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世界経済の安定的発展のための知的財産制度を

研究内容 世界経済の安定的発展のための知的財産制度を 国際知財政策 客員教授 植村 昭三

知的財産権、たとえば特許権は、技術を社会に公開する代償として、開発者に対しその技術から得られる利益の独占を認めるものです。社会全体の技術水準の向上を目指すこの権利のあり方は、これまで主に国内の産業政策として、主に法律面、産業政策面から議論されてきました。

しかしこれから世界経済全体の発展を視野にいれた議論が活発化することが予想され、その中で日本がどのようにイニシアティブをとるのかが課題となっています。

途上国における知的財産権の意義

近年、知的財産権による独占権の付与が、途上国の環境、健康あるいは経済的発展を阻害する事態が懸念されています。例えばHIVの問題があります。

2000年初頭まで、東アジア、アフリカ諸国などでHIV(エイズ)に苦しむ人たちは、先進国で開発された抗レトロウイルス治療などの医薬品を入手することが極めて困難でした。それは当該医薬品に特許権による独占権が付与されていたため、きわめて高額な商品になったからだと認識されています。しかし、2005年12月には、WTO (世界貿易機関;前GATT)閣僚会議の『TRIPs協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定;Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)と公衆衛生に関する閣僚宣言』の下で、特許権の適用制限が採択され、一部途上国に安価な医薬品が供給される道が開かれました。

WIPO日本事務局設立―日本から卓越した研究成果を発信

このように、知的財産権の制度については、WTO(世界貿易機関;前GATT)、WIPO(世界知的所有権機関)などの国際機関において、人権、環境、文化、健康、貧困といった社会の現実を踏まえた議論が活発化し、しかも益々政治問題化して来ています。

こうした状況をふまえ、2006年9月1日に、WIPO日本事務所(初代所長:Allan Roach氏)が設立されました。ここでは、国境の枠を超えて、政府、民間、学者が一体となって横のつながりをもち、国際経済の進展に資する国際規範・規律のあり方の研究がなされることになります。世界経済に寄与する研究成果の発信に多くの日本の知財関係者が参画し、日本のプレゼンスを高める場となることも期待されます。

日本国としてのビジョンを確立するべき

一方、日本においても、産業界の利害調整という観点を超越して、こうした様々な国際的知的財産問題について国としてのビジョンや哲学、アイデンティティを確立する必要性が高まっています。2006年6月に知的財産戦略本部から出された「知的財産推進計画2006」は、省庁間の横断的な連絡会議を設け、本格的に政府レベルでこうした問題に取り組む姿勢が示されましたが、東京大学先端技術研究センターを含めアカデミアもこの取り組みに対して積極的に寄与していくべきものと考えます。

IT、医薬産業など多岐の産業の当事者が関係する知的財産権の法解釈や制度改正の議論においては、立場によって各々利害が異なります。しかし、先に述べたとおり、現在国際調和の潮流が本格化し、日本の制度設計に際しても、世界経済面のバランスを考慮する必要が高まっています。その中で、アカデミアは中立的、冷静な立場から発言をすることが求められ、重要な役割を担っているのです。

聞き手:小関珠音

(2006年8月4日)

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