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第8回 人間支援工学 分野 高橋 智隆 特任准教授

 高橋 智隆 特任准教授

先端とは、技術の進歩や暮らしの変化の中で移り変わっていくもの。東大先端研における学際的な研究体制は、旧来の学問分野の枠を超え、複数の分野にまたがる新領域を創世し、新しい先端が日々また芽吹いているように感じています。

私の研究分野は、人とコミュニケーションをおこなう小型ヒューマノイドロボットです。
高性能・高機能を追求してきた機械製品の行き詰まりは、昨今の薄型テレビ事業の苦戦などからも明らかです。一方で、インターフェースを工夫した製品が成功を収め、タッチスクリーンやモーションセンサを用いたスマートフォンが急速に普及し、そこに音声認識システムが搭載されるようになりました。しかしながら、高い認識精度を誇りながらも、その後この音声認識はあまり活用されていません。それは、我々が四角い箱に向かって話しかける事に、心理的な抵抗感を持っているからだと考えています。そこで、人の外観・動作・コミュニケーションを模した小型ヒューマノイドロボットを用いることで人の感情移入を引き起こし、対話を促すことが出来るのです。それはスマートフォンに手足と頭が生えたような存在で、例えるならゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじです。物理的な作業をこなすわけではないので、小型の情報端末です。そんなロボットと日常的にコミュニケーションすることで、ユーザーの嗜好やライフスタイルについての情報を収集し、それを活用した様々なIT サービスや家電ネットワークの操作などが期待されます。アップルの故スティーブジョブズ氏の「人は自分が欲しい物が何なのか分からない」という言葉にあるように、このような新しいコンセプトの普及の為には、ロボット実機を開発して実証実験を公開していくことが大切だと考えています。そのひとつの取り組みとして、この夏にロボットを国際宇宙ステーションに向けて打ち上げ、日本実験棟「きぼう」内で、宇宙飛行士とのコミュニケーション実験をおこないます。それによって人と小型ヒューマノイドロボットが共生する未来ヴィジョンを世界に向けて発信出来ると期待しています。そして、15 年後には、現在のスマートフォンのように、一人一台小型ヒューマノイドロボットをポケットに持ち歩く時代が実現すると考えています。
こうしたロボットには精密機械・電気・情報といった工学のみならず、認知科学や心理学、デザインやライフスタイルなど、幅広い分野の知見が不可欠です。現在は人間支援工学分野に所属することで、「人間」と「機械」両方の視点から研究を進めることが出来ています。この研究が、また他の先端と融合して新たな先端を生み出し、それらが社会に研究に還元されていくことを願っております。

(2013年4月)

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