:都市計画、都市再生・地域再生、公共施設計画、市民協働・まちづくり、にぎわい学
<2024年4月現在>
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