令和8年度工学系研究科先端学際工学専攻の秋季学位記授与式を挙行
- 先端研ニュース
2026年9月25日
9月18日、令和8年度の東京大学大学院工学系研究科 先端学際工学専攻 秋季学位記授与式が、先端研13号館3階講堂で行われました。
先端学際工学専攻 常務委員の小関泰之教授(光量子イメージング分野)は、修了生に心からの祝意を表し、一人ひとりが独自の問いを追究し、不確実さや困難に向き合いながら、博士研究を通じて新たな知を生み出してきたことは、誇るべき素晴らしい成果だと述べました。博士論文では、運転条件が変化する機械の診断・健全性管理、細胞の時空間イメージング、高速走行する列車との大容量無線通信、伸縮しても機能を維持する導電性高分子、タンパク質の運命を左右する複雑な分子鎖の化学的構築など、実に幅広いテーマが扱われています。一見まったく異なる研究にも、条件や形が変化し、得られる情報も不完全なシステムの中から意味のあるパターンを見いだし、変化を理解して対応する新しい方法を生み出すという共通点があると語りました。
続いて、科学技術が急速に進歩する一方、環境、社会、地政学的な課題にも直面する現在、とりわけAI(Artificial Intelligence)が学び方や研究の進め方、意思決定のあり方を変えつつあることに触れました。AIが膨大な情報を分析し、驚くほどの速さで答えを生み出せるからこそ、「何を問うべきか」という適切な問いを立てる力は、これまで以上に重要になると強調。その答えが信頼できるのかを判断し、背後にある前提を見抜き、他分野の知識と結びつけ、どのように使うべきかを考える必要があり、「AIは私たちの思考を支えることはできます。しかし、自分自身で考え、判断する責任までなくしてくれるわけではありません」と述べました。
また、博士課程では難しい問いに答える方法だけでなく、「問うに値する問い」を見いだす方法も学んできたとし、研究が計画通りに進まず予想外の結果が得られたとしても、それは必ずしも「失敗」ではなく、前提を見直したり、より重要な発見につながったりする可能性があると話しました。
最後に、好奇心と勇気をもって未知のものに向き合い続けてほしいと呼びかけ、一つの専門分野だけでは解決できない重要な問いに取り組むため、異なる立場や考え方に耳を傾け、自らの専門知識をわかりやすく伝え、分野の間につながりを築く力への期待を述べました。(原文英語)

- 祝辞を贈る小関泰之常務委員
続いて、東京大学 先端科学技術研究センター所長の杉山正和教授(エネルギーシステム分野)からも修了生に祝辞が贈られました。
杉山所長は、博士号取得という素晴らしい成果を祝福するとともに、修了生に「今後取り組むべき新たな挑戦」について語りました。先端学際工学専攻で、特定の一つの専門分野だけに属するのではなく、複数の分野にまたがる成果を上げてきたことに触れたうえで、「学際的であるだけで十分なのだろうか」と問いかけ、次の挑戦として「トランスディシプリナリー(transdisciplinary)」を挙げました。異なる専門分野の間に存在する壁や境界を越え、別の分野へ踏み込み、新たな知見を求めて探究を続けてほしいと語りました。
その挑戦にあたって重要なのは、「皆さんは一人ではない」ということだと続けました。博士課程では研究室のメンバーや学外の共同研究者と協働し、友人や家族にも励まされてきた経験があることから、これから学問の境界を越え、新しい分野への旅を始める際にも、ともに歩む良い仲間を見つけてほしいと呼びかけました。また、自らの専門性や追究する問いだけでなく、自分の「熱意を伝えること」も、これからますます重要になると語りました。
さらに杉山所長は、新たな知識や技術、方法論を生み出し、人間の能力を広げていく科学の営みの必要性を認める一方で、「科学技術には限界があるということも、常に意識していてほしい」と語りました。人間や環境、地球、宇宙を含め、私たちはすべてを理解できるのかと問い、「私たち自身の知識の限界に対して、ある程度謙虚であるべき」だとの考えを示しました。現在の知識や技術はまだ不完全であり、すでに知っている事柄の「あいだ」に何があるのかを想像し、さらには現在持っている知識や技術の蓄積を超えて思考を「外挿」していくことが必要であり、「それこそが倫理そのもの」だと述べました。
そして、科学技術に関わる倫理で最も重要なのは、現在の科学技術が将来にもたらす良い面と悪い面の両方を想像し、未来に目を向けて考えることだと説明し、そのためには、論理だけでは捉えきれない複雑な関係の中で危険を感じ取る人間の感情や直感とともに、「歴史を振り返る」ことも重要だと語りました。一方、歴史は立場や視点によって異なる語られ方をするため、過去を振り返る際には、科学的研究を通じて身につけた客観的な姿勢を生かしてほしいと呼びかけました。
最後に、過去を振り返り、未来について考え、仲間と議論し協力することで、世界をより持続可能なものにし、人々の幸福を維持し、さらに広げていくことへの期待を述べ、学問分野の境界を越える挑戦を続けるよう修了生を励ましました。(原文英語)

- 祝辞を贈る東京大学先端科学技術研究センター 杉山正和所長

