火山噴火を駆動する巨大マグマ貯留域の「縁」のマグマ
―桜島火山・霧島火山の地下構造から提案するマグマ供給系の新しい描像―
- 研究成果
2026年4月30日
九州大学
東京大学地震研究所
京都大学
東京科学大学
東京大学先端科学技術研究センター
ポイント
- ①桜島火山と霧島火山の地下に、巨大で長寿命なマグマ貯留域が確認された。
- ②一方で、GNSS観測*1等で捉えられる地盤変動源は、この巨大なマグマ貯留域全体ではなく、その端部の小規模で短寿命なマグマ貯留域に対応する。
- ③通常規模の噴火活動の大部分は、巨大マグマ貯留域全体ではなく、その縁を上昇する少量のマグマによって発生する。
概要
火山の地下にマグマがどのように蓄えられ、どこを上昇して噴火に至るのかは、火山の理解や、噴火予測の根幹に関わる重要課題です。
九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センターの相澤広記 准教授、および東京大学地震研究所の小山崇夫 准教授、上嶋誠 教授、京都大学の宇津木充 准教授、東京科学大学総合研究院多元レジリエンス研究センターの神田径 准教授、東京大学先端科学技術研究センターの角野浩史 教授らの研究グループは、活発な活動を続ける桜島火山、霧島火山においてMT法電磁探査*2を実施し、両火山の地下には共通して、巨大で長寿命な珪長質マグマ貯留領域に対応すると考えられる電気を流しやすい領域 (低比抵抗領域)が存在することを明らかにしました。その一方で、GNSS観測等で検出される地下の膨張・収縮源は、こうした巨大な貯留領域そのものではなく、その端部に位置する、より局所的で寿命の短いマグマ貯留域に対応していることが示唆されました。噴火時に地表へ向かうマグマは、巨大マグマ貯留域全体から一様に供給されるのではなく、その縁辺部を通って上昇することが示唆され、人間の時間スケールで観測される噴火現象の多くは、巨大系そのものではなく、その縁辺部のごく一部の活動として理解できることが提案されました。
本研究成果は2026年3月9日(月)に「Earth, Planets and Space」誌に、2026年4月10日(金)に「Geophysical Research Letters」誌に掲載されました。

