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AIを医師の右腕に 黒瀬 優介さん

  • 黒瀬特任助教

    趣味は草野球。「研究者以外の人と交流できる貴重な場です。職業を越えて一緒に楽しむことが自分の視野を広げてくれます」

  • 黒瀬 優介 さん 原田研究室(マシンインテリジェンス分野)特任助教

    福岡県出身。2012年大阪大学工学部応用理工学科卒業、2014年東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻修士課程修了、2017年9月大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。博士(工学)。2017年10月より大学院情報理工学系研究科原田研究室特任研究員、2020年4月より現職。

    病院でCTなどの画像検査や細胞組織の精密検査を受けると、結果が出るまで少し時間がかかる。それは、担当医師に加えて放射線科医や病理医と呼ばれる専門医のチェックがあるからだ。今、日本では専門医が不足し、地方の専門医不足はより深刻だという。黒瀬特任助教の研究は医療AIと呼ばれる領域の1つで、医用画像に写った異常を指摘する人工知能の開発を目指す。AIによる医用画像診断の範囲は放射線科から内視鏡検査、病理画像まで幅広く、期待される領域の1つだ。参加した大型プロジェクトで開発した画像診断AIは、現在、福島と徳島で実証実験中だという。「まだ診断に直接関与するレベルではなく簡単なチェックですが、まずは画像診断のダブルチェック体制を支援する第一歩です」と話す。

    黒瀬特任助教は大学受験で医学部か工学部か悩み、工学部を選んだ。理由は「野球をしたかった」から。「進学校だったので医学部志望の同級生も多く、医学に興味がありました。野球で選ぶなんて罰当たりですよね…」。工学部に進んでも後悔はなかった。しかし、授業で聞いた手術ロボットの話が彼を医学へ向かわせる。「自分が医者になるよりロボットを作ったほうが多くの人を救える。打算的ですが、大量生産できれば自分一人より多くの人に接するし、多くの場所に医療を届けられる。自分も医療に貢献できると思ったんです」。修士で日本有数の手術ロボット研究を行う光石研究室へ。その後「今後、手術ロボットを作るならロボットの知能を研究しなければ」と、知能情報処理とロボットシステムを研究する原田研究室へ移った。

    AIに学習させる医用画像の収集には、患者の同意や個人情報の削除など多くのハードルがあり、クリアした後も大変だ。「撮影した膨大な画像のうち病変が写っているのは数枚で、症例自体が少ない疾患もあります。AIは多く見たものを学習するので、病変あり/なしのバランスをとるための工夫をすることが重要です。何より情報系の研究者は医師ではないので、画像にある病変のタグ付けは多忙な医師の方々にお願いしなければなりません。並行してAIでその負荷を減らすための研究もしています。どれだけ優秀なAIでも、その裏で医師に血の滲むような労力を求めるのは本末転倒ですから」

    いかに医師のレベルに近いAIを開発し、適切な医療を広く提供するか。それがAIの目指す場所の1つだと黒瀬特任助教は言う。「原田研は医用情報処理のラボではなく、医療AIはあくまで一部門です。画像から3Dオブジェクトを作ったり、画像とその画像に関する質問から正解を導き出すモデルを構築したり、自由な考えで多様な研究が行われていて、医学以外の情報をインプットできるのが強みです。先端研はラボの枠も超えた異分野の集合体なので、新しい展開ができるのではないかという未来を感じています」

    (広報誌『RCAST NEWS』112号掲載)

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