附属エネルギー国際安全保障機構(次世代光電変換デバイス分野) 久保研究室
多様な環境で発電する高効率太陽電池の開発
再生可能エネルギーの中でも、太陽光エネルギーは特に豊富で安定した供給が期待できるエネルギー源であり、その有効活用は、地球温暖化の抑制や持続可能な社会の実現に向けた重要な鍵となっています。とりわけ、太陽光を直接電気に変換する太陽電池は、エネルギー変換効率の向上や低コスト化、さらには軽量性や柔軟性といった機能面での進化が強く求められており、さまざまな応用展開に向けた研究開発が世界中で活発に進められています。
私たちは、次世代型太陽電池の創出を目指し、化学合成技術を基盤とした新規材料の開発、デバイス構築技術による最適な素子設計、そして光計測技術を用いた性能評価を統合的に活用し、太陽光エネルギーの高効率な電気変換を実現するための研究に取り組んでいます。特に、溶液プロセスで製造可能な太陽電池に着目し、低コストかつ拡張性に優れた光電変換デバイスの実現に向けた材料および構造の研究を進めています。
材料研究においては、液相で合成可能な化合物半導体ナノ結晶や、ワイドギャップ半導体ナノ材料の形態制御、およびその素励起状態に関する物性の理解を深めています。とりわけ、赤外光を吸収可能な半導体においては、結晶サイズの制御によって量子効果を発現させることで、光吸収特性を赤外から可視域に至るまで自在に調整できる点に注目し、太陽スペクトルの広範な波長領域を効率的に電気に変換でき る太陽電池素材の研究開発を行っています。また、ワイドギャップ半導体とのハイブリッド化による光電特性の拡張や、界面物性に着目した基礎的な電子構造解析にも積極的に取り組んでいます。デバイスの研究開発においては、ハイブリッド構造の設計と、比較的低温で実施可能なウエットプロセス技術を使って高い光電変換性を実現するためのハイブリッド構造構築方法の検討も行っています。
太陽電池の高効率化には、光吸収、電荷分離、電荷輸送、そして電極での電荷回収といった一連の素過程が、それぞれ高い効率で連携して機能することが不可欠です。そこで、光や電気的刺激を利用した変調計測技術を駆使し、各過程のダイナミクスを明らかにするとともに、性能向上に資する構造設計や材料選定のための知見を積み上げています。
広帯域での光電変換が可能なコロイド量子ドット太陽電池
ワイドギャップ半導体ナノ材料の光物性研究と太陽電池応用
レーザパルスを活用した材料研究
地球上で起こる生命活動や自然現象など様々な事象の多くが、太陽光の恵みに支えられていることは実感できます。画家を始めとする多くの芸術家は、光に魅了されてきたはずです。同様に、光と物質との相互作用が関係する物理化学は興味深いです。物質の次元性に着目するとバルク状態では確認できなかった興味深い特性が発現することがあります。代表例として、グラファイト(三次元)、グラフェン(二次元)、ポリアセチレン(一次元)は、同じ炭素で構成される物質ですが、それぞれ際立った異なる特徴を発現します。コロイド量子ドットは、物質を数ナノメートル程度のサイズにした粒子の一つで、いわば、ゼロ次元性物質です。粒子サイズにより光吸収や発光領域を制御できるなどの特性を活用した実用化が進んでいますが、基礎科学分野を含む広範囲な分野での有用性があります。ここでは、光と物質の相互作用、物質の次元性が絡む物理化学を楽しむとともに、それらが発現する特徴を、エネルギー関連材料やデバイスに応用展開したいと考えています。
メンバー

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- 久保 貴哉 特任教授
専門分野:太陽光発電、超高効率太陽電池、低次元性機能材料、変調分光計測
<2025年10月現在>
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