糖尿病性腎症で生じる核内受容体PXRのDNAメチル化異常と代謝遺伝子変化を明らかに
- 研究成果
2017年12月25日
東京大学先端科学技術研究センターの丸茂丈史特任准教授、藤田敏郎名誉教授と防衛医科大学校医学研究科の渡邉篤史医師をはじめとする研究チームは、糖尿病性腎症によって核内受容体PXRにエピジェネティクス異常が生じることを明らかにしました。本成果は12月6日に「American Journal of Physiology Renal Physiology」誌オンライン版に掲載されました。
糖尿病性腎症はわが国の透析原因疾患の第一位ですが、悪化する機序が不明なため良い治療法がありません。生体内ではDNAメチル化を始めとするエピジェネティクス機構は遺伝子スイッチとして働き、細胞の性質を維持させます。DNAメチル化に異常が生じると、細胞の性質異常が続き病態は進行します。
本研究によって、糖尿病性腎症によって核内受容体PXRにDNAメチル化異常が生じ、PXRが持続的に増加することがわかりました。また、腎臓でのPXRの働きはこれまで不明でしたが、PXRが線維化因子RGC32や糖新生酵素PCK1を刺激することもわかりました。さらに、慢性腎臓病患者の腎臓ではPXRの発現が上昇することから、PXRのDNAメチル化異常を介して、その下流の線維化因子や糖新生経路が持続的に刺激され、糖尿病性腎症の進行の一因となっていることが示唆されます。今回の研究成果はPXRが糖尿病性腎症の治療標的となる可能性を示すものであり、今後の研究の進展が期待されます。
【論文情報】
Atsushi Watanabe, Takeshi Marumo, Wakako Kawarazaki, Mitsuhiro Nishimoto, Nobuhiro Ayuzawa, Kohei Ueda, Daigoro Hirohama, Toshiya Tanaka, Shintaro Yagi, Satoshi Ota, Genta Nagae, Hiroyuki Aburatani, Hiroo Kumagai, and Toshiro Fujita
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