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第4回  中村 泰信 教授

先端とは何か
第4回  中村 泰信 教授
nakamura

昔『街並みの美学』という本で芦原義信が様々な観点から都市景観や建築の美しさについて議論をしていたのを興味深く読んだ思い出がある。それに倣って「先端の美学」について考えてみたい。「美しい先端」とはどのようなものだろうか。そもそも「美しい」というのは至って主観的な感覚であり、何に対して「美しさ」を感じるかは個人的・時代的嗜好によるところ大である。一般論が存在しないのは承知の上である。

建造物では「先端」は専ら目につく場所にある。東京スカイツリーしかりドバイのブルジュ・ハリーファしかり。古来多くの宗教的建築においても尖塔は重要な位置を占めている。さて、どのような先端が美しいのか。とがっているもの、先の丸いもの、きらびやかに飾り立てられているものなど様々であるが、共通の要素はどこにあるのだろうか。
野球のイチローでもサッカーの香川でも水泳の北島でも、磨き抜かれたトップアスリートのパフォーマンスは「美しい先端」であると思う。神に近い選ばれた人間だからとは思わない(ようにしている)。背後に蓄積されたトレーニングとプレーの瞬間の集中力の賜物であろう。同様に「美」を感じさせられるものに、いわゆる職人芸がある。西岡常一の宮大工、小関智弘の旋盤工など、職人の世界を垣間見せてくれる書物は貴重である。こちらは日頃目立っているわけではないが、ときにニュースなどでも取り上げられるように、実は日本の最先端の技術を担っている部分も多い。同名の人気番組もある通り、どのような職業・職務であっても「プロフェッショナル」に仕事をこなしている人たちは、先端に値する。些細なことであっても、そのような人々と仕事や日常をともにする機会を得ることは本当にありがたいし楽しいことである。
学問の世界でもまた、その道を究めた人たちの仕事は美しい。先ごろ亡くなった白川静の漢字研究には畏敬の念を覚える。ぐっと身近なところで、私の研究分野の物理の領域でも、優れた研究をしているグループの論文は見た目も美しいし、実験室も実験装置もまた美しいと思う。

と徒然なるままに思いつくことを書いている人間を横目にしながら、若い人たちには身辺と精神を清め各々の信念を持ち、確固たる礎を築いて「美しい先端」を目指して欲しいと思う。いまどき何を古めかしい精神論をと言われるかもしれないが、それがある意味で「先端」への最短距離なのだと思う。どっしりとした土台の上に積み上げられたシンプルながら安定感のある先端が美しいというのが、先端研に着任してまだ4 か月の私の個人的感覚である。

(2012年8月)

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