社会連携研究部門 炎症疾患制御分野
免疫応答の活性化、抑制に関わる分子機構を理解し、慢性炎症疾患やがんの克服を目指す
免疫系は感染症やがんなど様々な脅威に対して反応し、これを排除して元の状態に戻すことができる重要な生命システムの一つです。免疫応答に伴う炎症は生体の保護や恒常性維持に重要ですが、この反応が慢性化した際には、過度な炎症やがんの増悪など、病態の悪化につながると考えられています。炎症が慢性的に持続してしまうメカニズムにはまだまだ分かっていないことが多く、その中で 私たちは、ダメージを受けた細胞から放出される危機分子(Damage-associated molecular pattern;DAMPs、アラーミンなどとも呼ばれています) に着目し、このような分子が誘導、制御する免疫応答と疾患との関わりについて研究を進めています。
DAMPs のような分子群は免疫受容体を活性化して炎症を起こすものと考えられていますが、どのような分子が免疫系によって認識されているのか、分子の実体や免疫反応については分かっていないことが多く、分子の同定や免疫応答についての研究を進めています。また、私たちの解析から、DAMPs には免疫応答を活性化するものだけではなく、免疫応答を抑制し、適切に炎症を制御するのに関わっていると考えられるような分子も存在することが分かりつつあります。DAMPs の実体や新たな役割 について、私たちはDAMPs による免疫応答の理解を中心に、分子生物学的手法や先端的オミクス解析なども活用しながら研究を進めています。
また、腫瘍が増殖するのに伴って、または治療によって、腫瘍内にはダメージを受けた細胞や死細胞が生じてきますが、このような時にもDAMPs が放出され、がん細胞に対する免疫応答の強化や抑制に関与することが私たちの研究から分かりつつあります。腫瘍免疫におけるDAMPs の役割について、私たちは現在、腫瘍免疫微小環境というものに着目し、微小環境をラベルする新しい手法なども導入しながら研究を進めています。DAMPs と免疫応答との関わりを分子・細胞レベルで明らかにし、治療標的分子や新たながん免疫療法の開発に役立てたいという思いで研究を進めています。
- がん死細胞由来分子による腫瘍免疫微小環境の制御
- 腫瘍微小環境中の免疫細胞ラベリングシステムを用いた解析
連携機関
・Boostimmune Inc.
メンバー
柳井 秀元 特任准教授
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