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秩序と無秩序に魅せられて 谷田 桜子さん

  • 谷田助教

    ここ数年はヒップホップダンスにハマっているとか。「今は家で自主練です」

  • 谷田 桜子 さん 西成研究室(数理創発システム分野)助教

    谷田 桜子 さん 西成研究室(数理創発システム分野) 助教 東京都出身。2010年東京大学理科二類入学、2014年理学部物理学科卒業。2016年3月東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。2019年3月理学系研究科物理学専攻博士課程単位取得満期退学、2019年9月学位(博士)取得。博士(理学)。2019年6月より先端研西成研究室特任助教、2021年2月より現職。

    自己紹介スライドの1ページ目には、燕子花(かきつばた)の群生を描いた尾形光琳の代表作『燕子花図』があった。「一つ一つは緻密に描かれていないし、規則正しく並んでもいない。でも全体に美しい秩序がある。なぜでしょうね、集合体に惹かれるんです」。メールのプロフィール画像は、同一モチーフの反復で有名なアーティスト・草間彌生のキャラクター“ YAYOIちゃん”。「集合体恐怖症の方の気持ちもわかります。私も見るとゾワっとするので。でも、え?と思って吸い寄せられます」。そんな谷田助教の研究領域は「集団運動」。「交差点で整列してくださいと指示されなくても自然と一定方向の流れができるように、誰かや何かが全体を制御しなくても自動的にある構造ができる現象が面白い」。参加するプロジェクトでは、飛行機の搭乗順に関する群集制御を研究する。

    谷田助教は大学で物理学を学んだ。「昔から生き物に興味があり、当時は生き物を理解するためには構成するミクロな世界を知る必要がある、原子より小さい領域を理解する=物理と考えていました」。授業で量子力学などを学び、大学院で素粒子を研究するつもりだった。しかし出願の一週間前に突然「本当に素粒子を研究したいのか?」と考え、専攻を生物物理へ変更した。博士課程在学中のある日。いつも行くデパートのエレベータの前で、長い待ち時間や複数台が同時に到着する現象を物理で説明してみようと思い立った。メインの研究の合間に取り組むも、自力ゆえ展開の仕方がわからない。自分の純粋な疑問から始まった研究をなんとかしたい一心で、特別講義で訪れた渋滞学の西成教授に話しかけ、今がある。「私が興味を持つ生き物とは、ミクロな世界のものではなく人間の目に見える大きさでした。日本画以外にも現代アートや建築などに興味がありますが、好きなものには共通要素があり、それは集合体だと最近気づきました。西成研究室が扱うのは人の動きや渋滞。やっと自分の興味と研究が重なったし、さまざまな知識や経験が必要になる境界領域の研究が自分には合っていると感じます」

    行動を制限されるコロナ禍で研究は進んだのか。「人は集まれないしコロナの終息も見えず、何もできないと感じました」。行き詰まる中、ラボメンバーと『群集を安全に誘導する方法は、人を密度の低い状況に制御する方法に拡張できる』と話したことで次が見えた。「今はまだシミュレーションや理論が中心ですが、早く現実の人の動きを計測したい。エレベータの研究も、メカニズムを解明して効率を改善できれば新機への交換は不要になります」。社会に役立っているというリアルな感触。それが原動力になる。論理的な思考で頭が疲れるとストーリーのない動画を見るそうだ。「意味のないぐちゃぐちゃしたものも好きなんです。対極にあるものでバランスをとっているのかもしれません」。集合体はいつでも彼女の心に働きかける。

    (広報誌『RCAST NEWS』113号掲載)

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