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光配列バーコードビーズの大規模作製法を開発
―共通設計のビーズを毎時100万個超で作り、光配列コードを後から書き込む―

  • プレスリリース

2026年9月15日

東京大学
科学技術振興機構(JST)

発表のポイント

  • 髪の毛の太さほどの小さなビーズに、5本の色の帯からなるバーコードを書き込む技術を開発。共通設計のビーズをまとめて作った後に、DNAを使って各帯に色コードを書き込み、多様な光配列を生成しました。
  • 共通ビーズは毎時100万個超の速度で作製。64色コード/帯を実測し、理論上は10億通り超(64⁵)のバーコード設計可能性を示すとともに、実験でも3万5,155種類のバーコードを確認しました。
  • 11日後の再撮像でもバーコードによりビーズを高精度に照合できることを実証。薬の候補、生体分子、細胞などを混ぜたまま識別・追跡する創薬・生命科学研究への応用が期待されます。
本研究で開発したバーコード作製技術
本研究で開発したバーコード作製技術
5つの帯を持つハイドロゲルビーズをマイクロ流体デバイスで大量に作製します。その後、各帯に異なる色と明るさを付けることで、さまざまなバーコードを書き込みます。

概要

 東京大学先端科学技術研究センターの太田禎生教授と江口晃弘助教らによる研究グループは、連続した帯構造を持つ微小ハイドロゲルビーズ(注1)を用いて、顕微鏡で読み取れる多種類のバーコードを大量に作る技術を開発しました。
 本研究では、流れる材料を光で固めるフローリソグラフィー(注2)を用いて帯構造を持つビーズを高速に連続作製し、作製後のビーズの各帯にさまざまな色と明るさの組み合わせ(=光基)を書き込めるようにすることで、多種類のバーコードを持つ小さなビーズ(~60 µm、参考:一般的な髪の毛の太さは50~100 µm)を効率よく作製できることを示しました。
 将来は、異なる薬の候補や生体分子をそれぞれのビーズに載せて追跡する技術へと飛躍させることで、高スループットな創薬スクリーニングや生命科学研究への応用が期待されます。

発表内容

 創薬や生命科学の研究では、多数の薬の候補や生体分子を効率よく調べるため、それぞれを小さなビーズに載せ、まとめて反応させる方法が使われています。しかし、たくさんのビーズを混ぜてしまうと、「どのビーズに何が載っていたのか」を見分けるための目印が必要になります。そこで、ビーズに異なる色や模様を持たせ、顕微鏡で読み取る「光学バーコード」が利用されてきました。これまでにも多種類の光学バーコードを作る方法はありましたが、必要なバーコードを選んで作ることと、多種類のバーコードをまとめて作ることを両立するのは困難でした。
 そこで本研究では、「ビーズを作る工程」と「バーコードを付ける工程」を分ける新しい方法を開発しました。まず、5つの帯からなるビーズを毎時100万個を超える速度で連続的に作製し、その後それぞれの帯を異なる色で染めることでバーコードを書き込みます。つまり、ビーズそのものは先にまとめて作っておき、必要なバーコードをあとから付けることができます。
 バーコードをあとから付けるために利用したのがDNAです。DNAには、塩基の並び方(配列)によって、決まった相手と選択的に結合する性質があります。そこで、ビーズの5つの帯にそれぞれ異なるDNAを組み込み、対応するDNAに色素を付けて加えることで、狙った帯だけに色を付けられるようにしました。加えるDNAの種類や量を変えることで、5つの帯の色と明るさを様々に組み合わせ、異なるバーコードをあとから書き込むことができます。
 実験では、5万9,049通りのバーコードを設計し、実際に解析したビーズから3万5,155種類の異なるバーコードを確認しました。また、バーコードを付けたビーズを11日後に再び撮影したところ、73%のビーズを高い信頼度で再識別できました。この結果から、同じビーズを時間をおいて見分け、変化を追跡できる可能性が示されました。

図1:光学バーコードビーズの顕微鏡画像
図1:光学バーコードビーズの顕微鏡画像
ハイドロゲルビーズの5つの帯がさまざまな色と明るさで染め分けられ、その組み合わせがそれぞれのビーズを見分けるバーコードとして機能します。

発表者・研究者等情報

東京大学
 先端科学技術研究センター
  太田 禎生 教授
  江口 晃弘 助教
  岩本 侑一郎 博士研究員
  成田 晴香 博士研究員
  Adrian Mabini Martin 学術専門職員

 工学部
  徳田 陽向 学部生
   研究当時:教養学部 学部生

論文情報

雑誌名:
Advanced Science
題 名:
Decoupling Fabrication from Encoding: DNA-Addressable Template Microparticles for Large, User-Defined Optical Barcode Libraries
著者名:
Akihiro Eguchi, Yuichiro Iwamoto, Hinata Tokuda, Haruka Narita, Adrian Mabini Martin, Sadao Ota
DOI:
https://doi.org/10.1002/advs.77407別ウィンドウで開く

研究助成

 本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 ACT-X(JPMJAX2534)、CREST(JPMJCR19H1、JPMJCR23B6)、革新的GX技術創出事業(GteX)(JPMJGX23B1)、先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)(JPMJAP24B5、JPMJAP2416)の支援を受けて実施されました。また、本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(JP25H01359、JP24K23030、JP25K24884、JP25K17926)、上原記念生命科学財団、UTEC-UTokyo FSI Research Grant Program、武田科学振興財団、中谷財団の支援を受けて実施されました。

用語解説

  • (注1)微小ハイロドゲルビーズ
    水を多く含むゼリー状の高分子材料(ハイドロゲル)からできた、非常に小さな粒子。内部にDNAなどの分子を組み込むことができます。
  • (注2)フローリソグラフィー
    液体を微細な流路に流しながら、光を照射して材料を固めることで、微小な粒子を連続的に作製する技術。光の当て方や流路内の液体の配置を工夫することで、さまざまな形状や構造を持つ粒子を作製できる。

問合せ先

東京大学先端科学技術研究センター
教授 太田 禎生(おおた さだお)

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