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特別な装置は不要!細胞入り均一カプセルを短時間に数十万個規模で作製
―新薬開発や再生医療研究のハードルを大きく下げる新手法―

  • プレスリリース

2026年5月26日

東京大学
千葉大学
科学技術振興機構(JST)

発表のポイント

  • マイクロ流体デバイスを使わずに、細胞を内包した均一サイズのハイドロゲル微小カプセルを作製する手法を開発した。
  • 一般的な実験設備のみで、数十万個規模の細胞入りカプセルを、マイクロ流体デバイスを使うよりも遥かに短時間に作製できることを示した。
  • 創薬スクリーニングや三次元培養に必要な細胞カプセル化の導入障壁を大幅に下げる汎用的な基盤技術となると期待される。
本研究で開発した細胞内包化手法(ETE)の概念図
本研究で開発した細胞内包化手法(ETE)の概念図

概要

 東京大学先端科学技術研究センターの太田禎生教授、千葉大学大学院医学研究院の大瀧夏子特任助教、合田有希特任研究員らの研究グループは、マイクロ流体デバイスを使わずに、細胞を内包した均一サイズのハイドロゲル微小カプセル(注1)を大量に作製する手法「Emulsion-Templated Gel Embedding(ETE)」を開発しました。あらかじめサイズをそろえたゼラチンビーズをテンプレートとした一括液滴生成と温度制御により、細胞を内包した均一なゼラチンビーズを作製し、次にこの細胞入りゼラチンビーズをテンプレートとしてアガロースシェルを形成しました。結果、一般的な実験設備(ボルテックス装置と温度の上げ下げ)のみで、数十万個規模の細胞の入ったハイドロゲル微小カプセルを、マイクロ流体デバイスを使うよりも遥かに短時間に作製できることを示しました。得られたカプセル内では細胞が増殖し、三次元的な細胞集団を形成します。本成果は、新薬の開発や、細胞をより体の中に近い立体的な状態で調べる実験を、これまでより手軽に行えるようにする技術として期待されます。

図1:ETE法による細胞内包化とカプセル作製プロセス
図1:ETE法による細胞内包化とカプセル作製プロセス
a. ゼラチンコアビーズと細胞を同一エマルジョン内に封入し(PTE法)、温度制御によりゼラチンを一度溶解させた後、再ゲル化することで細胞を内部に取り込んだ均一なゼラチンビーズを形成する(Emulsion-Templated Gel Embedding: ETE)。b. 得られたビーズをテンプレートとしてアガロースシェルを形成し、内部のゼラチンを除去することで中空カプセルを作製する。

発表内容

 細胞を微小なゲルやカプセルに封入する技術は、創薬スクリーニングや三次元培養、単一細胞解析などに広く用いられています。しかし、細胞を閉じ込めた均一なカプセルを大量に作製するには、これまでマイクロ流体デバイスと専門的な操作が必要でした。
 研究グループはこの制約を外し、一般的な実験設備(温度制御とボルテックス装置)だけで、細胞を内包した均一サイズのハイドロゲル微小カプセルを数十万個規模で作製できる手法「Emulsion-Templated Gel Embedding(ETE)」を開発しました。
 ETE法では、あらかじめ作製した均一サイズのゼラチンビーズをテンプレートとして用い、細胞と同じ液滴内にPTE(Particle-Templated Emulsification)法(注2)を用いて封入した後、温度制御によって細胞をビーズ内部に取り込みます。さらに、このビーズをテンプレートとしてPTE法でアガロースシェルを形成し、内部のゼラチンを除去することで、中空構造のハイドロゲル微小カプセルを得ます(図1)。
 この方法で作製したカプセル内では、細胞は従来のマイクロ流体デバイス法と同程度の生存率で増殖し、球状の細胞集団であるスフェロイド(注3)を形成する様子が観察されました(図2)。さらに、複数種類の細胞を同一カプセル内に封入できることや、酵素処理により高い生存率を保ったまま細胞を回収できることも示しました。
 本成果は、細胞カプセル化技術の利用障壁を大きく低減し、今後、創薬研究、再生医療、細胞工学分野における応用の拡大に寄与することが期待されます。

図2:中空アガロースカプセル内で増殖した細胞の顕微鏡画像
図2:中空アガロースカプセル内で増殖した細胞の顕微鏡画像
カプセル内部で細胞が増殖し、球状の細胞集団(スフェロイド様構造)を形成している様子を示す。緑色はアガロースカプセル、青色は細胞を示す。スケールバー:50µm(1µmは100万分の1メートル)。

発表者・研究者等情報

東京大学
先端科学技術研究センター
 太田 禎生 教授
 桐浴 裕巳 学術専門職員
 松尾 恵 学術専門職員
 Pooja Shukla 博士課程学生

千葉大学
大学院医学研究院
 大瀧 夏子 特任助教
 合田 有希 特任研究員
 山形 優子 特任研究員
 川上 英良 教授

熊本大学
大学院生命科学研究部
 服部 一輝 教授
 研究当時:東京大学 先端科学技術研究センター 特任助教

論文情報

雑誌名:
ACS Biomaterials Science & Engineering
題 名:
Emulsion-Templated Gel Embedding: A Microfluidics-Free Method for Scalable Cell Encapsulation in Hydrogel Microcapsules(5月21日掲載)
著者名:
Natsuko Otaki, Yuki Goda, Pooja Shukla, Hiromi Kirisako, Yuko Yamagata, Megumi Matsuo, Kazuki Hattori, Eiryo Kawakami, Sadao Ota
DOI:
https://doi.org/10.1021/acsbiomaterials.5c02129別ウィンドウで開く

研究助成

 本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR24N3)、同事業CREST(JPMJCR23B6)、ムーンショット型研究開発事業(JPMJMS2025)、革新的GX技術創出事業(GteX)(JPMJGX23B1)の支援を受けて実施されました。
 また、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)(JP21gm1210003、JP223fa627003、JP23tk0124003、JP22gm6710008、JP256f0137008)、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)Core-to-Core Program(JPJSCCA20200006)、科研費(JP22K12797、JP25K18827)、学術変革領域研究(A)(JP25H01359)の助成を受けています。
 さらに、本研究は、細胞科学研究財団、発酵研究所、武田科学振興財団、中谷財団、持田記念医学薬学振興財団の支援を受けて実施されました。

用語解説

  • (注1)ハイドロゲル
    水を多量に含むゲル状の材料。細胞にとって生体内に近い環境を提供できるため、細胞培養や再生医療研究に広く用いられる。
  • (注2)PTE(Particle-Templated Emulsification)法
    粒子をテンプレートとして用い、均一な液滴(エマルジョン)を形成する手法。本研究では、細胞とゼラチンビーズを同一液滴内に封入するために用いている。
  • (注3)スフェロイド
    細胞が三次元的に集合して形成する球状の細胞塊。生体内の細胞環境に近い構造として、創薬や細胞機能解析に用いられる。

問合せ先

東京大学先端科学技術研究センター 生命情報計測光学分野
教授 太田 禎生(おおた さだお)

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