研究の背景と経緯
火山の地下に蓄えられているマグマ貯留域の場所、大きさ、形状、そしてそのマグマ貯留域からどのような経路を通ってマグマが上昇し噴火を引き起こすのかは、基本的な情報でありながら、依然として確固としたイメージは得られていません。この手がかりとして、活火山では水準測量やGNSS観測、衛星観測などから地盤のわずかな膨張や収縮が観測されることがあり、地下でそれを引き起こしている場所にこそ「マグマ貯留域」が存在すると考えられてきました。その一方で、地下構造の研究からマグマが存在する可能性のある領域が、推定された地盤変動源の位置と一致するかどうか、はっきりとは確かめられていませんでした。
本研究では、地下構造と地盤変動源の空間的関係に共通した特徴を見いだすことで、長寿命な巨大マグマ貯留領域と短寿命なマグマ供給系*3を分けて理解する新しい枠組みを提示しました。
研究の内容と成果
本研究では、桜島火山と霧島火山という日本を代表する活火山でMT法電磁探査を実施し、地下で1000km³規模の巨大な電気比抵抗の低い領域を見出しました。この領域は結晶化が進んでいるものの巨大なマグマ貯留域であると推定しました。また、従来マグマ貯留域と考えられていた地盤変動源は、この巨大マグマ貯留域の端部に位置していることを明確にしました。
• 長寿命・巨大なマグマ貯留域(巨大噴火時に活動)
• 短寿命・小規模なマグマ貯留域(通常噴火時に活動)
の二階層で理解することを提案した点です。
特に、人間の時間スケールで観測される噴火に関わるマグマの大部分が、巨大マグマ貯留域の端部を通じて供給されるという描像は、マグマの上昇経路や、その周辺で生じる地震、地殻変動などの火山活動の理解に新しい視点を与えます。
本研究では実際に、地盤変動源のほかに、深さ10~30kmで発生する深部低周波地震も巨大マグマ貯留域の端部に位置していることが示されました。深部低周波地震は噴火前に活発化する例が知られており、通常噴火の出発点もまた巨大マグマ貯留域の端部であることを示唆しています。このほか、桜島火山においては東京大学先端科学技術研究センターの角野浩史 教授により温泉水に微量に含まれるヘリウムガスの同位体比*4が分析され、地表の自然電位分布*5と組み合わせることで、マグマ上昇の途中でマグマから抜けたガスが浅部地下水によって運ばれる経路も推定されました。これらの成果は、地盤変動・比抵抗・地球化学を統合した火山監視の高度化につながり、将来的にはより信頼性の高い火山活動評価や、大規模噴火予測への応用が期待されます。
今後の展開
本研究では、長寿命・巨大なマグマ貯留域が存在し、その内部に蓄積されたマグマは、通常噴火時にはほとんど活動しないことが示唆されました。では、どの程度の規模の噴火になれば巨大マグマ貯留域からマグマが放出されるのかについては、依然として全くの未知数です。2011年1月の霧島新燃岳噴火が0.03km3規模であるのに対し、火山では数km3~数100km³規模のマグマを一気に噴出する噴火が、まれに起こり得ます。この分岐がどのように切り替わるのかについては、岩石学的な知見も統合して研究を進める必要があります。また火山では、マグマが上昇してそれまでマグマがなかった場所に貫入するものの、噴火には至らない「噴火未遂」が頻繁に発生します。桜島では2015年8月15日にそのような現象が発生しました。こうした噴火未遂に巨大マグマ貯留域がどのように関係しているのかも未知数であり、噴火未遂イベントの集中的な観測解析から解明する必要があります。
本研究で得られた別の興味深い点として、霧島、桜島においては、巨大マグマ貯留域と推定される 領域は、深部になるにつれ山体の北側に広がっていることが推定されました。阿蘇・九重・鶴見・伽藍など、九州の他火山の比抵抗構造の研究からも、巨大マグマ貯留域は北側に推定されており、九州地下では山体に対してどの火山も北側からマグマが供給されていると考えられます。これは偶然とは考えにくく、マグマの供給ルートが共通して北側にそろう理由を今後明らかにする必要があります。
参考図


用語解説
- *1 GNSS観測
人工衛星を用いて地表の位置変化を高精度で測定し、地下のマグマや熱水の移動を推定する観測手法。 - *2 MT法電磁探査
地磁気嵐などによる自然の電磁場変動を信号源として、大地に誘導された電磁場を地表で計測することによって地下比抵抗構造を推定する探査技術。 - *3 マグマ供給系
マグマの蓄積場所・上昇及び移動経路のこと。 - *4 ヘリウムガスの同位体比
ヘリウムの種類の割合を調べ、地下深部のマグマ由来のガスの寄与を判別する手法。 - *5 自然電位分布
地表で自然かつ安定に発生している電位分布。地下水の流動によって発生するため、自然電位分布から地下水の流れを推定できる。
謝辞
本研究は文部科学省「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」(JPJ005391) 、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画 (第2次)(第3次)」、「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究プロジェクト」の助成を受けました。観測機材の使用については東京大学地震研究所共同利用の援助を受けました。
論文情報
- 掲載誌:
- Geophysical Research Letters
- タイトル:
- Magma and Volatile Pathways beneath Sakurajima Volcano from Self-Potential, Helium Isotopes, and Broadband Magnetotellurics
- 著者名:
- Aizawa Koki, Koyama Takao, Hase Hideaki, Uyeshima Makoto, Sumino Hirochika
- DOI:
- 10.1029/2025GL120131

- 掲載誌:
- Earth, Planets and Space
- タイトル:
- Trans-crustal magma plumbing system of Kirishima volcanic complex as inferred from dense broad-band magnetotelluric observations
- 著者名:
- Aizawa Koki, Muramatsu Dan, Tsukamoto Kaori, Teguri Yoshiko, Koyama Takao, Utsugi Mitsuru, Kanda Wataru, Inomata Tasuku, Shigematsu Hiromichi, Shimizu Hiroshi
- DOI:
- 10.1186/s40623-026-02390-2

問合せ先
東京大学 先端科学技術研究センター
教授 角野 浩史(すみの ひろちか)
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