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高速で流れる細胞を三次元蛍光撮影できる顕微鏡技術を発明

  • 研究成果

2022年9月28日

東京大学先端科学技術研究センターロボティック生命光学分野の鵜川昌士特任研究員と太田禎生准教授は、高速で流れる細胞の三次元蛍光画像を取得可能な高速顕微鏡技術を開発しました。本研究成果は、2022年6月1日付でBiomedical Optics Express誌に掲載されました。

高速に細胞を撮影する技術は、細胞内の速い動きを観測したり、短時間で多数の細胞を撮影したりするために必要です。特にイメージングセルソーターという、細胞を流しながら高速に細胞の画像を取得して解析し、それに基づいて細胞の選別や分取を行う手法では、一個一個の細胞を撮影する時間は非常に短く、高速な撮影が必要となってきます。これまでのイメージングセルソーターは主に二次元画像を撮影するため、奥行方向の情報を持たず、細胞内のタンパク質分布や細胞小器官の形態などの立体的で重要な形において、選別や分取に限界がありました。この問題に対処するためには、立体的な形を捉えることのできる三次元画像撮影が必要になってきます。三次元画像の撮影は時間がかかり、市販の高速細胞分取機などに使用されている毎秒1~10メートルという高速な流速下で、三次元画像の撮影は困難という課題がありました。

研究者らは、三次元顕微鏡の一種であるライトシート顕微鏡にストロボ撮影の手法を応用することで、高速で流れる細胞の三次元蛍光撮影が可能となる技術を実現しました。この技術は、流れる細胞の複数の断面を、ストロボ撮影によって一枚の写真上に撮影します。そのため、高速な三次元画像取得が可能になり、従来のライトシート顕微鏡より遥かに速い速度で撮影することができました。その結果、三次元蛍光撮影としては世界最速である毎秒11メートルの流速下で流れる細胞の三次元蛍光画像を撮影することに成功しました。

本研究により、市販の高速細胞分取装置などに使用されている流速での三次元蛍光撮影が可能になりました。本研究成果は、三次元画像を元に細胞を振り分けるイメージングセルソーターの開発に繋がり、細胞生物学や再生医療・創薬スクリーニングなどのための新たな技術になることが期待されます。

太田禎生准教授は次のように述べています。「共焦点顕微鏡などに代表される三次元イメージングは速く動いている対象に対しては適用が難しかったのですが、この技術によって三次元イメージングでも細胞分取を行いやすい速度で撮影できることが実証できました。応用の幅も広いイメージング手法なので、今後の発展が楽しみです」

本研究は、JST、CREST、JPMJCR19H1、JSPS科研費JP21H04636、JP21H00416及び、立石科学技術振興財団、野口研究所、内藤記念科学振興財団、上原記念生命科学財団、ホワイトロック財団、キヤノン財団、千里ライフサイエンス振興財団、セコム科学技術振興財団、UTEC-UTokyo FSI Research Grant Programなどの支援により実施されました。

発表雑誌

著者名:
Masashi Ugawa and Sadao Ota
タイトル:
High-speed 3D imaging flow cytometry with optofluidic spatial transformation
雑誌名:
Biomedical Optics Express
オンライン掲載日:
2022/6/1
DOI:
10.1364/BOE.455714別ウィンドウで開く
  • 流体中の細胞の高速三次元蛍光撮影技術
  • 流体中の細胞の高速三次元蛍光撮影技術
    (a) 本研究で開発した撮影技術の概略図。斜めのストロボライトシート照明光を細胞が通過する際に、各点灯で異なる細胞の断面が照らされる。これらをカメラの一度の露光で撮影することで、一度のシャッターで複数の断面の像を撮影し、重ね合わせることで三次元画像を構成できる。(b) 流速11メートル毎秒で流れる細胞の核を撮影したカメラ画像。スケールバーは50 µm。(c) bのカメラ画像から再構成した三次元画像の断面図。© 2022 鵜川 昌士、太田 禎生

研究者

ロボティック生命光学分野 准教授 太田禎生

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