経済安全保障インテリジェンス分野 井形研究室
国際的な知と対話が交差する、響創の戦略拠点
経済安全保障とインテリジェンス:揺らぐ秩序の中で
世界はいま、地政学的緊張や先端技術の覇権競争が複雑に絡み合う歴史的転換点にあります。こうした中、国家と社会の持続的繁栄を支える「経済安全保障」の重要性が急速に高まっています。半導体・AI・量子・バイオなどの先端技術、重要インフラや物資のサプライチェーン強靭化が主要課題となるなかで、研究開発・政策・国際関係を統合的に理解する知的基盤が求められます。
日本政府も経済インテリジェンス体制の強化に着手しており、制度・政策の国際動向を常時追跡する能力の重要性が増しています。井形研には現在、オーストラリア・デンマーク・フランス・ドイツ・香港・インド・イタリア・オランダ・沖縄・ウクライナ・イギリス・アメリカからの研究者が在籍しており、それ以外の国々からも入れ替わりで数ヶ月から数年単位で滞在しながら研究を行っています。多様な視点の相互作用によって、国際人材との知的響創が繰り広げられています。
国際連携と社会対話の最前線
戦略的な行動の指針を導くには、多国間・多分野の対話が欠かせません。本研究室では、インド太平洋全体を視野に、世界各国と知的連携を深めています。大学やシンクタンクとの協力を軸に、MOUの締結・人材交流・共同研究・国際シンポジウムの共催など行っています。
2025年6月には、フィンランド共和国アレクサンデル・ストゥブ大統領を招聘し、シンポジウム「地政学と多国間秩序の再編」を開催。このほかにも、米国RAND研究所との「日米韓トライラテラリズムの実践」、台湾DSETとの「日台経済安全保障対話」、NATOや各国駐日大使館との対話などを主催。これらは一般公開し、専門家のみならず市民も参加できる形とすることで、社会との響創の場を育んでいます。
経済安保の実践に向けた官民連携
経済安保を実装可能なものとするには、民間セクターとの連携が不可欠です。ビッグデータの可視化を通じて地政学リスクを読み解く企業、偽情報対策の技術開発に取り組むスタートアップ、バイオ領域でグローバル展開を進めるものづくり企業などと連携。インテリジェンスとテクノロジー、分析と実装が交差する現場で、官民の知見を融合しています。
最近では、OpenAIのインテリジェンス責任者を招聘し、生成AIの悪用に対抗する官民連携のあり方を議論するセミナーも開催。実効性のある経済安保の実践に向けた、民間との響創が進行中です。
未来を拓く国際人材の育成現場
将来的に複雑な国際情勢のかじ取りを担っていく、日本の若手の国際発信力向上が喫緊の課題となっています。経済安保に関心を持つ国内外の若手に対し、多様な学びの機会を提供しています。来日中の各国要人との意見交換に加え、プリンストン大学やフランスINaLCO、カナダENAPなどから来日した学生団と英語による議論を行うセミナーやワークショップなどを開催。
現場の知に触れながら、未来世代と共に歩む若手との響創が日々生まれています。

フィンランド共和国 アレクサンデル・ストゥブ大統領来日記念公開シンポジウム 「地政学と多国間秩序の再編」

米国RAND研究所共催「日米韓トライラテラリズムの実践-経済的強靱性のための重要鉱物サプライチェーンの確保」

東大先端研とMOU締結をした台湾シンクタンクDSETとの「日台経済安全保障対話」

OpenAIインテリジェンス・調査担当招聘セミナー「生成AIの悪用対策―偽情報と影響力工作への対応」
「経済安全保障」という政策領域は、各国が手探りで方向性を模索中の新しい分野です。私はその最新動向を世界各国で追いながら、日本の政策や企業活動に与える影響を分析し、研究や政策提言を行っています。国際会議への登壇が複数重なる週は、海外から羽田空港に帰国した直後、2階の到着ロビーから3階の出発ロビーへと直行し、そのまま次の都市へ飛ぶことも珍しくありません。また、最近は日本の経済安保に関する取り組みが注目され、海外の要人や専門家が訪日する機会も増えているため、東京を留守にすることによる機会損失も増えて来ています。両立させるため、朝一の便で登壇地へ直行し、会議終了後すぐ帰国、夜には東京で来日中の方々と会議、という日もあります。また、国際情勢が動く局面では、一日で駐日大使館を四ヶ国分訪問し、非公開の意見交換を「はしご」したことも。多忙な日々のなかで、つかの間の休息として、飼っている二匹のネコとのんびり過ごす時間がほっとひと息つける大切な時間です。
尚、井形研では経済安保に関心のある学生・若手の参加者を募集しています。イベント運営や研究補佐に加え、研究室が主催する国際会議へのオブザーバー参加、英語で行う学生主体のワークショップ開催、さらには各国政府要人との意見交換会なども実施しています。最近では、フィンランド大統領とのシンポジウム後、少人数でのランチ会を開催し、ストゥブ大統領に直接質問できる機会も提供することができました。ご関心のある方は、研究室ウェブサイトをご覧ください。
メンバー

-
- 井形 彬 特任講師
専門分野:国際政治・経済安全保障

-
- マヤ・ソブチュク 学術専門職員
専門分野:偽情報・情報工作
研究室ホームページ
関連タグ

