航空宇宙モビリティ分野 伊藤研究室
世界を実験室とした、次世代航空宇宙モビリティの価値共創を目指す
今後、世界の航空輸送の需要は増加し、特にアジア太平洋地域に集中すると予測されています。将来的には、宇宙往還機や新たな空の移動手段が日常的に空港を発着するなど、これまでにない多様な運航形態が空のモビリティに加わることが見込まれます。一方で、気候変動による環境負荷の深刻化、航空管制官やパイロットといった人材の不足、さらに日本を取り巻く地政学的リスクの高まりなど、航空輸送を支える基盤には複雑で重大な課題が山積しています。こうした中で、航空の安全性を維持しながら、日本の産業や社会生活を支える航空輸送およびサプライチェーンをいかに強靱化していくかが、喫緊の課題となっています。
本研究室では、航空宇宙を「空のインフラ」として捉え直し、グローバルかつ実践的な視点から、次世代航空宇宙モビリティの価値を世界と共創することを基本理念としています。欧米やアジア環太平洋地域の研究機関や専門家と連携し、産学官の協力のもと、データサイエンス、数理モデル、シミュレーション実験などを組み合わせた体系的なアプローチによって、以下のような主要テーマに取り組んでいます。
航空管制・航空交通管理や空港運用において、管制官やパイロットとAI が協働する「Human-AI Hybrid」システムを設計し、運用効率と信頼性を高める評価研究を行っています。
■ 地球環境に配慮した航空機運航
航空機運航に伴うCO₂排出だけでなく、飛行機雲などの非CO₂要因による温暖化影響も考慮し、環境負荷を最小限に抑える経路最適化や運航戦略の開発に取り組んでいます。
■ 航空輸送ネットワークの最適設計
旅客だけでなく、半導体や製造装置などの産業に不可欠な物資は航空輸送で運ばれます。
空港間を結ぶ航空ネットワークを強靭化するため、ネットワーク科学を基盤に、国際関係論や経済安全保障に基づく地経学の視点も交えた学際研究にも取り組んでいます。
■ 空から宇宙へ、人間社会へ拡張するモビリティ
航空輸送システムは、もはや空と地上をつなぐだけでなく、宇宙利用や人間の生活空間へと対象を広げつつあります。空港を起点とした多層的な旅客・貨物ネットワークやマルチモーダル輸送システムの創出を通じて、次世代の航空宇宙モビリティの実現を目指します。
航空管制官とAIの融合システムの評価
(ヒューマンインザループシミュレーション)
地政学リスクが日本上空を飛行する航空交通の航跡に与える影響
成田空港のワンエンジン走行を模擬した航空交通シミュレーション
空港を起点として宇宙へ、人間社会へ、拡がるマルチモーダル輸送
「空の交通整理」の世界は、劇的に変わりつつあります。航空機だけでなく宇宙往還機や無人機が飛行する、これからの空の世界の往来をシステム化すること。空港を起点に拡がる、新しいモビリティシステムを創造すること。このような目標に向かって、航空宇宙を「空のインフラ」として捉え直し、グローバルかつ実践的な視点から、次世代航空宇宙モビリティの価値を世界と共創することを基本理念に、研究室を運営しています。
始まりは、京都ののどかな片田舎で過ごした幼少時代でした。小学校からの帰り道、近くの裏山で寄り道しては、野原にゴロンと寝っ転がり、大きな空を見上げて飛行機を数えました。飛行機に乗れば、わたしを新しい世界に連れて行ってくれるに違いない。そこには、どんな世界が広がっているんだろう。子供の頃のわたしにとって、飛行機は自由と冒険の象徴でした。それは今でも変わりません。飛行機が安全に世界をつなぐように、そして皆さんの空の旅が実り多きものになるよう、その裏側で研究開発を進めています。
メンバー

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- 伊藤 恵理 教授
専門分野:航空交通管理、航空輸送、誘導航法

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- 関根 將弘 助教
専門分野:航空管制、情報科学、航空交通シミュレーション
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