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岡本研究室:DNA を診(み)る! - 生命誕生の謎に迫る-

DNA を診(み)る! - 生命誕生の謎に迫る-
岡本 晃充 教授 (生命反応化学)

遺伝情報を伝達するDNA(デオキシリボ核酸)。地球上のほとんどの生物が持ち、生命(いのち)あるものの証でもある。 岡本晃充教授(生命反応化学)は、最新の有機合成化学と生命科学の研究手法を駆使して、DNA などの生体分子をリアルタイムで見る技術を次々と開発。 DNA のふるまいを調べて理解することで、「なぜ、地球上でDNA という分子ができ、生命は誕生したのか」という謎に迫ると同時に、がんの早期診断など臨床医療での実用化に向けた応用研究も積極的に進めている。

 

人工核酸と相補的な配列をもつDNA
人工核酸と相補的な配列をもつDNA(真ん中)だけが緑色に変わった!

 

■ 色つき人工核酸でDNA を観察!

3号館6階の岡本研究室。実験室には、遺伝子を増幅させる「PCR」などさまざまな装置が整然と並ぶ。 見慣れない装置にょろきょろしながら歩いていると、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)と書かれたボトルがセットされた装置に目が留まった。 A、T、G、Cって、DNA をつくる4 種類の塩基のことだろうか? 「そう、これは人工塩基を使って人工的にDNA をつくるDNA 自動合成機です」(岡本教授)。 配列を指定すると、100 塩基程度の人工核酸をつくることができる。
「人工核酸を使えば、誰でも簡単にDNA を見ることができます。やってみましょうか」。 岡本教授はそう言うと、まるで手品でも始めるかのように机の上に3つのガラス容器を並べた。中には薄いオレンジ色の人工核酸が入っている。
次に、それぞれの容器にピペットで、①水、②人工核酸と相補的※な一本鎖DNA、③相補的でない一本鎖DNA、をそれぞれ加えた。軽く混ぜて、蛍光灯で光を当てると、②だけが一瞬のうちに緑色蛍光を発した。①と③はオレンジ色のまま。相補的な人工核酸を使って、目的の配列があるかを一目で判別できる方法だ。
光る仕組みはこうだ。ガラス容器に入っていたのは、人工核酸にオレンジの色素分子を2 個平行に結合させたもの。 色素分子が2 個平行に並んだ状態では、蛍光を発しないが、離れると蛍光を発する“励起子相互作用”という化学反応を利用している。 「人工核酸が二重らせんを組むと、色素分子が塩基対の間に入り込み、平行に並んでいた色素分子が離れるため、緑色蛍光を発する」(岡本教授)。
この色つきの人工核酸は、何と生きた細胞にも簡単に導入することができる。 「DNA からRNA ができ、タンパク質に翻訳される“ セントラルドグマ” をリアルタイムで観察することも可能」というから驚きだ!

※ DNA は、対合する相手となる塩基(A とT、G とC)が水素結合して、二重らせん構造をつくっている。
    相補的なDNA、とはA に対してT、G に対してC のように、対となる塩基で構成されたDNA のこと。

 

DNA 自動合成機
DNA 自動合成機


 

■ 最新医療に応用へ

岡本教授は、DNA のメチル化を発見できる「ICON 法」も開発した。メチル化とは、シトシンにメチル基(-CH3)がくっつくこと。 メチル化されると遺伝子が発現しないだけでなく、メチル化の場所や量は、がん化や老化とも密接に関わっているとされる。 ICON 法では、金属錯体反応という化学反応を利用。長さ2メートルという長鎖DNA の中で、たった一つのシトシンがメチル化されているかどうかを調べることができる。
「生体分子を見るのに使えそうな化学反応を探し出して、反応しやすい分子設計をし、簡単に調べられる手法を開発するのが私たちの仕事です」(岡本教授)。
岡本教授のもとには企業や研究機関から、「〇〇の反応が見たいので、検出方法を開発してほしい」といった依頼が後を絶たず、常に複数の共同研究が同時進行している。 原子レベルからのアプローチなので、さまざまな生体分子の可視化に応用でき、医療や脳科学など幅広い分野で実験ツールとして利用できる。


人工核酸の二重らせん構造

人工核酸が相補的な配列と二重らせんを組むと、2 個平行に並んでいた色素分子が塩基対の中に入り込んで離れ、励起子相互作用により蛍光を発するため、 標的の遺伝子があるかどうか簡単に調べることができる。
 

■ 最終目標は「生命とはなにか」

だが、実社会で役立つこうした研究を進めながらも、岡本教授は常に、「生命とは何か」という命題の解を探求し続けている。 「DNA は、“なるべくして” 今のような構造になったのだろうか」、「もし宇宙人がいたとしたら、やはり、DNA と似た分子を持っているのだろうか」。
その答えを出すのは簡単ではない。だが、生物をつくる一つ一つの原子がどのように動いているかを調べる研究を積み重ねることで、いつかそのヒントがつかめたら、と思っている。



ここが知りたい! 「ICON 法」とは? 区切り線

ICON 法

ICON 法は、釣りに例えると、分かりやすい。川は長大なDNA、魚はメチル化されたDNA。ICON は釣竿。 釣り糸にはメチル基の有無を調べたい領域と相補的な配列を持つ人工核酸を使用し、釣り針にはピリミジンという有機分子、そして釣りエサにはオスミウムという金属をつけ、DNA の川に投げ込む。 すると、メチル化されたDNA を釣り上げることができる。すなわち、特定のDNA がメチル化されているかどうかが分かるのだ。 従来のメチル化検出法は、反応に数時間から十数時間かかったり、DNA が切断されてしまうなどの問題があった。 ICON 分子は、2007 年に岡本教授と共同研究を行った(株)ジーンデザインで販売され、将来的にはがんの早期診断などの指標としても使えることが期待されている。

 

教授の横顔

岡本 晃充 教授
「私は本当は旅行プランナーになりたかったんですよ」。大学入学まで研究者になろうなんて考えてもいなかった。 京都大学工学部合成化学科へ入学後、一般旅行業務取扱主任者の資格を取り、将来は旅行代理店で活躍する自分を思い描いていた。 だが、配属された研究室は「大学院に進むのが当然」という雰囲気。幸か不幸か就職活動ができないまま、次から次へと実験をこなしているうちにいつの間にかこうなっていた。 「私の場合、追い込まれて研究者の道を歩むことになったんですよ。でも、今ではこの道で良かったと思ってますけどね」。 岡本教授が研究者になったのは、“ なるべくして” のことだったに違いない。







 

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