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誰もが必要なサービスに 簡単にアクセスできる仕組みを
松清 あゆみさん

  • 松清 あゆみ特任助教

    「誰もが自分に必要な情報、選択肢に出会い、自分で暮らし方をデザインできる。そんな地域の実現に関わっていきたいです」

  • 松清 あゆみ さん 中邑・近藤研究室(人間支援工学分野) 特任助教

    東京都出身。大学を中退し、専門学校で理学療法士の資格を取得。信州大学大学院医学系研究科保健学専攻博士前期課程修了、2016年同大学院博士後期課程修了。博士(保健学)。中邑・近藤研究室特任研究員を経て、2020年4月より現職。

    あなたが新しい行動を起こすとき、きっかけとなる情報はどこから得たものだろうか。家族? 友人? 職場? 情報収集が受け身の場合、最初に情報を得る場所がその後を左右すると松清特任助教は言う。「障害のある人が車いすなどの支援機器を選ぶとき、リハビリを受けていればリハビリスタッフから、そうでなければネット検索や福祉機器の展示会、家族会など知人からの情報に頼ることが多いです。日本では一部を除き福祉サービスの利用者は個別支援計画の作成が必要ですが、スペシャリストが情報を持ち寄って多くの支援機器から適した機器を検討するプロセスは制度的にほぼありません」。情報が偏り、障害のある人に医療・福祉・教育・地域生活の垣根を越えて一貫した支援の体制が整っていないのが現状だと話す。

    松清特任助教は大学で社会学を学んでいた。「就職後の自分を想像したとき、これは違うと思い、大学をやめました(笑)」。専門学校で理学療法士の資格を取得し、療育施設で臨床経験を積みながら夜は大学院に通った。「私の母、伯母は生まれつき脳性麻痺で、視覚障害のある伯父もいます。障害のある人が社会の中で生きていくことに何の違和感もなく育ちました。リハビリの仕事についたのも“助けたい”というマインドは一切なく、障害のある人たちと一緒に生きていく仕事を自然と選びました」。博士課程在学中に近藤武夫准教授が主宰する障害のある学生の進学・就労支援プロジェクト『D O - I TJapan』で夜間介助員を経験。その縁で先端研に着任し、1日15分からでも働ける障害者の新たな働き方『超短時間雇用」を創出するIDEAプロジェクトの一員となった。

    「超短時間雇用は障害があっても社会の中で役割を持って生活できる社会包摂モデルです。障害者が働くためには、スキル、ニーズ、働く環境、生活と就労のバランスなど多角的なアセスメント(評価・査定)が必要です。日本には複数の障害者就労支援制度も、全国15,000以上の事業所もあります。ただ、現行の障害者雇用率制度では障害者就労には週20時間以上の勤務が求められ、1日1時間といった短時間なら働けても20時間以上は難しい人は一般就労につながりにくい。“時間の壁“が本人のニーズを置き去りにしてしまいます。超短時間雇用モデルではアセスメントによる総合的な判断を行い、ニーズ、スキルに合う求人とマッチングします。企業開拓やマッチング機能を実践する運用体制の構築が必要なので、自治体と連携した地域づくりのプロジェクトになります」。自治体のリソースを把握し、実践する役割から発想した組織モデルを仕組み化するために、障害者支援の領域を越えて、地域振興、産業育成など多様な分野の人が集結しているという。「リハビリの現場にいるときから、誰もが自分が利用できるサービスに簡単にアクセスできる仕組みを作りたいと思っていました。自治体と一緒に地域らしさのあるモデルを作っていくことはすごく面白い」。日々、サスティナブルな地域の仕組みづくりに奮闘している。

    (広報誌『RCAST NEWS』111号掲載)

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